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フランス古典劇の至宝「フェードル」菊池市の能舞台で上演 迫力ある演技が観客を魅了

2024年10月8日 19:25
フランス古典劇の至宝「フェードル」菊池市の能舞台で上演 迫力ある演技が観客を魅了

菊池市の歴史ある能舞台で6日、熊本市に拠点を置く劇団がフランス古典劇の至宝とされる「フェードル」が上演されました。大作に挑んだ劇団員たちの迫力ある演技が観客を魅了しました。

6日夜、菊池市にある菊池松囃子能場。南北朝時代から奉納されてきた菊池松囃子能を舞う舞台として知られ、現在の舞台は江戸時代に建て替えられたものです。

熊本市に拠点を置く劇団「ゼーロンの会」は、菊池市の許可を得て2022年から毎年、1年かけて準備してきた古典劇をここで上演しています。3回目の今年は、17世紀のフランスでギリシャ悲劇を題材に創作された演劇、「フェードル」に挑みました。

国を出たまま行方不明となった王である父を探しに行こうとする王子イポリット。その時、頭をかすめたのは、父の後継ぎは自分なのか、継母のフェードルかということです。一方、王の妃フェードルは、重い病に侵されています。病の原因は、あろうことか義理の息子のイポリットを愛してしまったことにあったのです。道ならぬ恋に苦しむフェードル。フェードルの思いは、やがて愛しているはずのイポリットの運命をも狂わせて…というストーリー。悲劇的構成、人間観察の深さ、韻文の豊かさなどから、「人間精神を扱った最高傑作」と評価されています。

■フェードル
「宿命の名を口にしようと私は震え、おののく。愛している」

夫である王が行方不明の中、義理の息子の王子に恋をしてしまう王妃フェードルを演じるのは、入団8年目の日吉夏美さん(29)です。

■フェードル(日吉夏美さん)
「さあ、はっきりと見るがよい。フェードルを。狂おしいまでのその恋を」

フェードルは義理の息子イポリットに思いを告げます。しかし、行方不明だった夫の王テゼーは生きていました。フェードルの乳母エノーヌは、王テゼーに対して、「王子イポリットがフェードルに邪恋を抱いた」と嘘をつきます。

■フェードルの乳母エノーヌ(菅原龍人さん)
「恋に狂った王子の企て。それを恥じたフェードル様。ご自分の目が王子に灯した罪深い炎を恥じて、死のうとなさっていたのです、陛下」

嘘を信じて、王のテゼーから国外追放の命を受けた王子イポリットは命を落とし、フェードルも毒をあおって、最後の告白をします。

■フェードル(日吉夏美さん)
「ご子息の汚名をそそいで差し上げなくては。あの方に罪はなかった」

■王テゼー(尾鷹敬司さん)
「ええい。父として呪われた。あなたの言葉を信じればこそ、あれを罪に落としたのだ」

観客約120人が、伝統の能舞台で演じられる迫力ある演技を堪能しました。

■熊本市からの観客
「途中から世界の中に引き込まれてしまって、没頭してしまいました」

■人吉市からの観客
「すごいです、すごいです。ここの舞台が一番感動します」

■フェードルを演じた日吉夏美さん
「この1年、フェードルに身を任せて稽古を重ねてきたんですけど、こんなに稽古がもっとしたいと思う、到達点が見えない役は初めてでしたし、もっと私が役者として厚みが出た時、もっと年を重ねた時にもう一度演じてみたいと思った役は初めてでした。今日も到達点だったかは自分の中では疑問で、まだまだこれから精進しようと思ってます」