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「1時間22分の人生を生ききった」亡き息子とともに生きる女性の新たな挑戦

2024年8月19日 19:45
「1時間22分の人生を生ききった」亡き息子とともに生きる女性の新たな挑戦
澤野典子さん(中央)

生まれる前に赤ちゃんが亡くなる死産は50人に1人、流産を経験しているとされる母親は6人に1人という統計があります。合志市で暮らす女性は、生まれて1時間あまりで我が子を亡くしました。亡き赤ちゃんとともに生きる中、始めた挑戦を追いました。

合志市に住む澤野典子さん(36)と夫の史憲さん(51)、息子の翔空くん(1)。翔空くん歯も生えて、自分でごはんを食べられるようになりました。澤野さんたちにはもう1人、家族がいます。長男の蒼空くん。生まれてすぐに亡くなりました。

蒼空くんは、3年ほどの不妊治療を経て授かりました。しかし、妊娠5か月(16週)で染色体の異常が見つかりました。出産予定日1か月前の34週に自宅で破水。蒼空くんは1時間22分の人生を全うしました。

■澤野典子さん
「手をつないだその時は、ありがとうばっかり。9割ありがとう、ごめんねの一言と、大好きだよって。今しかないと思っていたのかわからないけど、なんかありがとうだった」

生きていれば、蒼空くんは3歳。澤野さんは今も赤ちゃんを亡くした家族が集う場をつくり、同じような経験をした人のサポートを続けています。

■参加者
「思い出すきっかけになるし、子どもの大切さをさらに心に刻むことができる時間でした」

■澤野典子さん
「笑顔で過ごせる時間があるのはうれしい。今の私ががんばれるペースでがんばりたい。楽しんでいきたい」

今を自分らしく生きるために…踏み出した新たな一歩

亡き命とともに生きる中、「今の自分」で人生を楽しみたい。澤野さんは一歩を踏み出しました。それは、SDGsをテーマに内面からの美しさを目指すコンテスト、「ミズエシカリンクジャパン」への出場です。

コンテストで問われるのは、いかに自分の思いを伝えられるか。与えられるスピーチの時間はわずか30秒です。

■澤野典子さん
「日常生活が続く中で、今の自分として新しい挑戦をしたかった。もちろん、自分もそういう(子どもを亡くす)経験者というのは入れたいですよね。その会場の中にもいるかもしれないし」

7月14日。福岡市で開かれた九州地区のファイナリスト10人が福岡に集まりました。ファイナリストの中には澤野さんの姿も。

■澤野典子さん
「一人ひとりができることがあるという認識を持ってもらえるように伝えたい」
Q伝わりそうですか?
「伝えます!『目の前の一人に伝える』をずっと大事にしてきて今の形までできているので、そこを忘れずにきょうもそのつもりでいこうと思っています」

それぞれの思いを込めた30秒のスピーチです。
■ファイナリストのスピーチ
「私もアレルギーで苦しんだ時期がありました。そんな思いから無添加レストランとエステを経営しています」

いよいよ澤野さんの番です。

■澤野典子さんのスピーチ
「私は、1時間22分の人生を生ききった長男のおかげで、自分の選択に自信を持つことができました。現在は赤ちゃんのいない産後があることを知って欲しい、亡くなった赤ちゃんも1人の人として捉えてほしい、という思いでコミュニティを運営しています。赤ちゃんを亡くしたご家族への心のケアや支援の必要性を多くの人へ広めてまいります」

■観客 福岡から
「笑顔がすごく素敵な方だったので、たぶんすごくきつかったと思うんですけど、すごいなと思ってシンプルに感動しました」

熊本の仲間も、澤野さんを見守りました。
■松永祐美さん
「泣きました。すごく頑張っているのを知っているから。生きる喜びとかが全身から出ているのがすごくよかった」

■丸山真紀さん
「自分の意思をこうやって堂々と言える姿に、一緒に活動する仲間として尊敬します」

結果は…。
(アナウンス)
「エシカル賞に輝いたのは…エントリーナンバー9澤野典子さま」

澤野さんは、スピーチが評価され、特別賞に輝きました。10月に大阪で行われる全国大会に出場することになりました。

■澤野典子さん
「こんなに緊張するんだなと思ったし、あれだけ顔が震えたり、緊張するのって生きているからだなと思った。そういう(子どもを亡くす)経験をしても、自分自身も幸せに生きていっていいし、生きていけるんだよとあの時の私にも教えてあげられるように動いていこうと思います」

今を自分らしく生きるために…。これからも大切な家族とともに人生を歩みます。