【特集】気候変動 青森県支える「漁業」のこれから
特集は「気候変動と漁業」です。
ことしの記録的な猛暑で一次産業はさまざまな被害を受けました。
ホタテの大量へい死やサケの不漁などこれまでにない危機から青森県を支える「漁業」をこれからどう守っていくのか考えます。
★宮下知事
「これまでにない危機にひんしているのがホタテガイの状況」
先月25日、宮下知事は青森県の基幹産業ホタテが「これまでにない危機」と述べました。
ホタテの一大産地平内町。
養殖ホタテの稚貝を選別する「分散」作業が行われていました。
★稚貝を分散する人
「この黒いの(ウロ)が見えないと死んでいるから太陽にかざしてみたりしている もうたいへんよ」
ほとんどの稚貝がへい死。
100枚のうち3枚ほどしか生きていないカゴもあると肩を落としていました。
漁協別にみた昨年度のホタテの販売実績です。
全体のほぼ半数を占める平内町や販売実績の多い青森市漁協でへい死が相次いでいます。
稚貝がないと来年以降ホタテが生産できません。
しかし北海道などほかの地域から稚貝を融通することは難しいと言います。
★県水産振興課 種市正之課長
「陸奥湾で発生したことがない貝毒「まひ性貝毒」を一緒に持ち込んでしまう危険性がある「まひ性貝毒」ということでいったん発生してしまうと長い期間ホタテの出荷ができなくなるということで 大きな影響が出ます」
漁師からはホタテ養殖の将来を案じる声も。
★ホタテ漁師
「温暖化が進んできた影響と思いますがこのままではここの海(陸奥湾)ではホタテガイができない海になってしまうだからもう1本ホタテともう1本の柱というのも今後作っていかなくてはいけないのではないかと思う」
こちらはことしの海水温が過去30年間の平均とどれくらい違うかを表したグラフです。
日本海、太平洋、陸奥湾といずれも3度から5度も水温が上がっていました。
★むつ湾漁業振興会 立石政男会長
「暑さに強いホタテの品種改良というかそういうものもお願いしていかなければいけない時期に入ってきたのかなと」
県が立ち上げた戦略チームでは新しい養殖技術の開発など今年度中に総合戦略の骨子をまとめる方針です。
影響はホタテ以外にも。
八戸沖ではサバの水揚げ量が減少。
代わりに九州などが主産地のアオリイカが水揚げされました。
★第三富龍丸 沖田孝平船長
「去年おととしより少ないですけれど できればできるかぎり増えてくれないと困ります」
三沢漁港三沢漁港では秋サケが不漁です。
10月の漁獲量は2.5トンと去年の3割ほどに激減しました。
★三沢市漁協 熊野稔組合長
「今まででは私の記憶ではないこんな不漁は 感覚的には海水温海の環境が大きく変わっているのではないか」
★奥入瀬川鮭鱒増殖漁協 戸来敏幸組合長
「こんなに取れないのは今までにない 全く取れない」
多い時には年間14万匹ほどのサケが捕れていた奥入瀬川は近年不漁が続き昨年度は5千匹ほど。
今年度は9月以降およそ50匹しか捕れていません。
★奥入瀬川鮭鱒増殖漁協 戸来敏幸組合長
「水温、海水温が高いいまだに沖が20℃くらいある」
八戸市の新井田川漁協では北海道から卵を買い付けふ化させる取り組みを続けていますが放流数は少ないままです。
★新井田川漁協 外舘守男組合長
「毎年毎年悪くなっていきますこれは来年になったらもっと悪くなります」
水温が上昇し川にサケが戻らないため卵が不足、そして放流する稚魚が減り沖の漁獲量が減るという悪循環が起きています。
★三沢市漁協 熊野稔組合長
「取る魚を変えていくとか今の環境条件に対応した魚種漁法の模索を早急にしていかなくてはという考えをより強くしている」
★県水産振興課 種市正之課長
「高水温については現在の環境がかなり変わってくるとこれから予想されますのでさまざま陸奥湾でも外海でもその環境に合わせた魚種漁法への転換も今後必要になってくるのかなと思っています 副収入を稼ぐというような新たな取り組みも進めていかなくてはいけないと考えています」
多くの漁業者が危機感を抱く海洋環境の変化。
海に囲まれ海と生きる青森県の漁業を守るため持続性の高い対策が求められます。