東西文明の歴史をたどる世界遺産「シルクロード展」学芸員に聞く“これだけは見逃せない”作品3選
こちらのラクダや砂漠、中国のお寺などから連想するものというと…そう、世界遺産「シルクロード」です。ヨーロッパとアジアを結ぶ8700キロの世界観を凝縮した展覧会が、22日愛媛で始まりました。中国の“国宝”に囲まれ、緊張感が漂う準備の舞台裏に、カメラが潜入しました。
愛媛県美術館の岩本成美さん。静岡県出身で、県美術館での勤務は2年目の若手学芸員です。
岩本さん:
「大学の時に文学部の先生が芸術学を専攻していて、その方がもともと美術館で学芸員をしていて、話を聞く中で自分も目指したいなと」
そんな岩本さん、現在県美術館で進むある“一大プロジェクト”の真っ只中にいました。それが…
「6月22日から始まる世界遺産大シルクロード展という展覧会を担当いたします」
世界遺産、シルクロード。古くから東洋と西洋を結ぶ重要な交易路として栄え、数えきれないほどの文化や芸術、貴重な文化財の数々を生み出してきました。
東京富士美術館を皮切りに全国を巡回している「大シルクロード展」は、愛媛が4会場目。四国では唯一の開催です。
岩本さん:
「作品が無事に展示できるかというのは本当にいつも緊張感がありますね。特に貴重な物がそろっている展覧会なので」
この日は、開展3日前。実は岩本さん、展覧会全体を統括するメイン担当は今回が初めてです。
岩本さん:
「箱を開けて、クーリエ(中国の専門家)の皆さんに確認してもらって、問題がなければ設置」
「大シルクロード展」には、中国・国内各地27か所の博物館などから、国宝にあたる「一級文物」44点を含む、およそ200点が集結。
黄山美術者(企画協力)中国出身の社員:
「(一級文物の中でも)全部、レベルが高い一級文物。実は中国でもこんなには見ることができない」
中国側の専門家も来県し、慎重に展示作業が続く中…
岩本さん:
「これもちょっとやってもらっていいですか?」
岩本さんにあるアイデアが。
岩本さん:
「あれちょっと斜めにしてもいいですか?」
東京富士美術館:
「いいですよ。新しいパターン」
運送会社:
「愛媛バージョンですね」
台座を少し斜めにして、見やすさと遊び心をプラスしました。
岩本さん:
「これでお昼休憩です」
ここで、休憩時間に聞いた「これだけは見逃せない!」シルクロード展の3大チューモク展示をご紹介!
「1点目は『マニ教ソグド語の手紙』という作品になります。ソグド語という現在は『死語』(消滅した言語)になっているんですけど、その言葉で書かれた手紙になります。左から右に読んでいくんですけど、マニ教の位の高い僧侶に向けて年始のご挨拶をしている手紙で、非常に文字がきれいな状態で保存されている作品でぜひ見ていただきたい」
続いて、2点目は“スレンダー”な菩薩!
「菩薩というのが悟りを求めて修行する人という意味。理想的な姿でありながらちょっと写実的で、一見くびれがキュッとなってるんですけど、周りから見ると肉付きが自然にされていて、それが唐の時代の仏像の技術の高さを感じていただける作品でぜひ見ていただきたい」
ここで、番外編!「マーラーカオで大家好(ダージャーハオ)!」
清家リポ
「県美術館内にあるこちらのカフェでは、シルクロード展とのコラボメニューが登場します」
the park M's coffee 郷田将雄さん:
「こちらがマーラーカオとジャスミン茶のセットです。蒸しパンのようなもので黒糖を使って香りを付けながら仕上げています。シルクロードと言えば中国がイメージできるかなと思って、一般的な中国で食べるお菓子マーラーカオとジャスミンティーをセットにした商品」
マーラーカオは、醤油などのほか、中華料理に欠かせないスパイス「八角」を入れて手作りしています。
清家アナ:
「生地がふわふわしていますよ!醤油の香ばしさにほんのりとした甘さが良い相性になっています。アクセントになっているのが八角のちょっとスパイシーさも感じることができて、より中国の雰囲気を味で感じさせてくれますね」
休憩後、岩本さんがおススメする3つ目の展示品の作業が始まりました。箱から出てきたのは…「瑪瑙象嵌杯(めのうぞうがんはい)」。新疆ウイグル自治区の墓から出土した5世紀から7世紀の金のカップで、繊細な赤いメノウの装飾が特徴です。
運送会社のスタッフ:
「出土品なのでどこが弱っているのかわからないので、やはり神経は使いますね」
中国側の専門家によるチェックもより厳しく…特に貴重な一級文物で、現場にもこの日一番の緊張感が漂います。
キズや問題点はなく、最後は一級文物を手に抜き足、差し足。中国側の専門家など関係者の視線が矢のように突き刺さるなか、慎重に展示台へ。
岩本さん:
「位置はここでOKです。お願いします」
「作品がどんどん入ってきて開催間近な感じがしますね」
悠久の歴史を今に伝え、多くの人を惹きつけてきたシルクロード。そのロマンを感じる「大シルクロード展」は6月22日から9月1日まで愛媛県美術館で開展されます。
岩本さん:
「シルクロードというと、もしかすると一本の長い道を想像される方もいるかもしれないんですけど、実際は非常に入り組んで様々な地域を経由して日本にも伝わったりしてるので、いろんな民族の影響の折り重なり合いを楽しんでもらえたら」