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特集「キャッチ」子どもの本の店「エルマー」絵本で救われた店主が迎える温かな居場所 福岡 

2024年12月22日 8:29
特集「キャッチ」子どもの本の店「エルマー」絵本で救われた店主が迎える温かな居場所 福岡 
特集「キャッチ」です。“絵本で救われた経験を生かして子育て支援がしたい”という子どもの本専門店が福岡県春日市にあります。絵本を通して地域の人と人をつなぐ、店主の思いとは。

手に取った人の心に寄り添ってくれる絵本。そんな絵本と子どもが大好きな、ある女性の物語です。

ここは福岡県春日市にある、子どもの本専門店、エルマーです。

■前園敦子さん
「いない、いない、ばぁ。」

店主の前園敦子さん(77)です。ことしで店を開いて35年になります。店内には、絵本から児童書までおよそ3500冊がそろっています。この時期、本棚を彩るのはクリスマスの絵本です。前園さんおすすめの1冊は「サンタおじさんのいねむり」という絵本です。

■前園さん
「クリスマスイブの時に動物たちが出てきて、サンタさんが眠っているのを見つけたの。これはサンタの代わりに僕たちがくばってあげようってなって。みんながくばり終えた後、ここね。くばっておきましたよって。否定じゃなく。批判してないんですよ。くばっておきましたよって。」

この絵本が初めて出版されたのは1969年です。親から子へ読み継がれる息の長い作品を、前園さんは大切にしています。これまで前園さんは、数え切れないほどの絵本や児童書に出合ってきました。

前園さんの確かな目利きを頼って、佐賀や熊本など県外からもお客さんがやってきます。中でも一番多いのは、乳幼児を育てるお母さんです。この日、7か月の赤ちゃんを持つお母さんが絵本を探しにやって来ました。

■お母さん
「寝かしつけの時に読む本と、面白い感じの。」

前園さんが紹介したのは、眠る前のお母さんとの温かな時間を描いた絵本「ぷくちゃんのねんねんぽっぽ」です。

■前園さん
「これは保育園の先生が、お昼寝の時に必ず読むんだって。」

そして、こんなアドバイスも贈ります。

■前園さん
「寝かしつけの本というのではなくて、優しくなるような本を読んであげた方が心がポッとするじゃないですか。そういうのを読んであげたらいいと思うの。」

お客さんが来ると、その場に居合わせた人たちを巻き込んで、読み聞かせや、わらべうたが急に始まる「静かじゃない」本屋さんです。

■前園さん
「タッチ、タッチ、タッチッチ。」

子育て中のお母さんにとって、何度も通いたくなる場所だといいます。

■訪れた人
「子どもも楽しそうにするので。公園や児童センターとも違うけれど、子どもも私も精神的なよりどころ。」
「(前園さんは)子どもが好きで子育ての苦労を分かっているから、ママのことも愛してくれるような、みんなの母みたいな方。」

前園さんも、2人の子どもを育てあげました。20歳の時に結婚し、その2年後に長男を出産しました。初めての子育てはうまくいかないことばかりで、ストレスと不安から育児ノイローゼになったと当時を振り返ります。

■前園さん
「子育て書通りに育てようとしたのですが、うまくいきません。例えば、3歳まで厳しくと書いてあったら、3歳までどう厳しくするかよく分からないから結局、親の都合のよい子育てでしょ。きのうは許せても、きょうは許せないとか。」

試行錯誤の子育てで、3歳から始めたのが絵本の読み聞かせでした。寝る時に、子どもがよく読んでほしいと持って来ていた絵本があります。

タイトルは「ぼくにげちゃうよ」。

あるところに、こうさぎがいました。
あるひ、このこうさぎはいえをでて、どこかへいってみたくなりました。
そこで、かあさんうさぎにいいました。
「ぼくにげちゃうよ」
すると、かあさんうさぎがいいました。
「おまえがにげたら、かあさんはおいかけますよ。だって、おまえはとってもかわいいわたしのぼうやだもの」

■前園さん
「本を読んでいる時は心がすごく温かくなって、幸せな時間が共有できた。そういうところで、本の力はすごいなと思って、本によって私も子育てがすごく楽になった。」

絵本で救われた経験を生かして子育て支援がしたい。そんな思いで始めたのが、子どもの本の店、エルマーです。今では店を飛び出し、公民館や児童センターなどで絵本の魅力を伝える講演もしています。

■前園さん
「ブタさんのお鼻。まねっこ用意いいですか?ブー。」

夕方、エルマーに1人でやってきたのは小学5年生の男の子です。塾に行く前、時々寄ってくれるのだといいます。

■前園さん
「みかんを、じゃあ、これ2つ。」
■男の子
「いや、いい。もう塾行く。あ、まぁいいや。ありがとうございます。」

男の子は、3歳からの常連客です。前園さんの店は、“居心地が良く面白い場所”だと話します。

■男の子
「ばいばーい。」
■前園さん
「いってらっしゃい。」

■前園さん
「幼い時の経験は、塾やお稽古も大事だと思うけれど、でもやっぱり私は、人とのつながりだと思うんです。そこを一番大事にしていきたいと思う。何かあった時にエルマーに行って、スタッフや前園さんにお話できたよねって。おなかすいたって言ったらお菓子くれるよねとか、そういうことが一番人生を豊かにしていくんじゃないかなと思うんです。」

地域に根ざして、絵本でつなぐ人と人との思い。エルマーと前園さんの物語は、まだまだ続いていきます。

※FBS福岡放送めんたいワイド2024年12月18日午後5時すぎ放送

最終更新日:2024年12月22日 8:35