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高齢者に障害者 避難時に複数の施設が避難所設営する「熊本式」訓練に参加

2024年12月16日 21:37
高齢者に障害者 避難時に複数の施設が避難所設営する「熊本式」訓練に参加
避難所設営の訓練
防災士の柳原志保さんとお伝えする「しほママの防災術」。今回は「障害者の避難」について考えます。

熊本地震のときには障害がある人の中にはトイレの問題などで地域の避難所に行けない人がいましたね。こうした個別の支援が必要な高齢者や障害がある人に対応するのが福祉避難所です。

今回、柳原志保さんは福祉避難所を作る訓練に参加してきました。11月に和水町で行われた訓練には、県内の福祉施設や町の職員のほか、介護福祉士や社会福祉士などで構成する県の災害派遣福祉チーム「熊本DWAT」などが参加しました。柳原さんは防災士として加わります。

■リデルライトホーム・木村准治さん
「今回自治体とこのDWATが一緒になって訓練をするというのはおそらく全国初だと思います」

指揮をとるのは熊本市で福祉施設を運営する木村准治さんです。木村さんは熊本地震のときに福祉避難所を運営しました。しかし自分の施設の人たちのケアをしながら避難所を運営することは人員やベッドが不足するなど困難を伴いました。

この教訓を生かし、4年後の熊本豪雨のときは複数の施設から人員や物資などを少しずつ集めひとつの福祉避難所を作りました。この方法が「熊本式」として広がりをみせています。

■木村准治さん
「その経験を一度再現しないと、このままこの記憶がなくなって しまうというのがありまして、今回の訓練に至っています」

経験を広く共有するため行われた、避難所開設の訓練。長洲地域を震源に震度7の地震が発生した想定で始まりました。まずは一般の避難所が作られ地域の人が集まってきます。この日は知的障害がある山田さん(仮名)も参加しました。

■受付
「今日の体調はどんなですか?」
■山田さん(仮名)
「大丈夫」

避難所からDWATへ山田さんの情報を共有します。すると…

■社会福祉法人 青いりんごの会・森光靖 理事
「和水町役場から福祉避難所立ち上げ要請がありました。銀河ステーション単独では福祉避難所の開設運営は厳しい状況です。物品についてはベッドやパーテーション、ポータブルトイレ。職員は少なくとも2名程度の確保と派遣をお願いします」

複数の場所から人やものを集め1つの福祉避難所を作る「熊本式」の発動。避難するスペースを文字や数字ではなく色で示す、要望をイラストで伝えるなど工夫が施されています。

一方、一般の避難所にいる山田さんのもとでは福祉のスタッフが聞き取りをします。

■介護職員
「おトイレはいかがでしょうか」
■母親
「一部介助の部分があるので、やっぱりついて行ったりとか」

山田さんの詳しい状況を会議で共有します。

■介護職員
「大きな音が少し苦手ということで大人数の場所は難しいのではないかと思います」
「福祉避難所への移動が好ましいかなと思われます」

山田さん親子は、チームの連携で速やかに福祉避難所へ移動できました。

■山田さんの母
「集団生活になるとやっぱりトイレの面だったりとか、 いろんな面の不安もありますから、 こういうところで避難させてもらえるんだったらいいと思いました」

■防災士・柳原志保さん
「熊本地震の時もどうだった?やっぱり怖かった?」
■山田さん
「怖かった。こっち(福祉避難所)がいい」

複数の施設で協力して避難所を作る「熊本式」に福祉スタッフは。

■福祉施設スタッフ
「今回は1人、2人、最低でも来てくれると助かるという要望だったので、すぐに駆けつけることができた。その少しの時間でも手助けができるというのは大きいかなと思います」

一方、柳原さんは自閉症の人を受け入れる訓練に加わりました。普段から支援している人が自閉症の人の役をします。

■柳原志保さん
「車より向こうの方がね、いろんな方がいて安心かなと思うので」
(自閉症役の人が雑誌を投げる)

■社会福祉法人わくわく・里﨑俊哉 統括施設長
「これはね、嫌って言ってますね」
■柳原志保さん
「嫌なんですね。(福祉)車中泊をしましょうね」

他の人と一緒に過ごすのが難しい人には「福祉車中泊」を提案します。車を停めるのは支援者の目が届き、トイレが使いやすい場所を選びます。

さらに、支援が必要なことをマークを付けて分かるようにします。

■社会福祉法人わくわく・里﨑俊哉 統括施設長
「無理して入れるとパニックが起こってどうしてもわがままに映ってしまうんですけど、それは障害が起こしていることなので。配慮だとか、周りの方が気を使っていただいたりしていただけると言いやすかったり、暮らしやすかったりするので、ぜひお願いしたいなというふうに思っています」

見た目で障害が分かりにくい人への配慮や理解は、訓練だけでなく普段の生活でも必要だと改めて感じました。

最終更新日:2024年12月16日 21:37