【特集】社歴10年のサラリーマンが警察官に転職「教場」での生活に密着
座学
「敬礼!お疲れ様です!」
新人警察官が基礎知識や技能を身に付けるために訓練を受ける警察学校。
ここは「教場」と呼ばれ、大卒の場合は6カ月間、その以外は10カ月間。学生として刑法などを学ぶ座学のほか、逮捕術に繋がる柔道の授業など、様々な訓練を受ける。
新人警察官の1人、長谷康平さん、32歳。
建築関係の会社に10年間勤め、今年4月警察学校の門をたたいた。
長谷巡査
「みんな10個ほど離れているんですけどみんなしっかりしているので歳の差を感じない。年下の同期から勉強というか学ぶことが非常に多いので自分も負けていられないなという気持ちで毎日過ごしています」
警察官になった友人と話すうちに、この道を目指すようになったという長谷さん。
年齢がひとまわり離れている仲間たちとこうして談笑するのも日常のひとコマだ。
警察学校の1日は朝6時の点呼からはじまる。
その30分前には起きて、身支度を整える学生たち。しかし、この日はいつもと違った。
「訓練、訓練。午前5時55分宮城県内において最大震度6強の地震が発生。ガス管の破裂より宮城県警察学校周辺に火の手が迫っている。よって訓練非常招集を発令する」
5時55分。予告なしに始まった災害訓練のアナウンスだ。
「初任補習科生は出動服上下、出動帽、警備靴、軍手を携行。初任科生は出動服上下、出動帽、警備靴、軍手及び各自の3日間パックを携行」
突然の出来事に緊迫した空気が漂う。
学生「おっけい。いいよ、焦んな焦んな。軍手と3日間パック、警備靴…」
班長を務める長谷さんはおなじチームのメンバーと声を掛け合いながら部屋を出る。
「全員いる?よし」
災害に対応する身支度を整え、指定された中庭に急ぐ学生たち。
95人全員が集まったのは非常招集から「11分26秒後」のことだった。
教官「これ早いの、遅いの?はいシラカワ。はっきり言って。」
シラカワ「遅いです」
教官「遅いな」
いつでも現場に出られるように。この3か月で培ってきた警察官としての心構えが試された訓練。
長谷さんの場合は、災害発生後3日間を過ごす食料や服などを備える、いわゆる「防災バッグ」の準備不足が課題として残った。
教官「長谷!飯これだけ?死んじゃうよ、現場で。食うもんないからね。3日間これで生き残るんだからちゃんと考えて準備しないと」
長谷巡査「はい。」
長谷巡査
「3日間パックの準備が甘かったなと。東日本大震災も急に起きて焦ったので。宮城県は地震が多いので有事の際は冷静な気持ちで対応できるように警戒で生活していきたいなと思います」
この場所で1つ1つの訓練を重ねながら、1人前の警察官へと階段を上っていく。
常に気持ちが張る日々の中で、自宅に戻れる休日は長谷さんにとって気持ちがほどけるひと時。
2018年に結婚した妻の昌美さんは、警察官に転職したいという長谷さんを後押しした。
妻・昌美さん
「やってみたい、挑戦してみたいことがあるなら是非やってみたほうがいいよって。私はすごく優しい方だと思っているので。市民の皆さんにも同じように、ありのままの彼の姿で接してもらって、私を含め、皆さんを守ってもらえればと思っています」
お互いの1週間の出来事を共有し、ふたたび訓練に戻る。
警察学校での生活も折り返しを過ぎた今月。
警察官として初めて県民と関わる交番での実務研修が始まった。
求められるのはこれまでの訓練で養った警察官としての基礎。そして、それを活かした現場での対応力だ。
長谷巡査
「現場に臨場した際に改めて自分の知識不足を感じたので、今後の学校生活はこの経験を生かして現場で活用できる知識を習得して、どんな事案にも対応できる警察官になりたいと思いました」
半年間の学校生活も残すところ2か月あまり。
県民の生活を守り、そして、県民に感謝される仕事をしたい。
「教場」での学びは続く。