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【熊本豪雨4年】進むまちづくりと住民の葛藤 人吉市の区画整理のいま

2024年7月3日 19:35
【熊本豪雨4年】進むまちづくりと住民の葛藤 人吉市の区画整理のいま
マルミツ青果・井上光弘社長
7月4日で発生から4年を迎える熊本豪雨について、人吉市で行われている道路や土地の整備。防災力を高め、にぎわいを生むまちづくりが進む一方、翻弄され葛藤を感じる人もいます。
2020年7月4日に起きた熊本豪雨。国宝・青井阿蘇神社がある青井地区では通りに流れ込んだ水の高さが約5メートルに達しました。この地区にあった「マルミツ青果」は、2階まで浸水し全壊しました。

豪雨災害から1年後。マルミツ青果の2代目井上光弘社長は同じ場所で営業を再開しました。

■仮設住宅から来た人
「品物がないから買いに来たというよりも会いに来た」

■マルミツ青果・井上光弘社長
「なるべく元の場所にみんな帰ってこれるように/みんな来て頂いて井戸端会議のようなことができる場所になればと思っています」

あの日から、まもなく4年。

■マルミツ青果・井上光弘社長
「どういう風になるのかと思って。建てたばっかりでしょ…」

店は今年、ある問題に直面していました。

■マルミツ青果・井上光弘社長
「これに引っかかるわけですよ。これが目印、この間測量した分です」

井上さんの店がある青井地区は県が進める「被災市街地復興推進地域」に指定され、道路や土地の区画整理が行われています。
店の前にある国道は道幅が狭く、熊本豪雨の時に救助車などの緊急車両が通れませんでした。
県は青井地区を通る国道の約900メートルの区間について片側2メートルの歩道などを含む14メートル幅に広げる予定です。しかし…

■マルミツ青果・井上光弘社長
「これよりもっと下げてくれというならどういう風になるのかと思って。建てたばっかりでしょ…」

井上さんは人吉市が熊本豪雨の直後に作った計画に基づき、道幅が広がることを想定して店舗兼自宅を再建しました。
しかし再建から約半年後。県が新たな区画整理の計画を示したのです。井上さんの建物は道路にかかることに…

■マルミツ青果・井上光弘社長
「二度手間ですよね。もっとこうここに住んでいた人に詳しく事前に話して、説明があったらもっとやりようがあったんじゃないかなと思うんですよね」

店が入る建物は曳家(ひきや)という方法で持ち上げ、5メートルほど移動することになりました。
熊本豪雨前(2020年6月末)、青井地区には297世帯が暮らしていましたが、今年5月末には251世帯にまで減りました。

■マルミツ青果・井上光弘社長
「もう今はもう帰ってくるような人はいないんじゃないかなと思うんですよね。寂しいですよね」

人吉市の中心部で飲食店などが立ち並ぶ紺屋町。国道と山田川で囲まれた約1.2ヘクタールで土地のかさ上げや道路の改良、一時避難所を兼ねた公園の整備が計画されています。事業の主体は人吉市。その目的は。

■人吉市・松岡隼人市長
「防災面という視点もあろうかと思いますが、人吉市としては土地の有効活用またあそこににぎわいであったりとか、交流だったりとか、憩いだったりとか、そういうエリアとして今後進めていきたいと考えています」

今年5月から始まった工事は2028年度まで続く予定です。

人吉市の中心部にある蓑毛鍛冶屋(みのもかじや)です。江戸時代から約250年続く老舗の鍛冶屋でしたが、区画整理にかかり、かさ上げ工事が行われることになりました。再建した店舗は工事に伴い、一時休業することに。10代目の勇さんは新しいまちづくりにはじめは複雑な思いを抱えていました。

■蓑毛鍛冶屋・蓑毛勇さん
「最初はここで早く再開したいという思いが強かったので、時間がかかるので反対していたんですけど、いろんな方と会議を重ねるうちに復興していく上で子どもたちに残す。『まちとしては同じ水害が起きてもちょっとでも強いまちづくりをしなけれないけない』という言葉を聞いているうちにちょっとずつ確かにそうだなと。考えも変わった」

店を休む間、勇さんはネット販売などを中心に行い、店舗の再建について考えたいと語ります。

■蓑毛鍛冶屋・蓑毛勇さん
「不安が多いんですけど1日1日がんばっていくしかないので復興って難しいんだな~と思うんです。4年経ったけどまだまだですからね」

着々と進む未来のためのまちづくり。期待と葛藤をはらみながら、被災地は変化を続けています。