【解決は遠く】水俣病公式確認68年 犠牲者慰霊式 行政とは別に患者団体主催も
水俣病は、68年前の1956年5月1日に水俣市保健所に報告があったことからこの日を水俣病の公式確認の日としています。水俣市主催の水俣病犠牲者慰霊式には、患者や家族、それに国と熊本県、原因企業チッソの関係者などが参列しました。
遺族を代表して祈りの言葉を述べたのは、母が認定患者だった川畑俊夫さん(73)です。
■川畑俊夫さん
「伊藤環境大臣、就任されたばかりの木村熊本県知事、木庭チッソ株式会社代表取締役社長には、患者の現状に真摯に向き合い全面解決いただくことを切に望みます」
伊藤信太郎環境相は、国が被害の拡大を防げなったとして謝罪しました。
■伊藤信太郎環境相
「健康被害や地域に生じたあつれきなどに苦しまれてきたみなさんに対し、誠に申し訳ない気持ちでございます」
知事に就任して初めて出席した木村敬知事は、県を代表して謝罪の言葉を述べるとともに、水俣病を教訓に県政の課題に向き合うことを誓いました。
■木村敬知事
「私たちは初動対応の重要性、正しい情報に基づき行動することの大切さなど、多くの貴重な教訓を水俣病から学んでいます。これらの教訓を常に心にとめながら、知事として県政のさまざまな課題に向き合っていくことをここにお誓い申し上げます」
慰霊式の後、取材に応じたチッソの木庭竜一社長は。
■チッソ 木庭竜一社長
「我々は今の患者様の補償責任を完遂していくことが至上命題と考えます」
現時点で2284人が水俣病患者と認定されていますが、今も認定を求める訴訟が全国で起こされていて、水俣病問題は解決に至っていないのが現状です。
一方、水俣病で亡くなった人たちの遺品が納められた水俣市の乙女塚では、患者団体主催の慰霊祭が行われました。乙女塚の慰霊祭は、水俣病互助会が水俣市主催の慰霊式が始まる以前の1981年から毎年5月1日に行っていて、今回で44回目です。
今年は約60人の出席者が焼香し、水俣病の犠牲になったすべての命を悼みました。
■胎児性水俣病患者 坂本しのぶさん
「いろんな問題がいっぱいある。水俣病のことや裁判のこととか、終わっていない」
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
取材にあたった松本茜記者とお伝えします。
(松本茜記者)
慰霊式の後、伊藤環境相と木村知事は患者団体などと懇談しました。
水俣病の語り部の活動をしているメンバーとの懇談では、水俣病患者で語り部の会の会長を務める緒方正実さんが、水俣病資料館の充実や差別の解消へ支援を求める要望書を伊藤環境相に手渡しました。
その後、語り部たちがこれまでの経験をもとに水俣病や環境保全への理解を求めると、伊藤環境相は「環境破壊は未来を潰すことです。国として支援をしっかりしたい」と時折言葉を詰まらせながら答えました。
その後は水俣病関係団体との懇談も行われました。健康調査や患者補償などを求める要望書が提出され、団体からは「教訓を発信するよりも、被害者を救済するのが先ではないか」、「被害者は亡くなっている。一時の猶予もない。国と同等の責任がある県も、パフォーマンスではなく真摯に考え直して欲しい」など厳しい意見があがりました。
中には時間の関係で発言をさえぎられる人もいて、最後まで話を聞いて欲しいと声を荒げる場面もありました。