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新井カープ 下馬評を覆す躍進 指揮官と参謀に迫る「5つの真相」【1】

2024年1月15日 7:00
新井カープ 下馬評を覆す躍進 指揮官と参謀に迫る「5つの真相」【1】

2023年12月13日。新入団選手が発表され、新井カープに新たな家族が加わった。

■新井貴浩監督
「私は常日頃から、カープは戦いながら強くなるチームと言っていますが、また新たにこの8名を加えて来年戦っていきたいと思います」

ドラフト1位・常廣羽也斗をはじめ、8人のルーキーがファンにお披露目された。そして、新入団会見直後…。就任1年目のシーズンを終えた新井貴浩監督と、指揮官をそばで支えた藤井彰人ヘッドコーチの、人生初の2人の対談が実現した。

■新井監督
「彼とは野球の話しかしないので。そこはテレビが入っても一緒だと思うんですよね。常に彼とは野球の話しかしていません」

■藤井彰人ヘッドコーチ
「新鮮だし、すごく緊張します。今年を振り返って反省はしたので。来年のことについてどう考えているのか…」

2022年10月、新たに就任した新井監督。4年連続Bクラスのチーム再建を託された。

■新井監督
「観ていて、ワクワクする野球をみせたいと思います」

新井監督が自ら声をかけたのが藤井彰人ヘッドコーチ。監督とは同級生で、阪神時代ともにプレー。引退後は独立リーグでの監督や阪神のコーチを務めた。

■藤井コーチ
「新井監督のために新しいところでチャレンジしたい」

しかし、開幕前の下馬評は極めて低く、評論家の評価は軒並み下位予想。さらに、まさかの開幕4連敗と苦しい船出となった。それでも、4連敗となった4月4日の地元開幕戦直後には…

■新井監督
「自分の知っているみんなの力はこんなもんじゃないし、『よし見とけよ、このやろう!』っていうね」

新井カープは戦いながら強くなった。チーム一丸の戦いで、5年ぶりのAクラス。下馬評を覆す躍進を見せた。その裏にあった知られざる真相に迫る。

就任1年目のシーズンを振り返ってみて

Q.就任1年目のシーズンを振り返ってみて
■新井監督
指導者として初めてユニフォームを着たので何もかもが新しい経験だったし、新鮮でした。ヘッド(藤井ヘッドコーチ)は最初は独立リーグからはじまって、タイガースの2軍・1軍とコーチ歴が長いので、本当にいろいろな面で助けてもらいました。

頼りになる存在ですよね。プレーヤーの時から一緒にやっていましたし、藤井コーチがどういう野球感をもっているか分かっていますし、そういった中ですごく頼りになる存在だなというふうに感じました。

■藤井コーチ
僕は昨シーズンまで敵のタイガースにお世話になっていて、カープはすごく嫌なチームでしたので。もっとできるんじゃないのかなっていうのと、選手個人が頑張ってくれたらっていう両方ありますね。

新井監督は引退してからユニフォームを着て、決断の連続だったと思うんですよね、ことし1年。それはすごい大変やったなと思います。

【真相①】超積極的采配

機動力野球復活を掲げた2023年シーズン。盗塁数は前年の3倍となる78を数えた。注目すべきは盗塁を試みた数となる盗塁企図数。前年から大きく増加し、リーグトップの128と攻めの姿勢が機動力野球につながった。

鬼門と言われてきた交流戦でも相手の出方を待つのではなく、自分たちから攻めていく意識で開催5年ぶりの勝率5割を掴んだ。そして2023年シーズン印象的だったのが積極的な采配。

5月13日の巨人戦。1点ビハインドで迎えた9回、巨人のマウンドにはWBC日本代表の大勢。カープの先頭バッターは野間。フォアボールを選び出塁すると、ここでベンチが動く。ランナーは俊足野間にも関わらず、代走羽月を投入。その初球。見事盗塁を決めると、その後3番秋山の送りバントで3塁へ。ここでまたしてもベンチが動く。4番マクブルームに代打の切札・松山を打席へ。打球がセカンドへゴロの間にホームイン。攻めの采配が的中し、ノーヒットで巨人の守護神・大勢から1点をもぎ取った。

この試合について松山は・・・。

■松山竜平選手
大勢が出てきたら、もう4番のところでも行くと言ってきて。だからもう準備はできていましたね。藤井さんが裏に降りてきて、絶対こいつとこいつとこいつ、どこでも行くからって。だから絶対準備だけはしておいてくれっていうのは必ずのようにあったんで。だから裏で待っていても結構やりやすかったですね。

Q.今年の積極的な野球っていうのはどういう風に感じられていましたか
■松山選手
全員で1点をもぎとっていく。1点で勝ち抜くっていうのを新井さんがすごく大事にしてるんだなと。正直、すごい野球をするなと思いました。やってて楽しかったですね。

機動力野球の復活

さらに8月27日のヤクルト戦には、ベンチ入り選手全員を起用する采配も。初回に6点を奪うが、先発黒原さらに2番手森浦が粘れず、4回を終了し1点ビハインドの展開。それでも5回は益田、6回は大道、7回は中崎、8回はアンダーソンが無失点で繋ぐ。すると8回、堂林のタイムリーで同点に追いつき試合は延長戦へ突入する。迎えた延長10回、8番手の島内が無失点ピッチングを見せると、残る投手はアドゥワ1人の中、新井監督は11回からそのアドゥワをマウンドへ。ベンチ入り9人の投手全員を延長12回を待たず使い切った。

起用に答えたアドゥワは2ニングを無失点に抑える好投。一方の野手も、12回裏に最後の磯村を代打で使い切り、ベンチ入り選手を全員起用する執念の采配で5時間に及ぶ試合を引き分けた。

■新井監督
自分は広島で生まれて広島で育ってるんで、小さい頃からカープファンだし。カープの伝統的な野球ってなんだっていうと、機動力を使って塁上をどんどん走り回って相手チームにプレッシャーを与えるっていうのがカープの伝統的な野球だと思っていたから。メンバーを見ても、トライできるじゃんっていうメンバーがけっこういたので、ガンガン行かせたいっていう風に藤井ヘッドに言ったんですけどね。

■藤井コーチ
去年が異常に少なかった。タイガースで見ていて、もっと動かれたら嫌や のにっていうのがすごいあって。それが点に繋がるか繋がらへんかは別として、すごい相手には嫌やなって思ってたから、 どんどん監督の「チャレンジさせよう、どんどん行かそう」っていうのがすごい良かったなっていうのがあるかな。

■新井監督
失敗を恐れさせたらダメだっていうのが思ってるから、ミスした翌日とかは声かけたりだとか、「次も絶対に行けよ、アウトになってもいいから」っていう声かけはしてたよ。「アウトになったらどうしよう」って思わせたくないっていうか、「アウトになってもいいからどんどん行け」っていうふうに、開幕前、オーブン戦、キャンプの頃からずっと言ってきて、それがやっとチームに「あっ、行っていいんだ」って根付くまでちょっと時間かかったよな。

■藤井コーチ
アウトになっていいんだっていう言葉が、1番でかかったと思う。「アウトになったらダメだから」っていう言葉がいつも返ってきていたから。これをとっぱらったのは、監督の言葉の力は大きかったと思う。でもあんまり言いすぎてあれやった。「全員行けます」って言うとったから、途中から。

■新井監督
そう。で、ヘッドが聞きに行って「○○行けるか?」って聞いたら「全員行けます」。で、行ったら全然スタート切れてないやないか、みたいなこともあった。ま、それでも嬉しかったんだけど。 全員「行きます。行っていいですか」って。羽月とか、選手の方から「僕これ行きます、行きたいです」矢野も「行けますよ」って言ってくれて、なんかもう1年間でそこがすごい変わってくれたから嬉しかったね。

5月13日 対巨人戦 9回に守護神・大勢からノーヒットで1点

そして今シーズンの積極采配ついて、5月13日、巨人の守護神・大勢からノーヒットで1点を奪った采配の裏側に迫る

■藤井コーチ
僕が覚えてるのは、この野間が打席の時にノーアウトランナーなしですよね。この時に出塁したら羽月を普通ここではヒッティングなのか、バントなのかっていう選択肢があると思うんですけど、さっきの話じゃないですけど、羽月が「走れる」っていうのがありましたので、野間が走るのはちょっと厳しいかわからんけど羽月はいける。じゃあ送らずに盗塁させてからワンアウト3塁の状況を作りたい。野間が出てないときからたぶん監督とそういう相談をしていたと思います。

■新井監督
野間が先頭だったよね。でもうライアン(マクブルーム)のところまでもう決まってたもんな。野間が出たら、羽月が「大勢、絶対走れます」ってね。で代走に行って。それで走らせてからバントさせようと。でバントさせてライアンがなかなか調子状態が上がってなかったんで、しかもピッチャーがその抑えの横手なげの大勢だったんで、ここでまっちゃん(松山)行こうっ ていうのはもうこの前から決まってたよね。そこ選手がよく頑張ってくれたんですけど、なんか気持ちいいよね、ノーヒットで1点。しかもそれが同点、相手の守護神。

8月27日 対ヤクルト戦 選手全員を起用し 延長12回引き分け

そして8月27日、ベンチ入り26人全員を使い切った采配については。

■藤井コーチ
初回は見ての通りイケイケというか、初回に点取れましたけど。6点取っていい ムードの中追いつかれ、僕はもう「絶対負けられないぞこの試合、8月27日だし負けたらもうガタガタ行っちゃうんじゃないかっていうのがすごいありました。

■新井監督
11回でアドゥアが行って、もうピッチャーいなかったじゃん。でもこの時に矢野を出したんで、もしアドゥワに何かあったら矢野が投げられるっていうのがあったよね。最後は起用も使えるだけ使って、全員で戦ってるっていう空気を作りたいっていうか。最後イソ(磯村)が出て全員使って。例えばあそこでイソが頭にデッドボール当たったらもういない。それで没収試合になってもそこはもう自分が、「すみませんでした」って言えばいいかなと。そういう風に思ってたんで。

■藤井コーチ
このとき裏ではキク(菊池)と海成(曽根)と矢野で話し合ってピッチャーはキクに決まってたんよ。一番度胸すっわってるんはキクちゃうかって。

■新井監督
基本的にヘッドも自分も性格はイケイケなのね。もちろん試合前の話してる時に「きょうこうやっていくよ」ってシミュレーションを話すんですけど、そこはヘッドが自分を抑えてくれたっていうか、自分がイケイケになったら「いやそれさすがにまずい だろう」っていうこともあったよな。

■藤井コーチ
事前に準備というか、きょうはこういうプランでっていうのが、僕も聞いて、これで行こう、ピッチャー早めに変えていこうとかいうのが大事かなって思っていたし、あんまりベンチがバタバタせんようにというか。

■新井監督
そこは本当助けられましたね。自分も初めてのことだったんで。ベンチがドタバタし てるのって選手に伝わるんで、そこは気を付けたよな。まあドタバタしてたかもしれないけど。

《 指揮官と参謀に迫る5つの真相。2つめは「コミュニケーション」》

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