1107作品の頂点なるか!? 岐阜愛する控えめな高校生 “雑煮日本一”最終決戦に挑む
1107分の2!こだわり雑煮が一騎打ちの最終決戦
6月1日、大阪府大阪市の『大阪南港ATCホール』を埋め尽くす多くの人。そんな会場で、“食育”に関する全国規模のイベントが開催されました。その中の一つのブースで作っているのは、見た目が全く異なる2種類の雑煮。どちらかが“日本一の雑煮”に選ばれます。
その大会の名は、「Z-1グランプリ」。全国の小中高生が考えたオリジナル雑煮から日本一を決める大会です。今年は1107作品の雑煮がエントリー。ブースで作られていた“2種類”の雑煮は、厳しい審査を経て、一騎打ちの最終決戦に勝ち残った雑煮なのです。
準決勝の際、審査員を務めた料理評論家・服部幸應さんは、「こんな味って、今まで味わったことないし、非常に素晴らしいものを考えていただけたなと」と評価。同じく審査員を務めた料理研究家・浜内千波さんからは、「料亭のお雑煮っていうくらい本当にレベルが高いなと思いました」と称賛の声が寄せられるなど、プロをもうならせた2作品。一体どんな雑煮なのでしょう。
大会のテーマは、『地元食材にこだわったお雑煮』。一つ目は、鹿児島の食材をふんだんに使った「かごんま特製雑煮」です。松飾りにしたかまぼこで見た目は華やかに。焼きエビのだしで伝統的な味に仕上げています。
対する二つ目は、入っている食材はすべて岐阜県産という「信長雑煮」。信長が好きだったとされる干し柿に、甘みのある酒かすを加えた独特の味わいの雑煮です。
強すぎる地元愛が生んだ「信長雑煮」
迎えた決戦の日。2つの雑煮をもとめて、会場は行列ができるほど大盛況。その行列に2種類の雑煮を食べるために並んでいたのが、「信長雑煮」の考案者、冨成 柚凪さん。岐阜県の城南高校で調理を学んでいる17歳の高校生です。
「信長雑煮」のアイデアは、どこから生まれたのでしょうか。「小学校も中学校も高校も全部岐阜城が見えるところにあってすごく身近な存在です」と話す柚凪さん。実は、岐阜県の検定を受けるほど地元愛が強い彼女。岐阜県に関する勉強がきっかけで、「信長雑煮」を思いついたそう。
「なんか不思議な気持ちです。うれしいです。自分の考えた雑煮を(多くの人に)食べてもらえるのは」と、柚凪さん。
そして、対戦相手の雑煮を食べるのは今回が初めて。
初めて食べる対戦相手の味に、「おいしい」と声がこぼれる柚凪さん。「エビのだしをこだわってて、多分すごいそこがおいしい」と分析します。「自信はちょっとなくなってきました、おいしすぎて」と弱気な表情をみせた直後、目の前の行列にはもう一人の決勝進出者の姿が。「かごんま特製雑煮」を考案した、高校3年生・諏訪 葵さんです。
ライバルに声をかける勇気が出なかった柚凪さんでしたが、諏訪さんが雑煮を食べているタイミングを見計らってご挨拶。「おいしかったです」と味の感想を直接伝えることができました。
「鹿児島の魅力を伝えたいと思ってこの雑煮にしました」と、「かごんま特製雑煮」に込めた思いを話す諏訪さん。お客さんの食べてる姿を見たくて、鹿児島から大阪までやってきたそう。「中京テレビ」記者から勝つ自信について質問されると、「あります」と力強く答えました。
会場でのお客さんの反応を取材すると、「どっちもおいしくて迷います。鹿児島の方はしょうゆベースですましの感じで、信長雑煮の方は、白みそでけっこう酒の味がして初めての味って感じです」、「普段慣れている味付けとお肉とかも一個一個味が味がついていたのでおいしかったです」など、さまざま評価が寄せられました。
食べた人の投票で決まる、最終決戦。好きな雑煮の投票箱に、食べ終えた人が次々とおはじきを入れていきます。自信みなぎる鹿児島の高校生VSちょっと控えめな岐阜の高校生。果たして、“雑煮日本一”はどちらになるのでしょうか。
6月2日、ついに結果発表の日を迎えました。「もうドキドキです」と緊張した表情を浮かべながら、結果発表の場へ向かう柚凪さん。
結果は「信長雑煮」287票、「かごんま特製雑煮」206票。81票差で見事グランプリに輝きました。「たくさんの人に自分の考えた雑煮を食べてもらうだけでもすごいし、2つまで残ったのもすごいからちょっと満足してた部分もあったんですけど、グランプリとれてすごくうれしいです」と喜びを語ります。
記者から「グランプリのご褒美は?」と質問されると、「結果がご褒美みたいなものなので」と嬉しそうな笑顔を浮かべました。