ダム貯水率低下で「減圧給水・取水制限」 海水ろ過施設では稼働率最大に ぐずつく天気に期待も 福岡
19日、九州北部は南よりの風が強まって気温が上がり、気象台は春一番が吹いたと発表しました。福岡県内では「渇水」が深刻さを増していますが、19日に降った雨は恵みの雨となるのでしょうか。
■吉村史織フィールドキャスター
「午前11時半すぎの天神です。この時間また雨が強く打ちつけています。街を歩くみなさんは足元を気にしながら歩いています。」
雪が雨に変わるころと言われる二十四節気の「雨水」に当たる19日、福岡市内も断続的に雨が降り、時折雨足が強まりました。
■京都から(70代)
「こんなにたくさん降るとは想定していなかった。これはホテルで借りた傘。」
■福岡市から(10代)
「移動に時間がかかって困る。」
雨に困るという声も聞かれる中、一方でこの雨を待ち続けているところもありました。
福岡県添田町です。
■奥村三枝 記者
「雨はかなり降っていますが、油木ダムの水位はかなり低くなっていて、壁面もむき出しになっています。」
行橋市や苅田町などの水源、油木ダムの貯水率は、19日午前0時時点で22.4%まで下がっていました。
例年、冬場の貯水率は下がる傾向にありますが、去年の2月19日は60.8%で、ことしはこれを大きく下回っています。
この油木ダムから8割を超える水の供給を受けている行橋市は、1月10日に渇水対策本部を立ち上げ、広報車などで「節水」を呼びかけています。
今後、行橋市は、油木ダムの貯水率が20%まで低下した場合、家庭などに送る水の圧力を10%下げる「減圧給水」を実施する方針です。
■行橋市 防災危機管理室・末次真樹 室長
「(19日の雨で)若干回復するとは思うが、まだまだまとまった雨がなければ、今後の貯水率に影響が出ると思うので、節水のご協力をお願いしたい。」
危機感を強めているのは行橋市だけではありません。
筑後川水系でも主な6つのダムの貯水率は、19日時点で30.7%と低い状態です。
貯水率の大幅な低下を受けて、川やダムを管理する九州地方整備局などは、先週、対策会議を開きました。
この中で、福岡都市圏に水を供給する福岡地区水道企業団が、10%の取水制限をすることなどを決めています。
しかしこれによって、水道水の給水に制限がかかることはありません。
福岡都市圏の水道水を支えているのが、福岡市東区奈多の海水淡水化センター通称「まみずピア」です。
■吉村キャスター
「こちらの施設は、玄界灘で取られた海水をこのように私たちが飲めるよう『ろ過』する施設です。」
筑後川水系の水量の減少を受けて、去年12月から稼働率を最大に上げ、現在は通常の5倍、1日5万立方メートルの水を供給しています。
これは25万人分、学校のプール170杯分に当たるということです。
■福岡地区水道企業団・増山徹 計画調整課長
「負荷はかかりますが、福岡都市圏は筑後川から水をもらっている立場なので、こういうときには頑張る。」
ただ、これ以上稼働率を上げることはできず、節水への協力が欠かせないと話します。
■増山計画調整課長
「水を流しっぱなしで歯を磨く人もいるが、そういう時は蛇口を閉める。ちょっとした気配りで水の使用量は減る。よろしくお願いしたい。」
ここ数日は、前線や湿った空気の影響で雨が降り、「菜種梅雨」のような天気が予想されています。
この雨が、県内各地の水源を潤す恵みの雨となるのでしょうか。
渇水の危機は防火訓練にも影響が出ています。
1月21日、文化財防火デーを前に筑紫野市で行われた防火訓練の様子です。ホースが膨らんでいません。ホースが平たく、水が通っていない状態です。
ダムの貯水率低下を受けて放水訓練は控え、動きの確認にとどめたということなんです。
筑紫野市の担当者は「水を出せず、実践を想定するのが難しい部分もあったが、市として節水を呼びかけている以上はしかたない判断だった」と話しています。