人気ラーメン店「繁盛なのに撤退」の理由は…TSMC進出の裏で加熱する"時給戦争"
とんこつと鶏ガラのダブルスープに、にんにくパウダーをまぶした熊本ならではの一杯。店に前には行列が。菊陽町にあるラーメン店「天外天」です。2年前、熊本市から本店を移しました。
1989年から熊本市中央区の繁華街にあった天外天の本店。2022年8月、入居していたビルの建て替えのタイミングで菊陽町に移転しました。移転先の決め手となったのはTSMCの存在でした。
天外天を経営する会社の小田圭太郎社長によりますと、TSMCの子会社、JASMの工場から車で10分足らずという立地もあり、半導体関連企業の社員など、連日、店は繁盛しているといいます。
■天外天 小田圭太郎社長
「安定してお客様が来ていただいていると思っています。まぁ見込んだ通りぐらいの感じですかね」
しかし、今、ある問題に直面していました。
■天外天 小田圭太郎社長
「1回(求人募集を)出せば欲しい人数はそろっていたけれど、全く来ないのでは面接もできない」
パートを募集しても人がまったく集まらないのです。
背景にあったのは人件費の高騰です。店舗がある菊陽町を管轄するハロワーク菊池がまとめた宿泊・飲食サービス業のパートタイムの求人の平均時給は、去年までの5年間で12.6%上がり、昨年度の平均は999円にのぼっています。最低賃金の上昇に加え、菊陽町や周辺の自治体への半導体関連の企業の相次ぐ進出など、労働力需要の高まりが要因として考えられています。
店では、時給1000円を超える金額を提示していますが、人手が確保できず、1年ほど前から夜の時間帯の営業をあきめ、昼のみに短縮せざるを得なくなりました。
■天外天 小田圭太郎社長
「4月もね(求人広告に)40万円かけたんだよ。1人も来なかったよ。ひどいね」
■女性
「タイミングもあるのかもしれない」
■天外天 小田圭太郎社長
「いや、これからはきっと多分…みんな言っているもん。来ないって」
活況に沸く町で、思わぬ苦戦を強いられた天外天。従業員が集まらなければ、売り上げも伸ばせません。
■天外天 小田圭太郎社長
「時給戦争みたいな感じですよね。ラーメン屋で出せる時給はたかが知れている。もう…続けていくのは難しいかなと」
移転からわずか2年。店は菊陽町から撤退することになりました。突然の閉店に常連客は。
■近所の半導体関連企業の社員
「本当なんですか!?ここがないと(近くに)コンビニしかなくなる。これだけお客さんが入っているのに悲しいですよね」
■地元の住人
「ラーメン好きな自分としては惜しい」
■天外天 小田圭太郎社長
「大きな会社が来て、新しい仕事ができて、人が増えていくことはいいことだと思っているので、そこまでマイナスには考えていないんですけど、今までやってきた中小のお店などががやりにくくなっていることもでてきてるんだというのを最近は感じます」
半導体バブルの影で跳ね上がる人件費。人材の争奪戦は、厳しさを増しています。