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日本レコード大賞優秀作品賞 難病のシンガーソングライターが映画出演を引き受けた理由は

2023年11月16日 17:37
日本レコード大賞優秀作品賞 難病のシンガーソングライターが映画出演を引き受けた理由は
樋口了一さん

熊本市在住のシンガーソングライター、樋口了一さん(59)。樋口さんが作曲した年老いた親から我が子へのメッセージを綴った歌「手紙~親愛なる子供たちへ~」は、2009年に日本レコード大賞優秀作品賞に選ばれました。樋口さんは難病のパーキンソン病を患っています。

樋口さんは今回、映画に出演し、この病の主人公を演じました。最初はオファーを断るつもりだったという樋口さんが、出演を引き受けた理由とは。

樋口さんは熊本市出身。済々黌高校在学中にバンドを組んで音楽にのめり込み、大学進学を口実にプロを目指して上京します。東京からアメリカまで音楽活動の場を広げ、メジャーデビュー。しかし、2008年、「手紙」をリリースする前に自身の体に異変を感じるようになったといいます。

■樋口了一さん
「ギターも弾きづらくなってきて、おかしいなと思って歩く時、右脚が前に出なくなってきたんですよ。歩幅が小さくなって、症状があるのは右側じゃないですか。これは整形外科の領域じゃなくて、命令しているところに問題があるんだろうって」

10か所以上の医療機関などを回っても原因が分からず、たどり着いたのはインターネットで見つけたパーキンソン病の人のブログでした。ブログを見た樋口さん、自分も同じではないかと思い、診察を受けたところ、パーキンソン病と診断されました。

パーキンソン病は、体を動かすため脳から出る指令がうまく伝わらず、体が動きにくくなったり震えが起きたりする難病です。

■樋口了一さん
「将来的なものを悲観するということはあまり考えなかった、不思議と。それよりも、あ、これは絶対に病気になった理由がある。その理由はなんだろうということを考えていました」

ある本がきっかけで病気を受け入れられたという樋口さん。症状に悩んでいた時出会った詩に深い縁を感じ、自ら曲を付けたのが「手紙」です。日本レコード大賞優秀作品賞に選ばれ、症状がありながらも多くのメディアに出演しました。

診断から14年 映画主演のオファーが

診断から14年、病状も進行する中、樋口さんに映画主演のオファーがきました。映画のタイトルは「いまダンスをするのは誰だ?」。仕事一筋で家庭を顧みない主人公。パーキンソン病と診断されてから人とのふれあいの大切さに気づき、家族ともダンスを通じて関係が改善していくストーリーです。

始めは病気のこともありオファーを断るつもりだった樋口さん、しかしふと、考えを変えました。

■樋口了一さん
「ものを30年表現し続けてきた人間にとって、他の表現手段であっても、映画をやったことないっていうだけで断るというのはあまりにもつまらない、おもしろくない。安全パイを選択した自分がかっこ悪いなと思って」

10月に熊本市で行われたトークイベント。「手紙」のほか、熊本を題材にした歌も披露しました。

■訪れた人
「すごく前向きに、生きる力みたいなもの、パワーを感じて、私たちも何かやれそうな気がします」
「ちょうど同じような病気の診断を受けてすぐだったので、自分をどう思うかですよね、自分次第だなと思います、(病気は)荷物と思えば・・」
■高校時代の同級生
「最後の方に手紙を歌ってくれたんですけど、この曲が出た頃に何回もテレビとかドライブで聞いていた。その時と比べて経験を重ねてきたというのがあって、同じ歌でもすごい歌い方がよくなった。偉そうなんですけど、心に染みる歌い方になったなと思った。ちょうど同じような病気の診断を受けてすぐだったので、自分をどう思うかですよね。自分次第だなと思います」

難病と宣告されながらも受け入れ、自身の道を進む樋口さん。樋口さんが主演する映画「いまダンスをするのは誰だ?」は、全国の劇場で公開中で、熊本では熊本市中央区の電気館で17日(金)から上映されます。