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「道路1本の寸断で避難も困難、救援物資も運べない」能登半島地震から学ぶ “半島のリスク”《長崎》

2024年3月28日 6:45
「道路1本の寸断で避難も困難、救援物資も運べない」能登半島地震から学ぶ “半島のリスク”《長崎》

(桒畑笑莉奈アナウンサー)
発生からまもなく3か月になる、能登半島地震から私たちが得る教訓です。

被災地の復旧をスムーズにする上でも欠かせない「緊急輸送道路」をテーマにお伝えします。

まずこちら。石川県の能登半島の地図です。

今回の能登半島地震で、金沢市と能登半島を直結する自動車専用道路「のと里山海道」が寸断されました。

いわゆる緊急輸送道路と言われる道で、寸断によって支援物資が運べなくなり、断水の長期化など復興の大きな妨げになった実情があります。

次に長崎県の地図です。

先ほどの能登半島と同じように半島が、島原のほか西彼杵や北松浦など複数存在しているのがわかります。

同じように地震があった場合、長崎の道路は大丈夫なのでしょうか。

石川県で取材した、梅田啓祐 記者です。

(梅田記者)
私は、地震発生から2か月半後、「のと里山海道」が能登方面に向かう全区間で通行が可能になったタイミングで取材に入りました。

被災地から突き付けられた長崎の課題を取材しました。

地震発生から2か月半が経過した被災地です。

大規模火災が発生した輪島市中心部の観光名所「朝市通り」一帯はまだそのままで、かすかに焦げ臭いにおいが漂っていました。

元日に発生した石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震。

災害関連死を含めて240人以上が犠牲となり、住宅の被害は約7万4000棟に上ります。

今月18日時点で、一部の地域ではいまだに断水が続き、約1万3000人が避難生活を送っています。

依然として険しい生活再建の道。被災地の円滑な復興を阻んだのが・・・。

(ヘリ上空リポート)
「ガードレールが崩れて石が下に散乱しています。多くの石が下に散乱しています。道路が壊れたような跡が見えます」

金沢市と能登半島を直結する自動車専用道路「のと里山海道」の寸断です。

全長が約83キロ。

ヒトやモノの移動を支える能登半島の大動脈ですが、地震により土砂崩れや道路陥没など、大きな被害を受けました。

一時は全線で通行止めとなり、一部の区間では、迂回路を設けるなど応急的な復旧工事が進められました。

緊急、一般を問わず、多くの車両が往来したことから、道路渋滞を招きました。

(NNN取材団)
「午後1時。輪島方面行きの下り線は、通行止めが先ほど解除されました。2カ月半ぶりの通行再開です」

一部区間で復旧作業が終わり、能登方面に向かう全ての区間で通行止めが解除されました。

(金沢河川国道事務所計画課 水野 力斗 課長)
「輪島方面で全区間で通行可能となったということで、被災地域の復旧復興の支援が、これからより加速することを期待したい」

アクセス道路の寸断で、人命救助や生活再建がままならないといった事態は、長崎にも置き換えられます。


(長崎大学 高橋和雄名誉教授)
「長崎も一緒だが、ネットワークが半島地域は1本の道路なので、どこかやられると全部使えなくなる。生活と救援と、今度は物資が運べないという、サプライチェーンが寸断されることで、両方から被害を受けるわけだ」

防災工学が専門の長崎大学の高橋 和雄名誉教授は、決して他人事ではないと指摘しています。

代表的な例が島原半島です。

現在、長崎本土と島原半島は、251号と57号の2本の国道で結ばれていますが、自然災害で土砂崩れなどが起これば、やはり支援物資の搬入は停滞するとされています。

さらに橋が多い箇所もあり、もし仮に崩落すれば、復旧に時間がかかるおそれがあるということです。

県も影響は大きいと見ていて、道路の補強や土砂崩れ対策に力を入れています。

(長崎大学 高橋和雄名誉教授)
「港の対策もしっかりしておく必要が、離島や半島では必要」

県内でも、実際に被害が出ています。

2020年7月、大雨による斜面地崩落で、平戸市の生月大橋手前の県道が通行止めに。

生月島の約5000人が孤立する事態となりました。

橋の手前で足止めされた人たちは、生月島の漁港に船で輸送するなど、海からの支援で難を免れました。

一方、今回の能登半島地震では、港にも被害が。

輪島港では、海底の地盤が隆起し、港湾施設にも損壊やひびが確認されたのです。

(長崎大学 高橋和雄名誉教授)
「やっぱりヘリ。救助の時は。だからヘリを有効に使うということは考えていかないと、陸路だけでダメの場合は、港とか海路を使ったり、うまく空路を使ったり、そういうことを考えながら補っていくしかない」

実際に長崎県は、地震のリスクを抱えています。島原半島付近にある「雲仙活断層群」です。

県の予測では、断層帯が連動した場合、今回の能登半島地震を上回るマグニチュード7級の地震が発生する可能性があるとしています。

家屋の倒壊や火災、津波も発生するとのシミュレーションもあり、この場合の死者は、2150人にのぼると予測されています。

(長崎大学 高橋和雄名誉教授)
「斜面地が多いので地震によって斜面が崩壊して、それで家が破壊されたり埋まったりする、そういう他のところではないような災害が長崎で起こりうる」

高橋名誉教授は、平時からの備えを指摘します。

半島や離島では人口減少や高齢化が目立ちマンパワーも不足しています。

(長崎大学 高橋和雄名誉教授)
「地域の過疎化とか、高齢化がインフラが整備されたり対策が進む中で、今度は地域がもろくなった。能登の教訓も含めて、やっぱり地震の対策のハード、ソフトについてはもう1回考え直さないといけない」

長期化する被災地の窮状に何を学ぶか。

半島としての課題が長崎にも突き付けられています。

被災地では、今回道路と同様に損壊した家屋が残されたままで、2か月が過ぎても生活再建に進めない様子を目にしました。

被害が大きかった珠洲市出身のタクシー運転手の男性と話をしました。

珠洲では老朽化した木造住宅が多く倒壊したわけですが、この地域では昔から広い客間に親戚が集まって、冠婚葬祭を自宅で執り行っていたというんです。

「昔懐かしい生活風景だけど、古い分、耐震には弱かった」という一言が印象に残っています。

ひと部屋が広い分、柱の本数が少ないため、地震には弱かったのではないかと考えられます。

同時に長崎ではどうだろうと考えました。

坂のまちに伝統的建造物も多く残る長崎で、身の回りの防災対策を少しでも自分ごととしてとらえていくことが重要だと痛感しています。

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