土石流が襲った竹野地区 災害の爪痕は心にも 住民同士のつながりで「心の復興」を 福岡
2023年7月に九州北部を襲った記録的豪雨から、施設や土地の復興が進む一方で、被災地では住民の「心の復興」への取り組みも進んでいます。
2024年12月14日、福岡久留米市田主丸町の竹野校区で開かれたイベント「たけの交流カフェ」です。
■参加者
「懐かしい。おいしいです。」
温かい食事やクリスマスリースの手作り体験に、参加した人たちの笑顔があふれます。
■参加者
「(交流カフェは)自分のためにもなるね。」
「元気をもらうね。」
「ひどかった人は大変やけどね。みんな助け合っていかないとね。」
参加した住民の心には今も、災害の爪痕が刻まれていました。
2023年7月、九州北部を襲った記録的な大雨で土石流が発生した竹野校区です。
■占部晃太朗記者
「土石流が流れ込んできた現場には、一夜明けたきょうも大きな岩やがれきが残されたままになっています。」
山の頂上付近の斜面が崩れ、土砂は一気に住宅地に押し寄せました。竹野校区では12軒の住宅が全壊し、70代の男性1人が亡くなるなど、甚大な被害が出ました。
■竹野校区まちづくり振興会 防災リーダー・矢野 井史(じょうじ)さん(68)
「ここから下は土砂で全部埋まった状態で、作業小屋もそのまま。屋根が斜めになって埋まっている状態です。」
久留米市から委託を受け、災害前から竹野校区を見守ってきた「まちづくり振興会」の矢野さんです。
現在、およそ2500人が暮らす竹野校区では、土砂の多くが撤去され、護岸工事も進んでいます。ただ、矢野さんが心配するのは、住民の心から消えることのない不安についてです。
■矢野さん
「大雨がいつ降るかわからない。土砂がいつ流れてくるかという不安を抱えながら、皆さん生活をしている。そういう中でも、生活をしていかないといけない。」
こちらは去年、土石流に襲われた中野さん夫婦の自宅です。被災後は大きな鉄の柱で補強しました。しかし妻の恵美子さんの心には、今も不安がつきまといます。
■中野恵美子さん(69)
「今はだいぶ慣れましたが、やっぱり怖いです。時々(校区の人と)電話はしているのですが、やっぱりバラバラになっているので、なかなか自分たちで集まりましょうということはできない。」
土石流に巻き込まれ、右足を切断する大ケガをした石川さんは、3か月前に竹野校区に戻りました。以前とは違い、人との交流を避けてしまうと話します。
■石川武さん(75)
「いっときは人とも会おうと思わなかった。やっぱり(ケガを)同情するけんですね。そんなところが、なんかいかんですね。」
被災してから途切れがちになった住民同士のつながりを取り戻すために。まちづくり振興会が企画したのが、校区の住人全員が参加できる交流カフェでした。
■竹野校区まちづくり振興会・渡邊美和さん(52)
「参加している方に、もし何か困り事とか変化を聞かれたら、ちょっと一言、言っていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。」
■渡邊さん
「(何の準備を?)ポン菓子です。懐かしのポン菓子です。」
多くの人に立ち寄ってもらおうと、会場の入り口には昔懐かしいお菓子を楽しめるコーナーを作りました。会場の中でも自然に交流が生まれるよう、ボランティアの協力も得て、さまざまな体験コーナーを設けています。
■交流カフェのスタッフ
「こんにちは。向こうにお茶が飲める所があるので、どうぞ。」
カフェがオープンすると、校区の人が次々にやって来ました。
■渡邊さん
「お茶菓子つまんでください。」
■訪れた人
「ありがとうございます。」
食事や体験をともにするうちに、自然と笑顔が広がり始めます。
■交流カフェのスタッフ
「血色が良くて安心しました。」
地域の関わりが減り、寂しさを口にしていた中野さんも、この日を楽しんだようです。
■中野さん
「楽しかったです。(こういうイベントを)していただけるならうれしいです。何も考えないで楽しい時間をもてるとリフレッシュできる。」
■矢野さん
「やっぱり被害に遭われた人しかわからない部分、それをまわりに出していただくことで、お互いが前に向いていけるんじゃないかと思っています。」
豪雨災害からおよそ1年半、竹野校区では地域の人たちが支え合いながら、住民の「心の復興」を進めています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年12月23日午後5時すぎ放送