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藤井貴彦キャスターが再び見た 被災地氷見の今

2024年6月11日 19:49
藤井貴彦キャスターが再び見た 被災地氷見の今
能登半島地震から5か月あまりが経つなか、富山県内の被災地の復興は進んでいるのか、地震発生直後から被災した各地を取材している「news zero」の藤井貴彦キャスターと、上野キャスターが、被害が大きかった氷見市の今をシリーズで伝えます。初回は、復興へ歩む街なかを取材しました。

上野キャスター「氷見にやってきました。良い天気です。この方と一緒に巡りたいと思います」
藤井キャスター「富山県の皆さん、藤井貴彦です。どうぞよろしくお願いします」

藤井キャスターは、元日に発生した能登半島地震の被災地の取材を続けています。今年1月には氷見市を訪れ、被害の実情を全国に伝えました。

藤井「氷見に取材に来てから、どういう状況かなと心配してたんですけれども。ブルーシートが屋根代わりになっていたり、入り口をふさいでいたりする。(住民が)つらい思いを抱えていないかなということが気になっています」

まずは、5か月前にも訪れた市中心部の北大町へ向かいました。市内でも特に被害が大きかった地区です。

藤井「『危険』の貼り紙の赤色が色あせちゃって」
上野「もう少し赤がはっきりしてましたからね」
藤井「1月1日からずっとこういう状態だということですね」

倒壊した酒屋の前で 藤井「ここも道路に倒れかかっていないからどうしても解体が遅くなるんですよね。これだけ倒れていてもなかなか手が付かない。こういう建物を自分の日常として毎日捉えなければならないというのは、心の安定にはつながらないんでしょうね」

被害を受けた家屋が残る北大町。元日から時間が止まったようでした。

一方、近くの間島地区では、変化が見られました。

上野「ちょっと新しい感じがしませんか?このあたり」
藤井「そうですね。もともと畑だったんですか?」
上野「実はここ、車庫があったんですよ」

車庫は地震で倒壊し、4月の時点では中で押しつぶされた車とともに残された状態でした。

持ち主の中村さんは、当時は片づける気力を失っていたと話します。

中村巻子さん(73)「本当に2か月ぐらいぼーっとしとった。体もね、運動もしないのに全然、やせていく一方。精神的なもんってすごいよね」

中村さんが気力を取り戻すきっかけとなったのが、ボランティアに来た人たちでした。

中村さん「藤井さん、本当にボランティアの人って力すごいよ」藤井「すごいですね」
中村さん「私本当に涙出た、うれしくて。そして片づけていってくれたので、その勢いで自分でも前へ進もうという気が起きた」

倒壊した車庫は屋根瓦などが道路にかかっていたため、緊急解体の対象となり、撤去されました。

中村さんはそこに新しく土を入れ、大根や春菊の種をまいたり、大豆の苗を植えたりしました。

中村さん「見てよ、大根だってあんな元気になった」
上野「きれいにされてるから、それだけ思いが詰まってるのかなって思います」
中村さん「そんなことない。私ね、忘れたいの。この車庫がつぶれたのを。前に進みたいけど、なかなかその踏ん切りがつかなかった。ボランティアの人に背中を押してもらって、車庫を片付けてもらって、前にひとつ進めた。だから本当に前へ進みたいばっかりに、ちょっとがんばっとんがやけど。わかってもらえます?」
藤井「いやぁ、わかります」

自宅は液状化現象により傾いたものの、なんとか住むことができる状態です。一方、周辺には住むことができず、解体が決まっている住宅が数多くあります。

中村さんは、地域が今後どうなっていくのか不安を募らせています。

中村さん「『何から手を付けていいかわからない』そういう方ばかり。今まだ倒れながらもみんな一応、ここは誰の家かってわかるけど、それがみんな壊されて更地になったら、寂しいよね。きっと、きっと寂しいと思う。もっと喪失感が出ると思う、私は」
上野「たぶん地域の人も、中村さんがこうやってここに残ってるっていうのが一つの明るい兆しなのかなと思うんです」
中村さん「向かいのお母さんと『あんたここにおるがやろ』『どこへ行くがいけ』そんな会話をしとる。氷見弁のこんなおっかちゃんで(話の)意味わからんだやろ」
藤井「わかりました。一生懸命理解しました。ありがとうございました」