【変化は?】タクシー料金値上げ1か月『待遇改善でドライバー確保』期待して他業種から転職した人も
熊本県内のタクシー会社が運賃改定をして1か月が過ぎました。
県内のタクシードライバーは、コロナ禍を経て一時は500人以上減りましたが、今、利用する人数が回復しているのに対してドライバ―が足りない状態が続いています。値上げの背景には、収益を働き手の待遇改善につなげ、ドライバ―の数を確保したいねらいもあります。県内の事業者を取材しました。
県内最大手のタクシー会社、TaKuRoo(タクルー)。保有する車両301台あります。しかし、働くドライバーは256人(4月末時点)。「人が足りない」状態が続いています。働き手が集まらない理由のひとつが…。
■タクルー 今村英敏取締役常務
「以前は3K(きつい・汚い・危険)という言葉がありましたが、これに近いイメージをいまだに払拭できていないのかもしれない」
さらにタクシー会社が要因と考えているのがドライバ―の収入です。厚生労働省がまとめた全産業の平均年収と比べると、タクシードライバーの収入は約200万円下回り長年にわたり大きな差があるのが現状です。
ドライバ―の給与アップなどにつなげようと、県内のタクシー会社は4月末、約3年ぶりに運賃を値上げしました。初乗り運賃を70円値上げして700円に。加算料金も引き上げています。
同時に、九州では福岡、鹿児島に次いで熊本県内の40社が「配車料金」を導入しました。TakuRooでは、時間を指定して予約すると500円を追加するようになりました。
値上げから約1か月。これまで、予約の希望が多い朝の時間帯はニーズにこたえられないケースもありましたが、配車料金の導入後は予約件数が約4割減り、限られた台数で対応しやすくなりました。また単価が上がったことで売り上げは1割あまり増加。効率的な働き方につながっています。
■タクルー 今村英敏取締役常務
「売り上げが進捗した部分は、働いている従業員の意欲を引きあげる、能力を引き出す、経験値を生かす、我々が投資を行い、その結果、従業員の暮らしぶりを引き上げ、それがひいてはお客様の満足度につながって安心安全の担保が環境として引き上がってくる」
待遇アップを期待し、転職した人もいます。4月に入社した西田圭吾さん。2人の子どもがいるお父さんです。ドライバ―の平均年齢が60歳を超える中での36歳の新入社員です。
現在、ひとり立ちに向けて研修の真っ最中です。
■西田圭吾さん
「では出発いたします。タクルーの西田と申します。安全運転で参りますので、よろしくお願いします」
西田さんはこれまで10年ほど障害者の就労支援など福祉の分野で働いてきました。歩合制の給与にもこの職場の魅力を感じています。
■西田圭吾さん
「もっといろんな人と関わりたいという気持ちで始めました。自分の頑張り次第で稼ぎが増える可能性がある。そこにかけてチャレンジしてみようと思います」
売り上げの還元は給与だけではありません。そのひとつが、4月から導入した電話を使わずに配車できる自社のアプリです。全国共通のアプリと併用することで、コールセンターの負担軽減にも一役買っています。さらに…。
■平井友莉キャスター
「事業所のすぐ横に設けてあるのが保育園です」
スタッフが働きやすくなるよう、国の補助を受けて4年前に保育園を設置。ライフスタイルに合わせた勤務時間の調整なども行います。
■タクルー 今村英敏取締役常務
「働き方も多様な働き方を考えなければいけない。これまでの規定の働くスタイルを壊しても、お客様のニーズを必要とする時間帯にあう方々たちを採用したい」
タクルーでは今後、AIのデータベースを活用した利用者の需要予測を今年度導入し、さらなる効率化を図る方針です。人材不足が深刻化するタクシー業界。値上げの背景には、環境改善に向けた企業努力がありました。