「怪しいと思っていた」のになぜ...?20代でも被害!警察を名乗る詐欺、未然に防ぐにはどうすればいい?
「お金を振り込んで、私の無実が証明されるなら、一番手っ取り早いのかなと思った」
警察官を名乗る電話に詐欺を疑いながらも、最終的にお金を振り込んでしまった20代女性。ボイスメモに残されていた、約2時間40分の音声から見えてきた巧妙な手口とは。被害を訴える20代女性が、中京テレビの取材に応じました。
ボイスメモに残っていたのは、警察官を名乗る男からの電話。
警察を名乗る男:
「この件をそのまま放置してしまった場合には、この事件の罪が成立してしまうんですよ」
「この事件の容疑者として扱っている状況です」
警察を名乗る男は容疑がかけられていると迫り、無実の証明にはお金を送金するしかないと言います。
約2時間40分にも及ぶ詐欺のやりとり。この電話でお金をだまし取られたというのが、東海地方に住む20代の女性です。
「(電話に)出たら分かると思っていた。(詐欺に)引っかからないと思っていた」と、中京テレビの取材に答えた20代女性。ここからは、ボイスメモに残された「実際の音声」に沿って、当時の様子を振り返ります。
平日の午前、女性のスマートフォンに知らない番号から着信が。仕事柄、全ての電話を取る習慣があったといいます。電話の相手は、“警察”を名乗る男。マネーロンダリング事件の捜査で、あるキャッシュカードを押収したといいます。
警察を名乗る男:
「その中の1枚が○○さん名義で、開設された○○銀行のキャッシュカードを押収していて」
「この登録されている住所が、(東海地方の県)○○市○○丁目○ってなっているんですよね」
読み上げられたのは、女性が今まさに住んでいる住所。電話を出たときには、完全に詐欺を疑っていたという女性でしたが、「(名前と住所)を読み上げられたことで、“あれちょっと本当なのかもしれない”と思った」と、当時の心境を明かします。
警察を名乗る男は、約20分かけて、女性が犯人扱いされていると説明。男は「お電話このまま少々お待ちください」と話し、電話を保留に。保留音がしばらく流れたあと、次に出てきたのは、事件を担当する「神奈川県警を名乗る男」でした。
神奈川県警を名乗る男は、「神奈川県警 捜査二課のタナカと申します」と女性に話しました。
東海地方在住の女性:
「あの本当に詐欺、正直心当たりがなさ過ぎて詐欺を疑っています」
「対面の方が私も安心できるんですけど、そういうのできないんですか?」
不信感を伝えると、男が提案してきたのはLINEのビデオ通話。女性の求めに応じ、警察手帳を見せてきたといいます。
その行動について、女性は「詐欺だったら、そういうの用意していないのかなとか思って。信頼というか本当なのかなみたいな形にはなりました」と振り返ります。
その後、“神奈川県警”への出頭を求められますが、女性が「東海地方に住んでいるため難しい」と伝えると、電話で事情聴取を受けることに。
神奈川県警を名乗る男:
「お名前をお願いします」
東海地方在住の女性:
「○○です」
神奈川県警を名乗る男:
「まず、○○さんがメインとして使っている銀行名をお願いします」
東海地方在住の女性:
「メインとして〇〇銀行です」
神奈川県警を名乗る男:
「はい、口座残高お願いします」
東海地方在住の女性:
「ひとつが〇〇円、もうひとつが〇〇円です」
万が一詐欺では無かった場合、大変なことになると思い、質問に答えてしまったといいます。
それでも身の潔白が証明できないまま、電話開始から1時間が経過。すると、電話の向こうから、ドアをノックする音が聞こえました。
神奈川県警を名乗る男:
「検事、先ほどお話しした〇〇さん、対応お願いします」
検事を名乗る男:
「わかりました」
電話の先は、これで3人目。今度は“検事”を名乗る男でした。
検事を名乗る男は、無実を証明するためには、「お金を指定の口座に送るしかない」といいます。
東海地方在住の女性:
「正直本当に失礼な話かもしれないですが、本当に身に覚えがないことで。急に今日電話がかかってきて、正直ずっと詐欺を疑っている状況なんですよ」
「本当にもし(お金を)とられちゃったら、私はどう生きていこうっていうところもあるんで。何か一筆だったり そういうものを書いてほしいですね」
検事を名乗る男:
「あの今回ですね、○○さんが神奈川県警の方にお越しいただくのが難しいということなので、今電話でですね、お話をさせていただいているんですね。それは、おわかりになりますか?」
結局、女性は電話をつないだまま銀行に向かうことに。電話を始めてから、すでに2時間が経過していました。
検事を名乗る男:
「もし仮にですね、どなたかにお話をされてしまった場合は、“秘密漏洩罪”というですね、別の罪が今度適用されてしまいますので、勾留期間がさらに長引くようなかたちになりますね」
検事を名乗る男は、移動中も女性に罪が重くなることをちらつかせ、誰にも言わないよう指示をしたといいます。
女性は電話で言われるまま30万円を振り込み、そしてそのお金は返ってきませんでした。
電話で説明された容疑について、「マネーロンダリングとか関わってなかったので、絶対白っていうのは分かっていた」という女性。当時の心境について、「それ(お金)を振り込んで、後で返してもらったとして、私の無実が証明されるなら、一番手っ取り早いのかなと思ったり...」と話し、続けて「もう最終的には結構疲れていて。振り込めば全て終わると思ってしまった」と明かしました。
オレオレ詐欺全体では、70代や80代など高齢者が被害にあうことが多いですが、警察を名乗る詐欺に限定すると、若い年代も多い印象。
愛知県警の担当者は、「SNSで取り調べ」、「現金を送るよう指示」、「警察手帳の画像を送る」などがあった場合は、詐欺を疑ってほしいといいます。
また対策として、
・国際電話の利用休止の申し込みをする
・迷惑電話防止アプリを活用する
・一度電話を切ってから、警察署に自分で問い合わせる
などを挙げました。
手口が巧妙化する特殊詐欺。知らない人から電話がかかってきたら、少しおかしいなと疑うことが大切かもしれません。