【デスク解説】水俣病訴訟 大阪判決から一転…全員棄却 熊本地裁判決の持つ意味は
水俣病の被害を訴える熊本県や鹿児島県の144人が国などに賠償を求めた裁判で、熊本地裁は22日、原告全員の訴えを退けました。一方で判決は、原告の一部は水俣病と認めました。
(東島大デスク)
実はこの判決は、国のコメントが象徴していると思います。「結論として、原告の請求が棄却されたものと承知しています」というものです。これまで水俣病裁判で国が勝った場合には、「国の主張が認められたものと承知しています」というがいつものパターンでした。
(畑中キャスター)
国の主張が認められたのではなく、原告の主張が認められなかったということですね。
(東島デスク)
判決のポイントはまさにそれです。つまり、一部の原告を水俣病と認定したということは、特措法で救済から漏れた人たちがいると裁判所で指摘されたことになります。つまり国も県も大きな声で勝ったとは言えないんです。
(畑中キャスター)
でも最終的には原告は全員棄却という結果ですよね。
(東島デスク)
それは法律論の問題です。改正される前の民法には、「除斥期間」という、簡単に言えば時効のようなルールがあって、被害を受けてから20年経つと裁判を起こせなかったんです。
(畑中キャスター)
でも、去年の大阪地裁の判決は時効を認めなかったんですよね。
(東島デスク)
被害を受けたのがいつなのか?水俣病の場合、症状を感じた時なのか、最初に病院に行った時なのか、県の認定に棄却された時なのか、いろんな段階があります。法律をどう解釈するのかで変わります。熊本地裁は狭く捉え、大阪地裁は広く捉えた。何にしろ、今回の熊本地裁の判決は非常に問題があると思います。
なぜかというと、「あなたたちは水俣病」といったん認めておきながら、「でも法律論で棄却します」では原告はどうしようもないです。国の法律に不備があるから司法に訴えたのに、これでは意味がないのではないでしょうか。
(畑中キャスター)
法律では救えないから国がなんとかすべき、という裁判所からのメッセージでは?
(東島デスク)
そういう意味かもしれませんが、環境省のコメントを見る限り、そんな受け止め方はしていないのが分かります。
大阪地裁と熊本地裁で判決が割れたことで長期化は避けられませんが、国と熊本県は「自分たちは負けていない」などと考えず、特措法の問題点が2回も続けて裁判所から指摘された重大さを真剣に受けとめ、被害者をどうやったら救えるのかを考えるべきではないでしょうか。