“怪しい広告”を記者がクリックしてみたら… 「損失はない」勧誘された1か月半の記録 急増するSNS型投資詐欺の手口とはー
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記者:「20%も利益出るって、詐欺ではないですよね?大丈夫ですよね?」
女:「私がこうやって話してるんで大丈夫だと思います」
記者:「詐欺ではない証拠はみせてもらえないんですか?」
女:「何の証拠あげればいいですか?」
これは、記者とSNS型投資詐欺の可能性が高いアカウントに関わる人物のやりとりです。接触を続けること1か月半、「損失はない」と勧誘してきた相手の言い分とは。
インターネットで投資などと検索すると出てくるサイト。去年12月、その1つをクリックすると…。
記者:「AIによる株式予測と株式投資というサイトが出て気になる銘柄を打ち込むように誘導されます」
試しに「中京テレビ」と入れてみると、「分析レポート完成」との表示に変わりました。
レポートを受け取ろうとすると、"田中"と名乗るLINEアカウントに誘導され、友達登録すると、さっそくメッセージがきました。
LINEメッセージ:
「初めまして。A社、AI開発部のシニアアナリスト、吉田先生のアシスタントを務めております田中と申します」
A社は実在するアメリカの投資会社。田中はそこでアシスタントをしているといいます。
こちらが投資に興味を示すと、情報交換のグループチャットと“吉田先生”を名乗るアカウントを紹介してきました。
初日はここで終了。お金の要求はしてきませんでした。
この一連の流れを詐欺対策のサービスを提供する会社に見てもらうと。
トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん:
「今回のようにLINEに誘導してくるものですとか、LINEの誘導先でグループチャットに誘導されるのが特徴的なもの」
広告からLINEに誘導されるのが多くのSNS型投資詐欺でみられる特徴だといいます。
実態を知るために詐欺の可能性があるアカウントとやりとりを続けることに。
グループチャットには80人ほどが在籍し、“吉田先生”が連日投稿する内容に他のメンバーが反応します。
<LINEグループチャット>
“吉田先生”:「今週の相場は3つのポイントがあります」
メンバー:「感謝しかありません!」
メンバー:「お忙しい中、ありがとうございます」
ときにはこんな話も。
<LINEグループチャット>
メンバー:「おはようございます。おにぎりはツナマヨ派だけどたまに梅を食べたくなるよね」
日常を感じさせるような内容や画像が投稿されることもありました。
万が一のことを考えて、普段使っているものとは別のスマホで始めたやりとり。
そうするうち最初の接触から、約3週間後。
<LINEグループチャット>
“吉田先生”:「皆さん、数日間の調査と交渉を経て、ついに政府との特別な合意が正式に成立しました。利益幅4%~20%。損失はありません」
新しく“損失のない”投資プランが始まると言い出したのです。
プランに参加したいと伝え、更に1週間。田中から審査に通り、アプリをインストールするように連絡がきました。
指示通りインストールすると、まるで証券アプリの様で株価指数などを見ることができます。
ただ一部で見慣れない文字が使われているなど怪しい点も。
この時点で最初のやりとりから約1か月半がたっていました。
これ以上の手続きを進めるには身分証の提示が必要になるため、"田中"と名乗る人物と直接会話することに。
「投資について詳しく聞きたい」と伝え"田中"と電話をすることができました。
田中:「もしもし」
記者:「もしもし田中さんですか?」
田中:「はい、そうです」
電話に出たのは明るい声の女性。
記者:「アプリはインストールしたんですけど、どういう感じで投資することになるのかなと思って」
田中:「銀行の預金口座分かりますか?そちらに預金してもらって、利子が出るシステムになります」
記者:「吉田先生はA社と業務提携している?」
田中:「そういうことです」
記者:「どれくらいの利益になるんですか?」
田中:「だいたい20%くらい」
記者:「20%も利益もらえるんですか」
質問を続けていくと…。
記者:「なんでこの投資プランだと…」
田中:「電波悪そうですね」
記者;「聞こえますか?」
田中:「ちょっと途切れて。もしもーし」
記者:「もしもし聞こえてますか?」
田中:「ちょっとかけ直しますね」
やりとりがうまくいかなくなった後、電波が悪いと一度電話を切られます。
何度かかけ直すと折返しが。核心をつきます。
記者:「20%も利益出るって、詐欺ではないですよね?大丈夫ですよね?」
田中:「私がこうやって話しているんで、大丈夫だと思います」
記者:「わたし、実はテレビ局の記者なんですけど」
田中:「はい」
記者:「これ詐欺じゃないかと思って、やりとりしていたんですけど」
田中:「えっと、要はどういう状況ですか?今。信用してないのであれば、全然やめてもらって大丈夫なので」
記者:「じゃあ田中さんは詐欺ではないとおっしゃるんですね?」
田中:「あはは。何回も言ってますけど、はい。やめてもらって大丈夫なので、別の方の対応をしているので、説明する時間がないです」
記者:「詐欺ではない証拠は見せてもらえないんですか?」
田中:「何の証拠あげればいいですか?」
記者:「田中さんたちが、A社と提携してやっているというしっかりした証拠を見せてもらいたんですが」
田中:「なるほど、はいわかりました」
記者:「見せていただけるってことでいいですか?」
(♪電話が切れる音)
記者:「(電話)きれました」
その後、チャットでも身分を明かして詐欺ではないかと追及しますが、答えはありませんでした。
吉田と田中が所属していると主張するアメリカの投資会社A社に関係しているか問い合わせてみると、「吉田さんと田中さんは弊社と何の関係もありません」という返答。
吉田も田中もA社には“実在しない人物”だと断言。
今回の事例は、お金をだまし取られておらず、詐欺だとは断定できませんが、取材した記者は、“吉田”と“田中”との1か月半のやりとりを通じ、信じてしまうかもしれない3つの点があると感じました。
1つ目が【実在する会社を名乗る】という点。
今回、“吉田”たちが名乗っていたのは実在する米国投資会社で、インターネットで調べると英語のホームページや日本語のウィキペディアが出てきました。会社に問い合わせたことで、実際には“吉田”と“田中”はA社に存在しない人物だと分かりましたが、それを知らなければしっかりとした会社が関わっていると信じてしまう恐れがあると思いました。
2つ目が【やりとりが長期間で日常会話もあった】という点。
取材した1か月半の間、グループチャットはほとんど毎日動いていました。投稿の内容は、“吉田”による投資の知識紹介に加えて、『大みそかは大掃除しますか?』とか『おせち料理は何食べますか?』といったような日常会話もありました。80人ほどが参加するグループチャットで、実際に常時動いているのは20人ほどでしたが、日常を感じさせる内容を長期間にわたって投稿していて、こちらの警戒心を解いているように思いました。
3つ目は【サクラが持ち上げる】という点。
グループチャットのアカウントはおそらく多くがサクラだと思われます。そういったサクラたちが『吉田先生の投資プランのおかげで利益がでました』などと言い、大金が振り込まれた銀行口座の写真を載せるなどして、“吉田”を持ち上げる投稿をしていました。また、わたしの個人チャットにも『こんなに儲かったんだからやりましょうよ』というメッセージが送られてきました。こういったサクラたちの行動が「もしかしたら私も儲かるんじゃないかな」という気持ちにさせる作戦ではないかと思いました。
警察はSNS型投資詐欺に注意を呼びかけています。今回のように「LINEに誘導」「やりとりは SNS のみ」「必ず儲かる」といった内容は詐欺の可能性が極めて高く、早めに身近な人や警察に相談をしてほしいということです。