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長崎くんち【麹屋町・川船】“まちの仲間と駆け抜ける青春を” 最年長54歳の初挑戦《長崎》

2024年9月26日 6:45
長崎くんち【麹屋町・川船】“まちの仲間と駆け抜ける青春を” 最年長54歳の初挑戦《長崎》

長崎くんちの踊町「麹屋町」の奉納は川船。

その根曳に初挑戦するのは、最年長の根曳は54歳。

体に鞭うって駆け抜けてきた10か月あまりを追いました。

任されたのは、「左舷の6番」。

最大級の川船を、仲間を、左側から支えます。

(實藤 康史さん)
「まだ一か月あるというよりは、あと少ししかない。演技を仕上げるのもそうだが、この仲間でするのもあと少しなんだと思えば…。

毎日、毎日、後悔ないようにやっていきたい」

實藤 康史さん 54歳。

初めてのくんちへの挑戦は、“最年長根曳” としての挑戦でもありました。

まだ寒さが残る 2月下旬。

(長采 山本 泰弘さん)
「 ようやった、頑張ったという奉納をするで。頑張るぞ」

川船を奉納する麹屋町はくんち本番を8か月後に控え、すでに動き出していました。

根曳の平均年齢は38.5歳。實藤さんが掲げたテーマは…

(實藤 康史さん)
「がむしゃらに、青春の忘れ物を取りに行くぞという感じで頑張ろうかなと」

實藤さんは、17年前に麹屋町に引っ越してきました。

その年、長女の桃子さんが先曳としてくんちに参加。

それをきっかけに、まちの人たちとの交流が始まったそうです。

10年前、前回のくんちは 仕事などの調整がつかなかったため参加できず。

年齢などを考え 悩んだものの、仲間に背中を押され、今回は一大決心しました。

しかし、現れるのは大きな壁ばかり。

体力面に、くんち特有の所作と、苦労の連続でした。

(實藤 康史さん)
「もうボロボロ。足元も 結構痛かったりするが、手入れしながら」

ただ、決して立ち止まることはありませんでした。

周りに後れをとらないよう、体に鞭打ち、続けてきたトレーニング。

いつしか、それは仲間との大切な時間となりました。

(實藤 康史さん)
「体が順応しちゃって、困ったことについていけちゃう。きついというより、仲間と走るのが楽しい」

「宜しくお願いします」

7月からは船を使った稽古が始まりました。

週に6回…。

厳しい稽古を乗り越えたその先に自分自身の成長があると信じ、取り組んできました。

(實藤 康史さん)
「部活をやってなかったので、自分の中で欠けていると感じていた。ねばりがないとか諦めが早いとか。
社会の中の厳しい中に身を置いて、自分がどう変化しているのか興味があった」

最年長の頑張りは、周りの若い根曳にも伝わり…。

(根曳 木村 颯さん(24))
「實藤さんは超人。あんな激しい船回しについてきて、いつも周りを明るくしてくれる。ムードメーカー。
助かっている。あんな感じで、いつも明るくしてもらっている」

(添采 中島賢二さん(51))
「いろいろぶち込んでくる人。俺采なのに、年下だからかな」

本番まで、残り一か月。

最初は安定していなかった船回しも、息のあった スピードある演技に。

そして、川船最大の見せ場5回転半の「梅の風車」は…。

本番さながらの気持ちのこもった演技は、集まった観客を沸かせます。

(客)
「ヨイヤー」

(實藤 康史さん)
「ギャラリーの方もたくさんいて、みんな気合いが入っていて、持てる120%を出せたのでは」

仲間と高め合いくんちに注いできた10か月あまり。

(實藤 康史さん)
「ちょっと寂しくなってきている。この仲間と最後だし、自分も卒業だろうと思っているので。くんちが終わっても誇りをもって、日常生活に生かしていければと思いながら、毎日大切に過ごしている。あと数えるほどしかないので、集中して頑張りたい」

まちへの感謝、そして観客に勇気を届ける最高の演技を。

54歳、限界に挑んだその成果を、諏訪の大舞台で出し切ります。