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【最前線】人材育成のヒントは?TSMCがある台湾・新竹市を取材 熊本でも産学連携

2024年6月28日 19:59
【最前線】人材育成のヒントは?TSMCがある台湾・新竹市を取材 熊本でも産学連携
TSMCの進出をきっかけに熊本県内では半導体分野の人材確保が喫緊の課題となっています。台湾企業を現地取材し、課題解決のヒントを探りました。

熊本空港から約2時間。カメラが向かったのは台湾北部の新竹市です。ここに本社を置くのが、半導体の受託生産で世界最大手のTSMCです。

一帯は「新竹サイエンスパーク」と呼ばれ、600を超える企業が集まる台湾のハイテク産業の中心地です。

集まっているのは、半導体をつくる企業だけではありません。こちらの企業、トロンフューチャーテックでは、TSMCの半導体を使って台湾の安全保障に関わる最先端の技術を開発しています。飛行禁止エリアにドローンが侵入した場合、レーダーシステムでドローンの機能を停止させる製品を作っています。

■トロンフューチャーテック 王毓駒CEO
「半導体は台湾の宝です。私たちが優れた製品を作ることができるのは、TSMCや関連半導体企業、そして半導体のエンジニアのおかげです」

この1年で売り上げが6倍に増えたというトロンフューチャーテック。成長の背景にあるのは、“大学との連携”です。

新竹市にある大学の教授が顧問を務め、企業が抱える課題を学生が解決します。相互理解が進むことで、連携先の大学を中心に毎年50人以上の学生が就職しています。

■陽明交通大学 陳冠能博士
「台湾のハイテク産業の発展には産学連携が欠かせません。未来のアイデアを研究成果として企業に提供し、製品にしていく。熊本県も半導体の誘致だけではなく、人材育成を重視しなければなりません」

熊本でも進む産学連携

産学連携は熊本県内でも進んでいます。熊本大学はTSMCと連携協定を締結しています。将来的には、TSMCの子会社で熊本の工場で半導体を製造する「JASM」や台湾にあるTSMCでのインターンシップを予定しています。

さらに、政府の予算でクリーンルームに新しい機材を整備しました。こちらの研究室では、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングが研究費を負担し、高性能な半導体に関する共同研究を行っています。

■熊本大学半導体・デジタル研究機構 鈴木裕巳特任教授
「半導体の中でリアルに今、課題になっているテーマを研究し、その結果を出して共同研究先に返す実践的な研究が学べる」

■熊本大学情報電気工学専攻1年 山川昂祐さん
「普通に自分ひとりで実験しているだけではわからない視点、企業の視点やより安定した生産など新しい刺激としてもらっている」

また、熊本大学は、人材の間口を広げるため、今年度から文系、理系を問わない「情報融合学環」を新設し、情報データの解析を通じて、半導体の製造過程の最適化を実現する専門のコースを設けました。年間120人以上の技術者を輩出する計画です。

■熊本大学工学部長 井原敏博教授
「すぐ近くに世界を代表するような製造拠点がある。学生は、その臨場感の中で学習することができる。多くの人材を地元の大学が供給しなければいけない、その責務がある。非常に実践的な教育、研究を実施することができると自負している」

TSMCをきっかけに半導体関連企業の進出が相次ぐ熊本県。産学連携によって発展した台湾のように、次世代を担う人材を育成できるか、今後の取り組みが注目されます。

【スタジオ】
電機メーカーなどが加盟する電子情報技術産業協会によりますと、九州では今後10年間で、半導体分野の人材は少なくとも1万2000人が必要だとしています。企業の進出がさらに増えていけば、もっと必要になってきます。
半導体関連産業の発展を軌道に乗せるためには、技術者を育成する大学をはじめ教育機関の計画的な取り組みが求められます。