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「輪島塗おしまいかもしれない」それでも…乗り越えて伝統工芸の新しい歴史を作りたい

2024年1月30日 19:24
「輪島塗おしまいかもしれない」それでも…乗り越えて伝統工芸の新しい歴史を作りたい
能登半島地震で伝統工芸の輪島塗にも深刻な影響が出ています。ほとんどの事業所が営業を休止する中、復活に向けて前を向く職人たちの思いを取材しました。

輪島市にある工房長屋。普段は漆器の製作体験や職人たちのギャラリー見学などができるこの場所にもくもくと作業にふける女性がいました。漆芸家のスザーン・ロスさん。

■漆芸家スザーン・ロスさん
「もうさみしすぎる。ほんとは 漆で直さないといけないけど、 漆がない道具がないとにかく今 は木工ボンドでなんとかくっつ いて」「新作で悲しすぎ」

いまから34年前イギリスの美術館で出会った輪島塗の魅力にひかれ輪島市へ移住したスザーンさん。以来作品製作や講演会などを通して輪島、奥能登の魅力を世界に発信し続けてきました。

そうしたさなかに再び襲った今回の大地震。スザーンさんの自宅兼作業場も土砂崩れの被害に。かろうじて無事だったこのギャラリーに避難し作品の修復作業を行っています。

■漆芸家スザーン・ロスさん
「家がないのはしょうがないけ ど一番つらいのは仕事場。仕事 場と30何年間つかってきた 道具。手に入らない道具もあ ったし」「これしかない」

作業場にあったハケやヘラなど大切に使ってきた仕事道具をほとんど失ってしまいました。ことしは、コロナ禍を経て外国人向けの体験教室も計画するなどまさにこれからという時期でした。

■漆芸家スザーン・ロスさん
「どうやって回復できるかどう なるか分からない。輪島塗バン バン燃えてるしもうこれで輪島塗おしまいかもしれないよ」

輪島漆器商工業協同組合に加盟する103社のうち12社の事業所が火災により焼失。また地震の揺れにより市内のおよそ8割の事業所が全壊や半壊となるなど作業場を失った職人が多くいます。

輪島市にある創業およそ200年の「田谷漆器店」。明かりのない中事務所の片付け作業を行うのは代表の田谷昂大さんです。

■田谷漆器店 田谷昂大 代表
「こっち側が事務所ですね。右 奥に商品の検品とか梱包あと 配送する場所」
「これ輪島塗入れる箱なんですけどもう使えないじゃないですか。箱とか梱包用資材とかも」

皿やお椀などおよそ4億円分の在庫を保管していた事務所や作業場は倒壊。そして1月末に朝市通りにオープン予定だったギャラリーも1日の大規模火災で全焼しました。わずかでも無事な商品が残っていないか散乱する事務所で仕分け作業を行っています。

■田谷漆器店 田谷昂大 代表
「大事な人との再会みたいな感じですよね」
「きれいですよね。生きてるんですよ。いやあきれいだなと思って」

絶対に、この漆器店を復活させたい。そうした思いから田谷さんが始めたのがクラウドファンディングです。その思いに共感し全国から支援金が寄せられ開始から2週間余りで3700万円以上が集まりました。サイトには2000近くの応援コメントも。

■田谷漆器店 田谷昂大 代表
「ここを乗り越えて新しい輪島塗の歴史を作っていけるのかな」
「応援してくださってる方に復興のプロセスをお見せして一緒にこう輪島塗復興の夢を見て前に進んでいきたい」

一方スザーンさんは職人仲間の力を借り修復した漆器を一堂に集めた作品展をことしの春に大阪と長野で開催。すでに金沢市内に新しい作業場を作るめどが立ち10月にはそこで作った新作の展示会も。

輪島塗は決して地震には負けない。職人たちは強い思いを持って前に進み続けます。
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