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【特集】住民の熱い思いで…蒸気機関車SL「シゴハチを後世に」解体から一転保存に<宮城・大崎市>

2024年7月15日 19:25
【特集】住民の熱い思いで…蒸気機関車SL「シゴハチを後世に」解体から一転保存に<宮城・大崎市>

雪景色の中をもくもくと煙を立ち上げながら走るSL。
これは1970年代に大崎市内で撮影された陸羽東線の映像。

約50年前に廃止され、公園に展示されていた

大崎耕土で育った美味しい米を全国へと運んだC58形=シゴハチ。
陸羽東線での蒸気機関車の運転は1973年、約50年前に廃止された。

JR西古川駅近くの公園には地域の発展に貢献したSLを当時の国鉄から無償で譲り受け1974年から展示してきた。

地域住民
「私と私の子ども、孫と3世代が楽しんだ」
「長い間ご苦労さん。地域とともにあったということで」

老朽化で修繕や維持に多額の費用

しかし、老朽化が進み修繕や維持に多額の費用がかかることから去年12月に住民に惜しまれつつも解体された。

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明 代表
「ここにも機関車があったんですけど無くなっちゃいましたね」

その場所を案内してくれたのは保存会の代表を務める大場正明さん(36)。

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明 代表
「小さい頃から蒸気機関車が大好きでしたので、形あるものが無くなった事がとても寂しく思います」

「シゴハチを後世に」2155人の署名を大崎市長に提出

大場さんたちが参加する保存会はおととし2155人の署名を大崎市長に提出するなどシゴハチを後世に残そうと活動を続けてきた。

大崎市にはSLの廃止後、古川と岩出山・鳴子温泉の市内3か所で展示されてきたが、古川と鳴子温泉の2か所は去年とおととしに解体された。

しかし岩出山・城山公園のシゴハチは保存されることになった。

行政を動かしたのは住民の熱い思いだった。

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明 代表
「こちらが私の宝物になります。岩出山のSLの本物のナンバープレートになります」

小さい頃からあこがれたSL。
大場さんは仲間と共に立ち上げた会で、シゴハチの保存に向け地域の歴史を後世に伝えたいとインターネットなどを通して活動を始めた。

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明 代表
「歴史のあるものを大人たちが真剣になって守れる誇りのある郷土であってほしいという思いが強くて保存運動を立ち上げたのが大きかったです」

クラウドファンディングで寄付募る

シゴハチの保存に向けては、老朽化した部分の修復や維持管理が課題だったが、大場さんたちはクラウドファンディングで寄付を募るなどして当初の目標を大きく超えるおよそ530万円を集めることに成功した。

そして13日、大崎市岩出山の城山公園では、修復作業開始に向けた安全祈願祭が行われた。
そこには伊藤康志市長の姿もあった。

大崎市 伊藤康志市長
「行政の場合は住民の安全安心が最優先ですから危険な状況をそのままにするわけにはいかないという事で検討の上、解体・撤去するという事に決めました。しかし、その決定よりも重い『SLを大切にしたい』という方々、特に次の時代を担う児童・生徒の皆さん方がぜひ残してもらいたいと、そして自分たちも保全活動に参加していくとそこまで熱い思いを届けていただきましたので、これは迷うことなく解体から保全の道にと方向にという事で方針を転換する最大のエネルギーでした」

地元の中学生
「SLの前で小学生の時にみんなで写真をとって花見をしたのが思い出です」
「きれいに保存できるように掃除したり、楽しい所にしたいと思いました」

安全祈願祭には40人近くが参加し、保存に向けた決意を新たにしていた。

伝えたいのはシゴハチと共に歩んだふるさとの歴史

地域の住民
「SLが引く貨物列車が見えると友達と走って行って手を振ったりとかそんな風な記憶があります。トンネルに入る前に汽笛が鳴るんですよ。そうするとみんなでバタバタと窓を閉め始めるんです。見知らぬ同士、一致協力して窓を閉めてましたよ。トンネルを抜けると開けて、またトンネルに入る前に閉めてを忙しく繰り返す。きれいな姿にする活動に子どもたちも参加してもらって、一緒にこの機関車をきれいにしたいと思っています。この沿線の宝ですから」

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明 代表
「人々の思いを乗せた蒸気機関車として、どの世代の記憶にも残る機関車にしていきたい」

修復作業は今年9月から始まる予定。
保存会では今後、SLを知らない子どもたちにも親しまれるようなイベントを企画している。

伝えたいのはシゴハチと共に歩んだふるさとの歴史だ。