"耐震診断"の問い合わせ急増! 専門家に診てもらう前に…手軽にできる家の状態をセルフチェックする方法
元日に発生した能登半島地震で被害が深刻だった石川県珠洲市では、市内の家屋の半数にあたる3000戸程度が全壊との見通しが示されました。こうした状況を受け、東海地方でも耐震診断の問い合わせが急増しています。
耐震診断の現場に密着! 自宅に見えない落とし穴も!?
取材班が向かったのは愛知県一宮市。同市にある仲山瑛子さんの自宅で行われていたのは耐震診断です。耐震診断とは、県から認定を受けた建築士が、大規模地震に対し、家の耐震性がどれくらいあるのかを判定するものです。一宮市では、耐震基準が改正された1981年6月より前に着工された木造住宅に対し、無料で耐震診断を行っています。
能登半島地震があった石川県では、今月15日から遺族の同意を得られた故人の氏名などをホームページで公表していて、死因については、ほとんどが家屋の倒壊であることがわかります。
一宮市建築部住宅政策課 加藤彰一郎専任課長:
「みなさん、能登半島地震の家屋の被害を見て、自分の家も心配だなというところで耐震診断の申し込みが増えている状況です」
一宮市では、能登半島地震後に耐震診断の申し込みが増加。昨年1月は15件程度だったという申し込みが、今年はすでに29件あったといいます。仲山さんが耐震診断を申し込んだきっかけも、能登半島地震でした。1970年にこの土地に家を建て、その後、増築や改築を繰り返しているため、基礎を補強している部分としていない部分があり不安だといいます。
耐震診断員の小笠原さんが床下などを念入りに確認したところ、今のところ特に気になるところはないという結果でしたが、その一方、地盤沈下でヒビが入っているところを発見。小笠原さんによると、地盤の状況は土地によって違い、木曽川に近いこの地域は、水をたくさん含んだ砂の地盤が多いため、液状化の危険性が高いといいます。また、普段は気付かないこんなところも…。
愛知県木造住宅耐震診断員 小笠原國一さん:
「通常、雲筋かいとか小屋筋かいとか、横につなげる材料が基準になってくるんですけど、仲山さんのお宅の場合、多少入っているだけで少ない」
天井裏の柱がゆがまないようにとりつける補強の木材が通常よりも少なく、地震が発生した場合、外れてしまう可能性があるといいます。この現地調査をもとに、コンピュータで解析し、結果が出るのは約1か月後。
耐震診断を依頼した仲山瑛子さん(78):
「屋根裏を普通、見る機会ないじゃないですか。やっぱり弱いところだったんだなって。そういうきっかけになっただけでも、すごく良かったと思ってます」
仲山さんは、今後、天井裏の補強を検討するということです。一宮市の担当者は、耐震診断をして、自分の家が安全なのか問題があるのかを知ることが一番大事だといいます。
すぐにできる!耐震チェック 10項目の合計得点で診断
専門家の耐震診断を受ける前に、手軽にできるセルフチェックもありました。日本建築防災協会がホームページで公開している「誰でもできる我が家の耐震診断」。木造住宅について10個の項目に答えた点数の合計で、家がどんな状態か参考にできるといいます。点数が高いほど安心だということです。ぜひチェックしてみてください。
【誰でもできる我が家の耐震診断チェック】
① 建てたのはいつ頃ですか?
・建てたのは1981年6月以降→1点
・建てたのは1981年5月以前→0点
・よく分からない→0点
② いままでに大きな災害に見舞われたことはありますか?
・大きな災害に見舞われたことがない→1点
・床下浸水・床上浸水・火災・車の突入事故・ 大地震・崖上隣地の崩落などの災害に遭遇した→0点
・よく分からない→0点
③ 増築について
・増築していない。または、建築確認など 必要な手続きをして増築を行った→1点
・必要な手続きを省略して増築し、または増築を2回以上 繰り返している。増築時、壁や柱を一部撤去するなどした→0点
・よく分からない→0点
④ 傷み具合や補修・改修について
・傷んだところは無い。または、傷んだところは その都度補修している。健全であると思う→1点
・老朽化している。腐ったり白蟻の被害など不都合が発生している→0点
・よく分からない→0点
⑤ 建物の平面はどのような形ですか?
・どちらかというと長方形に近い平面→1点
・どちらかというとLの字・Tの字など複雑な平面→0点
・よく分からない→0点
⑥ 大きな吹き抜けがありますか?
・一辺が4m以上の大きな吹抜はない→1点
・一辺が4m以上の大きな吹抜がある→0点
・よく分からない→0点
⑦ 1階と2階の壁面が一致しますか?(ツーバイフォー工法なら1点)
・2階外壁の直下に1階の内壁または外壁がある。または、平屋建である→1点
・2階外壁の直下に1階の内壁または外壁がない→0点
・よく分からない→0点
⑧ 壁の配置はバランスがとれていますか?
・1階外壁の東西南北どの面にも壁がある→1点
・1階外壁の東西南北各面のうち、壁が全くない面がある→0点
・よく分からない→0点
⑨ 屋根葺材と壁の多さは?
・瓦など比較的重い屋根葺材であるが 1階に壁が多い。 または、スレート・鉄板葺・銅板葺など比較的 軽い屋根葺材である→1点
・和瓦・洋瓦など比較的重い屋根葺材で、 1階に壁が少ない→0点
・よく分からない→0点
⑩ どのような基礎ですか?
・鉄筋コンクリートの布(ぬの)基礎または ベタ基礎・杭基礎→1点
・その他の基礎→0点
・よく分からない→0点
<診断結果の目安>
・10点→ひとまず安心
・8~9点→専門家に診てもらう
・7点以下→心配! 早急に診てもらうべき
みなさんは何点取れましたか? 心配なら早く診てもらう、早く確認することがなによりも大切です。また、基本的な家を守る仕組みについて理解しておくことも重要です。建物の地震対策でよく使われる「免震」「耐震」「制震」という言葉は、それぞれ意味が異なります。
「耐震」
壁や柱を強化して補強材を入れることで、地震の揺れに耐える構造。
「免震」
建物の下に特殊な免震装置を設ける構造。地盤が揺れても建物があまり揺れないよう、揺れを受け流す。病院や役場など地震後も機能を維持しないとけない建物に有効。
「制震」
建物内にダンパーと呼ばれる振動軽減装置を設置して地震のエネルギーを吸収し、地震による揺れを小さくする構造。高層ビルによく使われていて揺れを少なくする効果がある。
まずは自宅の状態を把握することが第一歩。建物を補強する方法もあるので、自宅の構造をよく理解して、地震から家を守りましょう。