【密着】「親代わりだった」進行性難病の大学生 支え続けてくれた看護師との別れ
24時間テレビ連動企画「私を救ってくれた人」。今回は進行性の難病を患う熊本市の大学生です。支え続けてくれた看護師との別れに密着しました。
熊本市の大学4年生、山本栞奈さん(26)。全身の筋力を次第に失う進行性の難病を抱えています。栞奈さんは、大学で社会福祉士を目指して勉強中。酸素呼吸器の準備などはヘルパーが、授業のサポートは学生ボランティアが協力します。
栞奈さんが動かせるのは右手の一部と首から上だけ。今は口からほとんど食事をとれなくなり、胃に穴をあけ、直接栄養を送っています。そんな栞奈さん、いつも笑顔を絶やしません。
栞奈さんを支える訪問看護師の坂口由紀さん。栞奈さんが一人暮らしを始めた時からの付き合いです。
■坂口由紀さん
「すごく明るい彼女なので、いつもこっちまで楽しく訪問看護に来させていただいています」
■山本栞奈さん
「たまにイラつくじゃん」
■坂口由紀さん
「イラついたことないよ。平静です」
■山本栞奈さん
「おもしろいでしょ」
Qいつもあんな感じ?
■山本栞奈さん
「もっと激しい」
Qきょうは抑えめ?
■山本栞奈さん
「抑えめ」
2人の日常は笑顔であふれています。
■山本栞奈さん
「ゆきちゃん(坂口さん)が親代わりですよ。ウザッとか言いますもんね、ゆきちゃんに。あっちもウザッて言うし、何でも言い合えるというか本当に…」
4人きょうだいの末っ子として生まれた栞奈さん。幼いころ両親が離婚。親に育ててもらうのが難しく、5歳で児童養護施設に預けられることになりました。
ずっと消えない親への想い。
■山本栞奈さん
「ただただ、愛情がほしかった。温かいご飯を作ってもらって、食卓を囲んで、当たり前の日常がほしかった」
人一倍、親の存在に憧れを持っていた栞奈さん。いつのまにか、坂口さんを母親のように慕うようになっていました。
■山本栞奈さん
「やっぱりゆきちゃんだなって思います。出会ってくれてありがとう」
訪問看護が始まって2年半。別れは、突然やってきました。坂口さんの担当エリアが変わり、訪問看護師が交代することになったのです。
7月、坂口さんの最後の訪問看護の日。
(坂口さん)「こんばんは」
■山本栞奈さん
「ゆきちゃんかわいいな。下から見てもかわいいじゃん」
■坂口由紀さん
「今頃?」
いつも通りの会話。でも…。
■山本栞奈さん
「あーこれが最後か。一回一回かみしめんといかん」
寂しさがあふれ出します。
■山本栞奈さん
「私、ゆきちゃんからいっぱい愛された」
■坂口由紀さん
「面白いでしょ。そう思えるのがすごいよね」
■山本栞奈さん
「そう思わせてくれるからすごいよね」
時にはけんかもしたけれど、いつも優しくて、思いやりにあふれていた坂口さんとの別れ。最後は栞奈さんが大好きな歌を一緒に歌いました。
■山本栞奈さん
「寂しいけど、また新しい出会いがあるから、またその出会いもいい出会いだったなって思えるようにしたいなと思います。私のこれからの成長を見守っていってほしいなと思います」
(栞奈さん)「泣いているでしょ~」
(坂口さん)「泣いてないって」
■坂口由紀さん
「一個一個、無理せずにね」
別れから20日あまり。大学生最後の社会福祉士の実習が始まりました。夢に向かい、一歩前進です。
■山本栞奈さん
「不手際もたくさんあると思いますが、たくさんいろんなことを学びたいと思います。よろしくお願いします」
実習の期間は1か月。施設の利用者とコミュニケーションを取り支援計画を立てます。いろんな人に支えられながら実習を進めます。
■山本栞奈さん
「あっという間の1日でした。支援する人も支援される側も、私も利用者と呼ばれるからこそ、学ぶという意識を持って働いていける社会福祉士になれたら」
この先も笑顔を絶やさず、夢に向かって進みます。