【特集】命を守る「マイタイムライン」 福井市・一乗地区 1人1人が行動計画策定 <福井豪雨から20年>シリーズ①
福井豪雨から18日で20年。嶺北地方を襲った集中豪雨で死者4人、行方不明者1人、住宅への被害は1万3000棟を超えるまさに未曽有の大水害でした。あの時、人々はどう命を守り、教訓にしてきたかを考えます。シリーズ1回目は、福井市の一乗地区からの報告です。
■伊与正博さん(82)
「川の水がうねるんやね。そしてでっかい石が流れるんやね。ゴツン、ゴツンと。そりゃもう、見たこともない景色でした」
一乗谷朝倉氏遺跡の奥にある福井市浄教寺町。伊与正博さんは当時、町内会長を務めていました。付近では、未明から1時間に70ミリを超える猛烈な雨が降り続きました。
■伊与正博さん(82)
「橋に物が詰まって水がせき止められて、その水が(川の)両方へ流れた」
集落の真ん中を流れる一乗谷川は、あっという間に氾濫。住民は川の両岸でそれぞれ高台に避難しました。地区は流木や土砂が流れ込んで変わり果てた姿に。それでも犠牲になった人はいませんでした。
■伊与正博さん(82)
「不思議なぐらいやね。川の水位見てれば、石が流れる音がするとか早めに感知したんやろね。で、お互いに隣近所の人と声かけたんでしょうね。早かったですよ、避難は。子どもの頃から一緒に学校行ったり遊んだり、そういう人ばっかりですから。言わずとコミュニケーションはお互いにね。それしかない」
山と山に挟まれた一乗地区。5時間にわたって降り続いた雨が、一気に流れ込みました。上流にある浄教寺町から5キロ下流で足羽川との合流地点にある安波賀中島町でも、越美北線の鉄橋が流されるなど深刻な事態に。
■吉川きよみさん(73)
「朝7時には他人事やったんやって。すぐわが事になった」
■吉川孚さん(74)
「逃げようがないっていうか。床上71センチ」
足羽川から70メートル離れた所に住む吉川さん夫婦。家の外に逃げる余裕はなく、2階に避難しました。
■吉川きよみさん(73)
「こうやってうねってた。忘れんわ。(水が)一気にバーッと入って来たんやって。あっという間に」
周辺の住民はボートで救助され、泥だらけになった自宅は、多くのボランティアの力で復旧しました。
■吉川さん夫婦
「自分もまだ若かったし、何とか立ち直れた。今やともう2人とも70(歳)すんでるし…。(今度あったらって思うんですか?)可能性はありますよね。絶対ないとは言えない。だって、最近の雨すごいもん」
地区では今年、福井豪雨クラスの大雨から命を守るため「マイタイムライン」を作ることにしました。災害の時に自分や家族がどんな行動をとるのか、何を準備するのかを事前に決めておく行動計画です。
■一乗公民館 小林彰館長
「(一乗地区は)山の麓から足羽川の合流地点まで長い距離がありますので、災害がそれぞれ違う。それぞれの地域で、それぞれの家庭がまず自分が何をせなあかんのか。行動目標をここに書いてもらうことをせなあかんのではないか」
静かな山あいの地区を襲った20年前の豪雨からの教訓。高齢化が進む地域で、命を守る取り組みが続いています。