生まれつき左手がなくても「可能性を信じる」ソフトテニスに挑む男子高校生に密着
この春。
石巻市の中学校を卒業して仙台高等専門学校に入学した髙橋聖さん。
聖さん
「もともと数学や理科が得意で好きだったので高専を選びました。勉強も部活動も両立をがんばりたい」
仙台高等専門学校の名取キャンパス。
石巻市の自宅からは片道2時間近くをかけて通っている。
聖さんは生まれつき左手首から先がない。
お母さんのお腹の中にいる時、赤ちゃんを包む羊膜が左手に絡まり成長が止まった可能性があると医師から説明を受けた。
最初に気づいたのは出産に立ち会ったお父さんだった。
お父さん
「最初何がなんだかわかんなくて、「ん?」って目をつぶった。あれ?と思って。そうしたら先生に「よく見なさい、手ないよ。お父さん、ちゃんと見なきゃダメだよ」って言われて。出産ですごい大変だったので、その時は妻に言えなかった」
「出来てる?」
左手がなくても自立した生活ができるように。
聖さんの両親はチャレンジすることを大切に子育てをしてきた。
そして聖さんも左手がないことをハンデキャップに感じることはほとんどない。
聖さん
「マジ美味しい」
聖さんに自信をくれたスポーツがある。
小学1年生の時、両親の勧めで地域のクラブチームに通うようになった。
自分なりに打ち方を工夫するなどして取り組んできた。
聖さん
「サーブは下だとやっぱり、 コースは狙えても、ちょっとイマイチ勢いが出なかったり、 相手から取りやすいボールになっちゃうので、やっぱり上から練習しようと思って」
これはソフトテニスを始めた頃、お父さんが撮影した動画。
お父さん
「勝つとか負けるとかじゃなくて出遅れないようにやらせたい。みんなと溶け込んで楽しそうにやっていると見ていた」
お父さんも自宅の庭に照明を取り付けるなどして聖さんを応援した。
メキメキと上達した聖さん。
小学6年生の時には念願の全国大会に出場。中学生でも県代表の選手に選ばれてきた。
そして、高専でもソフトテニス部に所属している。
Qデビュー戦、先輩とペアどう?
「仲良く全力を出し切りたいと思います。」
先月、県内249のペアが参加する春季大会に出場した。
聖さんは2年生の先輩とのダブルスで出場するも、緊張のせいかリズムをつかめない。
聖さん
「みんな球も速いしコース上手だし」
お父さんも、応援に駆けつけていた。
お父さん
「場の雰囲気にのまれそうになりますねまずは大会を楽しんでほしい」
徐々に調子を取り戻す。
終わってみればゲームカウント4-0のストレートで初戦を突破。
勢いに乗った聖さんのペアは2回戦も完勝で勝ち上がった。
聖さん
「試合前は緊張しましたが、やってみれば馴染んできて、先輩ともしゃべって慣れてきました。」
「『どうせ出来ないし。』僕のいつもの口癖でした。」
聖さんが中学3年生の時に書いた作文。
ソフトテニスに出会い、家族に支えられながら挑戦する中で聖さんはありのままの自分を認め可能性を信じる大切さを学んだ。
大会2日目の3回戦。
先に2セットを取るが、相手も粘り強さを見せる。
応援の声
「これからだぞ」「流れ持ってこい!流れ流れもってこい」
ソフトテニスが聖さんに与えてくれたものがもう一つ。
それは「仲間」
3回戦は突破し、4回戦の相手は強豪・聖ウルスラ学院英智。序盤から圧倒されてしまう。
聖さん
「上がっていけばいくほど相手強くなるし返すので精一杯になってくるし気持ちの余裕出来なくなってきていたので」
聖さんのペアも粘りを見せますが…この大会で優勝を果たした相手に完敗だった。
それでも、やりきった表情だった。
聖さん
「うーんでも楽しかったです。ペアともっと話し合って総体までに調節できたら」
高校生活での初の大会はベスト32という結果。
聖さんの挑戦は始まったばかりだ。