奥田交番襲撃事件 警察の対応問う裁判 初の証人尋問
2018年に発生した富山市の奥田交番襲撃事件で、死亡した警備員の妻が警察の初動に問題があったとして県警を管轄する県に損害賠償を求めている裁判がきょう富山地方裁判所で開かれました。証人として、事件当時の通信指令担当者など警察官2人が出廷し、当時、避難の指示などは難しかったと語りました。
2018年6月に起きた奥田交番襲撃事件では、交番から奪われた拳銃で島津慧大被告に撃たれた警備員の中村信一さんが死亡しました。
中村さんの妻は、夫が射殺されたのは事件の通報を受けた県警の初動対応に落ち度があったためだとして県警を管轄する県に損害賠償を求めています。
訴えを起こしてから3年あまりが経ったきょう、初めて証人尋問が行われ、当時、事件に関わった警察官2人が出廷しました。
まず、事件の通報を受けた県警の通信指令課で当時、指揮をとる立場にあった警部が証言しました。
警部は、発生当時、周辺の住民や通行人へ避難の指示が可能だったかを問われると、犯人の人相や服装、逃走方法や現場の体制といった詳しい情報がなかなか入らなかったので「難しかった」と答えました。
続いて、事件現場の責任者を務めた富山中央警察署の当時の刑事第一課長が証言しました。
元課長は島津被告を取り押さえるまでの間に周辺住民への警告を行うことは、警告を指示するために必要な情報を把握しておらず不可能だったとしました。
また、例えば「屋内に避難してください」と警告した場合、それが犯人に聞かれて立てこもり事件に発展する可能性があるなど、やみくもに警告をすると現場の状況を悪化させる懸念があったと話しました。
原告「市民の安全よりも逮捕優先した印象」
裁判の後、原告の中村信一さんの妻は記者会見を開きました。
「市民の安全確保よりも犯人の逮捕が優先されたと、ありありと感じた。主人は守ってもらえなかったと思った」
次回の裁判は6月9日に開かれ、中村さんの妻が意見を述べて、裁判は結審する予定です。
判決は今年秋となる見込みです。