「2033年度の復旧を」 豪雨で運休のJR肥薩線 地元側が"復興方針案"を提示
球磨川沿いを抜けながら、熊本から宮崎、鹿児島へと続くJR肥薩線。3年前の熊本豪雨で2つの橋が流失するなどして八代駅と鹿児島県の吉松駅を結ぶ86.8キロの区間で運休が続いています。
JR九州と国、熊本県などで協議を重ねてきた肥薩線の復旧。ネックとなっているのが費用です。当初、JR九州が示した復旧費用は約235億円。このうち国が負担する河川や道路の整備として重なる金額を差し引いた76億円を、国とJR、地元自治体で平等に負担することになっています。地元分の25億3000万円については11月、県が、沿線市町村の負担をなくし県が全額支払う方針を示しています。
しかし…。
■JR九州 古宮洋二社長(11月30日の会見)
「国の金を使って、200億円使って、乗客が毎日ウン十人しか乗りませんでしたというのが本当にいいのかというので、我々は持続可能性、肥薩線を今後、どうしていくのかというのが必要じゃないですかと」
熊本豪雨の前から年間約6億円の赤字経営だった肥薩線。JR九州は、復旧後も持続可能な運営ができることを条件に掲げていました。
13日に開かれた県と国、JR九州による復旧の検討会議。県と沿線自治体が新たに示したのは「復興方針案」です。2033年度に八代、人吉間で鉄道を復旧することを基本方針と位置づけ、引退するSL人吉に変わる観光列車の導入や音楽祭などのイベント、宿泊施設の整備などで「観光の再成長」を目指すとしています。
示された案では、鉄道事業としての赤字は避けられないとしたものの、鉄道があることにより2040年には年間119億円の経済波及効果が見込めるとしています。
■熊本県交通政策課 坂本弘道課長
「県としても、県としての思いを伝えきったつもりです。我々としては、できれば年度内にきちんとした実のある議論・成果が出るように頑張りたい。JR九州にもそういった方向で事務的協議に向き合っていただければと考えています」
県や沿線自治体は今年度中にJR九州との最終合意を行いたい考えです。
【スタジオ解説】
会議の後、JR九州は「提案を重く受け止めて、次回以降にJRとしての方針を示したい」とコメントしています。
(東島大デスク)
これまで4回の議論で、JR九州は「路線を維持できるかどうか、復旧は慎重に検討」と一貫して主張してきました。これに対し県は「税金投入する意義があれば乗り越えられる」と主張。前々回の会議でJRは「その意義とは?」と質問を投げかけ、13日の会議で県が答えることになっていました。
(畑中香保里キャスター)
その結果は?
(東島デスク)
具体的な数字も出てきましたが、今後の経済波及効果の予想などが、これまでの数字を大幅に上回っていて、素人が見てもかなり盛っているのではと思ってしまうものでした。
(畑中キャスター)
利用促進のための施策も打ち出されているようですね。
(東島デスク)
書かれているのは、「観光施設」、「交流施設」、「鉄道ミュージアム」建設、「音楽祭の開催」、「宿泊施設の整備」。これを見て、JR九州がどこまで「現実的で効果的」と思うかです。そしてこの会議に積極的に関わっている国・国交省がどう仕切っていくか、来年大きな局面迎えそうです。