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4度の手術を経験、中学2年生が“私の個性”病気を自由研究「嫌な経験も私にしかできない体験だから」

2023年10月18日 15:00
4度の手術を経験、中学2年生が“私の個性”病気を自由研究「嫌な経験も私にしかできない体験だから」

「あの子の鼻、変じゃねぇ?」同級生からの心なき言葉は、“病気に対する無知”が理由だと気が付いた。その気付きが、当時中学1年生だった故東来宝さんに、自身の病気「口唇口蓋裂」を自由研究のテーマとして起用するキッカケと行動力を与えた。生後2か月から、4度の手術を経験。幼い頃から悩み苦しんできた彼女は、「嫌な経験も私にしかできない体験だから」とすべての経験を“力強さ”に変えていた。

500人に約1人「口唇口蓋裂」と闘った幼少期

「なんで私だけこんな風なんだろうって、すべて“口唇口蓋裂”のせいにしていた時期もあった」そう語るのは、岐阜県御嵩町の共和中学校に通う中学2年生・故東来宝さん。上唇や上あごが裂ける病気「口唇口蓋裂」のある状態で生まれてきたが、4度の手術を経て、現在は手術の跡もほとんど分からないほどだ。「口唇口蓋裂」は日本では500人に約1人の割合で生まれてくると言われており、来宝さんは生後2か月で口元を閉じる手術を行った。さらに9歳の頃に、上あごに骨盤の骨を移植するという大きな手術を経験。術後は普通に歩くことができず、歩行訓練を行っていたという。

中学1年生の頃、そんな自身の病気や今までの治療を“自由研究”としてまとめた来宝さん。50ページにも及ぶ冊子となった自由研究「私の個性・口唇口蓋裂」は、現在、当時通院していた愛知県豊明市の「藤田医科大学病院」に展示。誰でも自由に閲覧することが可能で、気軽に手に取ることができるように受付横に常時置かれている。

自由研究では、手術前後の口周りの様子や苦労した出来事などを来宝さん自身の写真を用いて細かく紹介。「鼻の下に貼るテープは、裂を寄せて貼るのがポイント」や「レチナはテープの固定をしっかりやらないとすぐに外れてしまう」など経験者ならではのコメントも豊富。来宝さんが経験していきた治療の日々や経過は、同じ病気と闘う子供たちに勇気を与えているという。

自由研究のキッカケは「病気を笑う=無知」の気付き

「隠したいという気持ちもちょっとはある」と病気に対する想いを話してくれた来宝さん。そんな彼女が自身の病気を「自由研究」のテーマに掲げたキッカケ。それは、治療中だった小学1年生の頃、同級生に笑いながら言われた、「あの子の鼻、変じゃねえ?」という言葉だった。心なき言葉に悩んだが、“心配をかけたくない”という思いから、両親には言えなかった。当時の心境について来宝さんは、「今まで何回も手術や入院を繰り返していたので、これ以上何も迷惑かけたくなかった」と振り返る。

しかし1年後、ついに我慢出来ずに、両親に抱えていた悩みを泣きながら告白。両親との会話を通して、心ない言葉は“病気への無知が原因”と気付いた来宝さん。自分の病気を“知ってもらうため”の行動を起こすことを決意し、その行動が自由研究に繋がったという。

自由研究では、同じ病気の子どもや保護者たち20人以上にアンケートを行い、経験談なども紹介。同じ境遇に悩む人々が、“私だけじゃないんだ”と気付き合える場にもなった。来宝さんは「自分にしかないものって考えるとかっこいいなって思える気がした。みんなに、“私にしかないんだよ”って言えることはすごいと感じた」と自由研究の日々を振り返る。

彼女の自由研究発表を機に、「口唇口蓋裂」の存在を知った同級生も多い。また、「全校生徒が見る場で、形に残すことに尊敬する」と来宝さんの病気と真正面に向き合う姿に、感銘を受けた同級生の姿もあった。

そんな来宝さんの成長に、嬉しさを滲ませる医師がいる。これまで彼女の手術を担当してきた、「藤田医科大学病院」の相澤貴子医師だ。取材時、藤田医科大学病院を訪れた来宝さんと会話を楽しんだ相澤医師。柔らかな笑顔を浮かべる来宝さんを眺めながら、「誰しもが、壁にぶつかる時がくる。来宝ちゃんたち口唇口蓋裂の子どもたちは、その時期が病気の影響で年齢的に早いかなと思う。(自由研究が)私だけじゃないんだという勇気を与えていることは事実だと思います」と述べた。

苦楽をともにした相澤医師からの温かい言葉に、思わず涙がこぼれる来宝さん。涙を拭いながら、「みんなと違う経験をして嫌なこともあったけど、でもその分、私にしかできない思い出が作れるから。これはずっときっと心に残っている思い出だと思います」と力強く語った。

来宝さんの自由研究は、「藤田医科大学病院」の小児外科、こども病棟、歯科・口腔外科外来にて閲覧することができる。

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