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シリーズ「こどものミライ」双子を育てる親が悩みを吐き出し支え合う 多胎ピアサポートとは 福岡

2023年12月21日 18:00
シリーズ「こどものミライ」双子を育てる親が悩みを吐き出し支え合う 多胎ピアサポートとは 福岡
双子・三つ子の育児を先輩に相談
シリーズ「こどものミライ」です。今回のキーワードは「多胎ピアサポート」です。多胎とは、双子や3つ子、ピアとは仲間という意味で、多胎育児の家庭を経験者が支援することを指します。当事者同士だからこそ分かり合える、助け合える支援とはどんなものなのでしょうか。

■参加者
「メリークリスマス!」

12月、福岡県久留米市で開かれた交流会に参加した18組の家族には、いずれも双子がいます。

子どもたちは歌を歌ったりする中、親どうしは、にこやかに話しています。この交流会を開いたのは、双子がいる家族が集うサークル「ツインズクラブ」です。

■参加者
「双子の会がありますよって役所で言われて。いろいろ相談できるので気が楽になります。」

交流会に参加していた古賀彩香さん33歳は、生後4か月の双子の母親です。

■古賀彩香さん(33)
「家で1人で2人見なきゃいけないので。心がすさんできたりするので、ほかの同じくらいの赤ちゃんたちに会って気分転換になります。」

11月、古賀さんの自宅に「ツインズクラブ」のメンバー2人の姿がありました。2人は現在、10代の双子を育てる先輩双子ママです。

「ツインズクラブ」では久留米市の委託を受け、生後1年未満の双子や3つ子を育てる「多胎育児家庭」を訪問し、相談に乗っています。

双子は一般的に小さく生まれやすく、母乳を吸う力が弱いため、1人にかかる授乳時間が長くなる傾向にあります。

また、1人を寝かせても、すぐにもう1人の授乳時間になり、母親は十分に睡眠をとれない日々が続くといいます。

古賀さんは、そんな双子の育児ならではの悩みを先輩ママに吐き出していました。

■古賀さん
「腰と膝がきています。何度もだっこしては下ろしてを繰り返すから。(今は)授乳する時、全然だっこせず、自分が移動して直接母乳を与える時も寝たまま。」
■サポーター
「じゃないとね。時間も長いし。」

こうした 交流会や多胎育児の経験者による支援は「多胎ピアサポート」と呼ばれています。年間20組ほどが生まれる久留米市では、「ツインズクラブ」と連携して2017年から公的支援を始めました。

生後1年未満の多胎育児家庭を先輩ママが訪問する事業は、2回まで無料で利用することができます。

■久留米市こども子育てサポートセンター・対馬真弓さん
「委託しているツインズクラブの影響がとても大きい。支援態勢がしっかり整っているし、ピアサポーターの養成講座などを実施しているのもあるし。私たちだけでは手が届きにくいところがある。」

双子用の大きなベビーカーでは公共交通機関に乗せにくいなど外出が難しいこともあり、多胎育児家庭は孤立しやすいといいます。

厚生労働省の記録を基に日本多胎支援協会が推計したところ、その虐待リスクは、1人を育てるのに比べ、およそ2.5倍から4倍になるといいます。

しかし、福岡県によりますと、県内で多胎ピアサポートを公的に行っているのは、久留米市・北九州市・春日市・福津市・糸島市・粕屋町の、6つの自治体にとどまっています。

多胎児の出生率は総分娩数のおよそ1パーセントです。双子や3つ子の出生数そのものが少なく、経験者による支援を一つの自治体だけで行うのは難しい側面があります。

福岡県の服部知事は9月議会で「未実施の自治体同士が共同実施やすでに支援事業を実施している市町村への参加など、広域的な事業が実施できるよう、民間団体の市町村との連携の可能性について話をうかがってまいりたい」と話しました。

福岡市ではことし、多胎ピアサポートに取り組もうと、民間の団体「タタママ」が立ち上がりました。

■講師
「基礎知識を持って話を聞けるのが強み。双子を産んで育てた人にしかない力です。」

「タタママ」の代表で2歳の双子を育てる牛島智絵さんは、双子や3つ子の親が集まる交流会を毎月開いたり、多胎育児ならではの情報をSNSで発信したりしています。

■タタママ・牛島智絵代表
「SNSでつながった先輩ママがいたから救われた。エリアでオフライン(対面)でできたら、ママたちの居場所だったり育児のしやすさが拡大していく。そこをピアサポートが担っていくと思います。」

今後は自治体の窓口などで「タタママ」のチラシを配ってもらうほか、ピアサポートの訪問支援を始めたいと考えています。

自分たちが経験した多胎育児特有の悩みを社会に還元していきたいと、多くの当事者たちが立ち上がっています。