田んぼの脇に立つロボットは小さな図書館 スローな場所で本の持つ力に触れて「返さなくてもいい」本と友達になって 福岡
福岡県みやこ町の田園風景にたたずむ愛らしいロボット、実は小さな図書館です。ロボット図書館の“生みの親”の思いとは何でしょうか。
福岡県みやこ町にある平成筑豊鉄道、犀川(さいがわ)駅の周りには、のどかな田園風景が車窓いっぱいに広がります。
列車を降りて近づいてみると、田んぼの脇に愛らしい顔の木のロボットがありました。青いボディはちょっと疲れ気味ですが、そのおなかの中には子ども向けの本がズラリと並んでいます。
看板には『Little Free LIBRARY』の文字があります。ここはいつでも誰でも好きなだけ本が借りられる、青空の下の小さな図書館です。
激しい雨の日や風の日も、晴れたらやって来る子どもたちのために、静かに待ち続けます。
■訪れた人たち
「山がバックにあってすごく景色もいいので、気持ちよく絵本が読めます。」
「ちょっと寄ってみて読み聞かせをここで5分でも10分でもすると、そこから新しい芽が育つと思う。」
田んぼの脇にたたずむ色あせたロボットの物語です。まちかどで見つけた小さなニュースに耳を傾けます。
ロボットは、使わなくなった物の寄せ集めで作られています。目は自転車の反射板、胴体はタンスの引き出しにアクリル板をつけて、本が入っていることをアピールしています。
ベンチに座って、ゆっくり読むこともできる、かわいい図書館です。
■訪れた人
「散歩コースです。孫がいて天気がいい時はちょっと本を読む。」
ロボット図書館の生みの親に、自慢のおうちのお庭を見せてもらいました。
「これピザ窯。手作りのピザ窯。手作り感いっぱいだよね。きれいに仕上がってないけど、手でペタペタやって楽しかったね。いい風景だよね。」
みやこ町に住む山崎周作さん、74歳です。地元の図書館の設立に関わり、副館長も務めた“本のプロフェッショナル”です。だから、おうちには“図書室”があります。
■山崎周作さん(74)
「(全部、山崎さんの本?)そうです。買った本と寄贈された本と、図書館のリサイクルの本とか、5000冊はあります。もう一部屋あります。(全部読んだ?)読まないとどうするのよ。積んどくだけ?何のため?ブロックじゃないから。」
子どもたちが本に親しむ機会が減ってきていることを残念に思っていた山崎さんが、本の楽しさを知るきっかけになればと去年始めたのが青空ロボット図書館です。
なぜ、人通りが少ない場所を選んだのでしょうか。
■山崎さん
「散歩道にあってもいい。峠道にあってもいい。ゆったりしたスローな場所。それがここだった。空間的な広がりがある場所で本を手に取ってもらうと、おもしろいかな。」
山崎さんは“本の力”を次のように語ります。
■山崎さん
「つらい時や悲しい時に本を読むことによって『そんなに嘆くことではない』と思えることがある。楽になる。希望が出てくる。そういう物を活字が生み出す。」
なぜ、ロボットなのでしょうか。
■山崎さん
「鉄腕アトム。何万馬力とかいうじゃないですか。本も何万馬力の力を持っていますよね。読んでみると元気になって、心が飛んでいくよね、その場から。」
本の持つ力を知る山崎さんは、ポケットマネーで購入した本も貸し出しています。返却の日にちに決まりはありません。
■山崎さん
「返さなくてもいいです。借りた人が持っていたらいいじゃないですか。その本と友達になって手元に置いておけばいい。」
子どもたちを思う優しい気持ちから生まれた木のロボットは、やって来る子どもたちの心にあたたかな“あかり”をともしてくれています。