ラジオDJの母、宮崎ユウさん 発達障害の子育て経験きっかけに「ことば音楽療法士」としての挑戦
この春、愛媛県松山市に、ことばと音楽でコミュニケーション能力を育む教室が開講しました。先生は、ラジオDJでありお母さん。教室を開いたのは、自身の子育て経験がきっかけでした。
毎週金曜日の午後10時に始まるラジオ番組。この日は、4年ぶりに息子が転勤で松山に帰ってきたという話題に。
宮崎ユウさん:
「『実家最高!』って。それ聞いてだいぶショックやったもんね。『実家最高なの!?23歳の男子…本気!?』って」
ラジオプレゼンターの宮崎ユウさん。
Q.いつもここが定位置?
ユウさん:
「はい、ずっと。15年ここに座っております」
2009年の番組開始から放送は、この日で745回を数えました。
中岡勇人ディレクター:
「(ラジオへの)向き合い方はどのパーソナリティよりも丸裸になっているようなものですから」
ラジオのトークの大部分は「家族の話」。
ユウさん:
「(リスナーからは)M家って呼ばれているんですけど、宮崎のMで。『M家の日常が面白い』って。(番組では)お母ちゃん寄りの喋りをしていますね」
子どもたちに向け “言葉と音楽”交えたレッスン
そんな宮崎さんはこの春、ことば音楽療法士を取得し、ことし4月、「愛媛ことば音楽教室ねいろ」を開講しました。
ユウさん:
「例えばバナナとかでも“バナナ♪”と(音階が)落ちていてそれに音階をつけているんですよ。ほとんどミ・ソ・ラの3音階だけを子どもにずっとうえつけていくという療育」
自分の気持ちを言葉でうまく伝えられないなどの“言葉の障害”。この教室では言葉と音楽を交えたレッスンでコミュニケーション能力を高めることを目指しています。
ユウさん:
「私が『バナナ♪バナナ♪』とずっと歌っていたりとか。でもずっと聞いてくれているのでそのうち『ナ♪ナ♪』って言ってくれるようになるんですよ」
この教室の壁には2頭のクジラの親子が描かれています。
ユウさん:
「子どもが深い海の底になかなか怖がって行けないのをクジラのお母さんはずっと手助けするんですよね。それも上手に乳をあげながら誘導していく」
この教室を開いたのには、宮崎さんと家族とのある経験が深く関わっています。宮崎さん家族、“M家”のリビングに飾られた家族との思い出の品々。
ユウさん:
「これ七五三のときの写真なんですけど」
長男・晏似さんと長女・紅さん。
ユウさん:
「可愛かったですよね、ほんと。大変でしたけど」
7年前、当時14歳の紅さんは“発達障害”と診断を受けました。
ユウさん:
Q大変だった思い出の方が多い?
「いっぱいですね、どっちかというと。喋ったら泣いてしまいそうなことがたくさん」
文部科学省の調査では、通常学級に在籍する小中学生の8.8%が学習や行動に困難のある発達障害の可能性があることがわかっています。
紅さんは、中学校時代、友達や先生とトラブルになり、宮崎さんが度々学校に呼び出されることも。そんな紅さんにとってお母さんは一番の理解者でした。
ユウさん:
「これ私が誕生日で彼女が高校3年生のときにくれた手紙なんですけど」
(紅さんからの手紙)
「ADHDというものを自分がもっていると知ったとき本当に泣きわめいて、ママが仕事に行ったとき1人で枕に向かって叫んだりしていました。でもママは私にわかるように1個ずつ丁寧にわかりやすく教えてくれて、ADHDのいいところすごいところを教えてくれました。だから私は今こうやってADHDを胸を張って『大丈夫、みんなとちょっと違うだけ。私はすごいんだ!』って思えて心が楽になったし、堂々と言えるようにもなりました。私の憧れはママです。かっこいい人になることです。人に迷惑しかかけんような子どもやけどこれからもよろしくお願いします。紅より」
「…これ捨てられませんね」
現在、21歳になった紅さん。
娘・紅さん:
「私が『次の日から学校に行きません』って言ったら『じゃあママが行ってくる』って言ってママが学校に行ったりとか『本当に行かんの?』『行かん!』『ママが行ってくる』って」
ユウさん:
「『いってらっしゃい』って言われた。『行ってきまーす!』って」
ユウさん:
「(ラジオでは)どうしても笑いに変えないといけないというか笑って過ごさないといけないのでそれが毎週くるんですよね。めちゃくちゃ苦しいときも。でもその(ラジオの)何時間か頑張って笑ってたら家に帰っても普通に子どもたちにもゲラゲラ笑って話せる自分がいたりとか。助けてもらいましたね、私はラジオに、たくさん」
自分の経験を…そして、“声”や“音楽”という強みを、活かすことができないか。そこで開いたのが「愛媛ことば音楽教室ねいろ」です。現在、教室には3歳から10歳の子どもが通っています。
ユウさん:「これなぁに?」
子ども:「イチゴ」
ユウさん:「すごーい!」
数の数え方や時計の見方などをリズムに乗せて繰り返し歌いながら言葉を引き出していきます。
保護者:
「喋りがゆっくりなんで言葉が動物とかわかることが増えてきたかなと感じてて。遊び感覚でいろいろ学んでもらえたらいいかなと」
ユウさん:
「自分の子どもにできなかったことを今本当に困っている子たちに私がお手伝いできているってことが巡り巡って誰かに、どこかに、還元できるという仕事なのでめちゃくちゃやりがいがある。社会・世界っていうのは楽しいところなんだよ、クジラのお母さんみたいにちゃんと守ってくれる人も支えてくれる人も、家の人以外にいるからねとわかってくれたら嬉しい」