「歌の力はすごい」被災した生徒の言葉を歌詞に福島の中学校で誕生 全国で歌われる合唱曲に込めた思い
3月7日、熊本市の公立中学校で卒業式が行われました。中学生にとっての旅立ちの日。今、全国の卒業式で気持ちを一つにし、大切に歌われる曲があります。
(合唱)
「ああ あの街で生まれて君と出会い たくさんの想い抱いて一緒に時を過ごしたね」
曲の名は「群青」。友やふるさとへの純粋な思いを詰め込んだ5分間。
「福島の東日本大震災の時にできた曲だって聞きました」
群青が生まれたきっかけとなった場所。それは福島第一原発から半径20キロ圏内にある南相馬市小高区です。360人いた生徒が「さようなら」も言えぬまま、バラバラになったあの日。
当時1年生で合唱部だった佐藤七海さん(27)です。
■佐藤七海さん
「これは震災前の写真です。中学1年が集まった写真。こちらは卒業した時の写真なんですけど、結構(人数が)減っちゃって。つらかったのは、やっぱり避難生活とかよりも、友達が亡くなったって聞いたときですかね…。信じられないし、信じたくない思いでつらかったですね」
津波で命を奪われた同級生。生まれ変わるなら「また自分」になりたい。震災が起きる前の交換ノートにそう記されていました。
■佐藤七海さん
「明るめの曲とか歌う気持ちになれない。その時につらいのに、何で歌わないといけないんだろうというか」
当時の合唱部顧問だった小田美樹先生は、心を込めて歌えなくなった生徒たちに気づいていました。
■小高中学校合唱部顧問(当時) 小田美樹教諭
「我々と同じような経験をした人がいないので、そんな曲はこの世に存在しなかった。どんなに探してもなかったので。であれば、作るしかないなと思って」
生徒の日記にあった言葉を歌詞として編んだ小田先生。東日本大震災から約2年後、小高中学校で「群青」は誕生しました。
■当時の小高中学校合唱部顧問(当時) 小田美樹教諭
「授業の中で積極的に歌う雰囲気にならなかった子たちが、感情いっぱいに歌っている姿を見て、歌わされているのではなく、彼女彼らが自分の言葉で歌っている」
そして2016年3月、小高中学校を離れる先生たちの離任式。小田先生も、この日で小高中学校を去る小田先生が、生徒たちに最後の言葉を伝えました。
■当時の小高中学校合唱部顧問(当時) 小田美樹教諭
「では最後の課題です。提出期限はありませんが、全員必ず幸せになりなさい。ありがとうございました。さようなら」
東日本大震災から14年。群青で、福島と熊本はつながっています。
■佐藤七海さん
「群青って、東日本大震災だけじゃないと思うんですよね。共感できたりする部分が。今ある現状が当たり前だと思わずに、一つ一つ小さな幸せをかみしめてほしいなって。歌の力はすごいなって思います」
(合唱)
「きっと また会おう あの町で会おう 僕らの約束は消えはしない 群青の絆 また 会おう 群青の町で」