「教育そのものを考えないとまずい」トラブルがおさまらない熊本市電 専門家は警鐘
今年、相次いでいる熊本市電のトラブル。利用客に話を聞くと。
■市電の利用者(70代)
「ちょっと心配ですね。ドアの近くに立たないなどしてます」
■市電の利用者(60代)
「最近多いよねと話していました」
■市電の利用者(30代)
「車両とか新しくするにもお金がかかってしまうので、市民が(利用して)協力していけばいいと思う」
トラブルが起きたのは2日午後0時20分頃、熊本市中央区花畑町にある銀座通り歩道橋の交差点です。
■緒方太郎キャスター
「交差点を見てみると、今ちょうど市電が止まっています。ただこのタイミングでトラブルが発生しました。一般車両の信号の標識は右折車のみ、横の市電の標識が何も出ていない状態で、信号を無視したといいます」
熊本市交通局が確認したところ、熊本市役所方面から花畑町電停に向かう市電が信号表示に従わず交差点に進入しました。右折する自動車と接触しかねない、間一髪の状況でしたが、乗客約40人と運転士にけがはありませんでした。60代の運転士は乗務歴9年。「右折車に気をとられていた」と話していて、信号の表示の認識を誤ったとみられます。
熊本市電では、安全に関わるトラブルが今年すでに12件という「異常事態」。熊本市の大西一史市長は、自身のSNSで「職員とそれぞれ課題を話し合い、様々な改善策とともに、前向きにこれからのことについて話をした矢先のことでもありましたので、どうして?と私自身もショックを受けたところです」(一部抜粋)と投稿しました。
7月末にはトラブルの検証にあたる第三者委員会が市に短期的な対策を提出しましたが、トラブルは収まる気配がありません。第三者委員会の委員長を務める熊本大学の吉田 道雄名誉教授は。
■組織安全が専門 第三者委員会 吉田 道雄会長
「教育の形、やり方を少し考えていただかないとまずいだろうと思っています。どうしたらこういうことが防げるかというのを、(運転士が)お互いに考えていくという教育が、まずは必要だろうという気がします」
熊本市電をめぐっては9月20日、九州運輸局が運転士の視力が国の規則の基準に達していないなどとして、熊本市交通局に再発防止などの改善を指示したばかりでした。九州運輸局はKKTの取材に対し「引き続き指導していく」と回答しています。
【スタジオ】
第三者による検証委員会の最中、かつ、九州運輸局から改善指示が出ている中でもトラブルはなくなりません。今年に入ってからの熊本市電のトラブルがこちらです。重大な事故につながりかねないインシデントなど、安全にかかわるトラブルは、12件にのぼっています。このうち、ドアを開けたままの走行が5件と最も多く、信号の見落としなどが今回を含めて4件です。
■重大事故<1件>
▽7月26日
熊本駅近くで脱線 報告せずにバック
■重大インシデント<3件>
▽1月5日
ドアが開いた状態で約90メートル走行※安全装置の誤作動
▽2月23日
走行中にドアが2回開く※ドア信号配線の破損
▽9月2日
ドアが開いた状態で約40センチ前進※設備トラブルとみられる
■インシデント <5件>
▽3月8日
故障車両と後続車をつなぐ連結棒外れる※連結棒の差し込み位置を誤る人的ミス
▽5月2日
赤信号の見落としとポイント確認怠り前進※人的ミス
▽6月21日
ドア開いて約15メートル走行※人的ミス
▽7月1日
赤信号見落とし 交差点進入※人的ミス
▽10月2日
赤信号見落とし 交差点進入※人的ミス
■そのほかトラブル<3件>
▽5月10日
ドアが開いたまま約40センチ前進※人的ミス
▽5月13日
赤信号の見落とし※人的ミス
▽5月20日
停止位置ミス行き先の間違え※人的ミス
熊本市交通局は、信号の見落としがないよう停止標識や信号の前で確実に声に出したり、指さしで確認したりする教育を全ての運転士に実施したとしています。それでも起きた今回のトラブル。一人ひとりに、命を預かる「責任感」が問われています。