福井発の超小型人工衛星 H3ロケット搭載、打ち上げ成功 宇宙産業を支える繊維王国の技術
日本の次世代主力ロケット「H3」の打ち上げが2度目の挑戦で成功しました。ロケットに搭載された超小型人工衛星は、繊維王国・福井の技術の結晶で、県内の宇宙ビジネス進出に向けた足がかりとなります。(2月19日)
H3ロケットは17日午前、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
ロケットには福井市の総合繊維メーカーが開発した超小型人工衛星が搭載され、県内でも関係者が固唾をのんで見守りました。
補助ロケットが切り離され機体が目標の軌道に到達すると…。
■セーレン研究開発センター・横溝正人さん
「電子や機械構造のことが出来る技術者がいましたので、その技術者が宝。技術の蓄積をして今回、人工衛星を作った。大学の協力を得ながら技術を発展させていて自分たちのものが作れるようになった」
超小型人工衛星は、国からの委託事業で、福井大学や東京大学、県内企業などとタッグを組んで3年がかりで開発しました。
■セーレン研究開発センター 人工衛星グループ・中村博一グループ長
「セーレンは繊維の会社。繊維の業界で独自の製造、検査装置を作っています」「その技術を転用しているし、人としてもこの業界に貢献している」
衛星の素材には軽くて耐久性に優れた特殊な繊維を、機体の制御には繊維加工に必要な電子制御の技術を、それぞれ応用しています。また、衛星の運用にはオーダーメイドの衣料デザインで培ったソフトウェア開発の技術が生きています。
福井工業大学やベンチャー企業のアンテナを使って、坂井市のセーレンの事業所から衛星をコントロール。衛星に搭載した熱を感知するカメラで地表の熱の変化を観測する実証実験を行います。
■セーレン研究開発センター 人工衛星グループ・中村博一グループ長
「高度670キロに、衛星と通信するアンテナを向けてデータをやり取りする。その技術は重要で難しい。我々初めて主体的にやるのでチャレンジ。地球上の温度の変化、工場の温度の変化、船の温度の変化を観測データ化する。それを分析することで、経済活動の変化に対する施策・アクションを作っていく。そのための分析ソース」
国内総生産(GDP)でドイツに抜かれ、世界4位に転落した日本。かつてはアメリカに次ぐ経済規模を誇りました。当時の主力産業だった繊維で国内トップシェアを誇ったのが福井でした。
しかし、繊維業界は日米の貿易摩擦の激化や新興国との価格競争で衰退。逆境から抜け出そうと、車の内装材など衣料以外の成長分野に進出したセーレンは、持ち前の技術で宇宙産業の分野に挑んできました。
■セーレン研究開発センター・横溝正人さん
「我々が今までやってきたことに自信ありますし、いろんな経験がある。それを生かしてビジネスを確実に作り上げていく」
製造から運用と一貫した体制を確立した人工衛星ビジネス。繊維王国・福井の技術が宇宙産業のものづくりを支えています。