「大好きな野球ができて最高だった」 山梨県内初の高校女子硬式野球部 1期生が引退 全国16強へと導く
2022年、たった2人の部員からスタートした甲斐清和高女子硬式野球部(山梨県甲府市)。1期生の3年生は"最後の夏"を迎え、頼もしい後輩たちとともに全力プレーを貫きました。集大成となった全国高校女子硬式野球選手権大会での戦いぶりと、感謝の思いにあふれた3年間を振り返ります。
■県内初の女子硬式野球部創設も…2人でスタート
2年前、県内初の女子硬式野球部1期生となる2人が甲斐清和高に入学しました。
廣瀬那菜選手(当時1年)
「(中学で)野球をきっぱりやめてソフトボールに(転向しようとした)」
土屋笑夢主将(当時1年)
「甲斐清和が(女子)野球部をつくるとなってチャンスだと思って入った」
2人が目指すのは、夏の全国大会の決勝…「甲子園」。
ソフトボール部の横で、たった2人で黙々と野球の練習に励みます。
やがて9人がそろい、試合ができることを夢見て―。
土屋主将(当時1年)
「寂しいけど(監督と)1対1で教えてもらえることが多くて得した気分。なんか面白い監督…」
小林幸彦監督
「彼女たちは甲子園という夢を持ち続けてくれている。もっと明るく自信を持ってやってほしい」
■1期生2人の集大成 選手権へ
2024年7月、兵庫県で行われた全国高校女子硬式野球選手権大会は、2年前、1期生2人と監督が夢見た「甲子園」への、ラストチャンスでした。
初戦を突破し、迎えた23日の予選トーナメント2回戦。相手は春の全国大会ベスト4の蒼開(兵庫)でした。
強豪に対し、甲斐清和は初回、連打で相手バッテリーを攻め立て、後輩たちが満塁のチャンスを作ると、打順は土屋主将に回ってきました。
2023年春、続々と入部した頼もしい後輩たちのおかげで、甲斐清和は単独チームとして大会に出場できるようになりました。
土屋主将
「チャンスで回ってきたので1点でも取ってピッチャーを助けたかった。2年生がずっと『3年生に引退してほしくない』『一日でも長くやろう』と思ってやってくれているので本当にうれしい」
土屋主将がライト前に運び、先制点。後輩の思いに応えました。
投げては2年生の先発・三森千夏が奮闘。
三森投手
「先輩を絶対に引退させないという気持ちで最大限野球を一緒にしたいと思っている。気持ちだけはどこよりも上」
春ベスト4の蒼開を圧倒し、7点差に。強豪をコールドで下し、決勝トーナメント進出を決めました。
廣瀬選手
「まさか蒼開に勝てるとは思ってなかった。初回からみんなバンバン打ってくれて本当によかった」
■さらなる躍進 ベスト8を目指す
小林監督
「今大会はここ(ベスト16)を抜けたい。どうしても抜けたい」
決勝トーナメント初戦前日のミーティングでは、過去に対戦経験のある相手チームの分析を共有します。
土屋主将
「打てなかったイメージもなかった。自分たちの打撃を出せば勝てる」
25日、ベスト8入りを懸けた決勝トーナメント初戦。花巻東(岩手)の、スクイズを絡めた堅実な攻撃に対し、甲斐清和は4点のリードを許します。
追いつきたい甲斐清和は俊足の3年生・廣瀬がセーフティーバントを試みますが、惜しくもアウトに。
6回には最大のチャンス。1死満塁の場面で打球はライトへ。3塁ランナー・土屋主将がタッチアップ。しかし、好返球の前に、アウトとなりました。
その後も奮闘及ばず0-4。甲斐清和高女子硬式野球部1期生の、最後の夏が終わりました。
廣瀬選手
「笑夢にはたくさん迷惑をかけたし、お互いつらいこともあったが、笑夢には感謝している。本当にいろいろな人に支えられて大好きな野球ができたので最高だった」
土屋主将
「1年目は何もできずに『他の高校に行っていたら試合ができたのかな』と思った。やっぱり那菜と試合をするのは楽しいし、次の年からは後輩が入ってきてくれて今では甲斐清和を選んでよかった。甲子園に行きたかったが、この舞台で最後にみんなとできたので満足」
2人から始まった、山梨県の高校女子硬式野球の歴史。その挑戦は県内の野球少女たちに夢と希望を間違いなく与えています。
1期生から「甲子園出場」という夢を託された新チームは既に始動。19日開幕の高校ユース全国大会に臨みます。
(「YBSスポーツ&ニュース 山梨スピリッツ」2024年8月18日放送)