山と人をつなぐ 朝日岳への登山道守る 大蓮華山保勝会
エブリィでは、8月11日の山の日に向けて登山道に携わる人たちの取り組みをシリーズでお伝えしています。取材している数家解説委員です。
数家解説委員
今、なぜ、登山道をテーマにしているのかですが、富山県は、日本を代表する山岳地帯、北アルプスを有しています。多くが中部山岳国立公園に含まれ富山県側だけで登山道は25路線、総延長は234kmに及びます。
登山道を管理するのは富山県や環境省などですが、十分な維持・管理の予算を確保できていません。それを補っているのが山小屋や山岳関係団体などですが、新型コロナの感染拡大による宿泊者数の制限や高齢化、荷揚げ費用の高騰などで負担が重くのしかかっています。
今後、誰がどのように登山道を維持・管理していくのかが課題になっています。
上野キャスター
富士山でも通行料の徴収が始まりますし、県内でも登山者に協力金を求める制度の実証実験が8月に始まりますね。
数家解説委員
そこで、山と人をつなぐ登山道について、改めて考えようというのが今回の企画の趣旨です。
2回目の20日は、北アルプスの北の端に位置する朝日岳への登山道を守る自然保護団体「大蓮華山保勝会」の取り組みです。
大蓮華山保勝会 安達政昭事務局長
「目的が山に登るんじゃなくて朝日岳の自然を守るという自然保護活動に重きを置いた会なんです。ですから、ほとんどボランティアだったというか、登山道の整備もただ働きだったんです」
大蓮華山保勝会の事務局長、安達政昭さんです。
大蓮華山とは、朝日岳や白馬岳を指す言葉で、保勝会の設立は1928年、今年で97年目という歴史ある団体です。
登山口には北又小屋、朝日岳の山頂近くには朝日小屋の2つの山小屋を所有しています。
6月16日、毎年恒例となっている5合目までの草刈りを実施しました。
数家解説委員
「標高700mにある北又小屋です。大蓮華山保勝会の皆さんが集まってこれから草刈りに出発します。私も同行します」
4合目から5合目までを担当する櫻坂さん親子。父・光彩さんは74歳、息子の由昭さんは45歳です。
「草刈り機、相当重いと思うんですがこれで何キロほどあるんですか」
「5キロほどじゃないかな、たぶん、ものによってあれなんですが、4から5キロ」
「しかも長いから」
「ちょっと邪魔くさいですね」
刈り始める4合目まではひたすら登り続けます。
数家解説委員
「登り始めてから2時間弱です。標高1140m、4合目までやってきました。ここからようやく刈り始めます」
登山道の両側の下草を左右に分かれて刈り取ります。合流したメンバーと交代しながら標高1300mの5合目まで1時間半の作業。
下山してきた朝日小屋の関係者と出会いました。
櫻坂さん親子は、父の光彩さんが入会しておよそ50年、息子の由昭さんは27年です。
櫻坂由昭さん
「父の背中を見て、親父の背中で、別にやれと言われず…」
櫻坂光彩さん
「いいなと思って、入るって言えばうれしいです、私にとったら」
「刈りながら上がってくるのは?」
櫻坂光彩さん
「刈りながらはゆっくり登るから全然ひどくないが。もう機械持ったら一歩一歩だから心臓にも負担こんし、好きだから続けとるがいちゃ」
櫻坂由昭さん
「やっぱり皆さんに、登山者から感謝されるとうれしいですね。すれ違って『ありがとう』とか、『いい山やよ』って言ってもらえれば、この山のためによいことだと思いますので」
この日は、午後から雨が降りました。
川口歳則さん
「気持ちいいですよ、雨に打たれてやるのも楽しいです」
4月に入会したばかりの川口歳則さん(60)。今回が初めての活動です。足場の悪い登山道での草刈りも初めてで、ヒヤッとする場面も。
それでも担当した作業を無事に終えました。
「お疲れさまでした」
川口歳則さん
「ありがとうございました、ああ疲れた、暑い暑い、気持ちいいです。昔から登山道のありがたみは分かっとたもんですから、いつかお返しせんならんと思って本当にいい機会をいただいたような感じです。これからずっとずっとお返ししていきますちゃ」
多い時で100人いた大蓮華山保勝会の会員は、今では半分の50人です。
「減っているんですね」
大蓮華山保勝会 安達政昭事務局長
「減ってきています、若い人が減ってきました。来てくれないです、理解もしてくれない」
以前は、文字通り無報酬のボランティアでしたが、現在は朝日町や環境省の補助金などから5000円程度の日当を捻出しています。
「はいご苦労さん、雨、大変やったろう、ありがとう…濡れたやろう」
「雨なんか汗なんか分からん」
山が好き、恩返しをしたい、という皆さんの思いで登山道が維持されているんですね。
しかし、そうした善意だけに頼れなくなっている現状もあります。8月11日の山の日に向けて引き続き取材し、考えていきます。