「ママは事故で死んだ」祖母と2人暮らしの男児、実は育児放棄で…ルポ・繁華街の24時間保育園 #令和の親 #令和の子

「よく寝てますよ。お母さんもお仕事お疲れ様」。
仕事帰りに保育園へお迎えに来た母親は疲れ切った表情。寝たままの我が子を保育士から受け取ると、母親の表情に笑顔が戻る。「良い子にしてた?帰ろうね」。どこにでもあるような保育園のお迎えの様子だが、1つだけ“普通の保育園”とは違う点がある。
時刻は、深夜2時を回っていた。
愛媛県松山市の繁華街近くに24時間営業(現在は時短営業中)の「ひだまり保育園」がある。開園10年を迎えるひだまり保育園の“売り”は夜間保育。立地上、飲食店や夜の接待を伴う店で働く「夜職」の人、さらに当直勤務などがある医療・介護関係の親が子どもを預けるケースが多い。松山市で土日も夜間も24時間で子どもを預かる施設は、ここ以外に見当たらない。
「『夜に預けられる子どもがかわいそう』なんてよく言われますよ。お母さんたちは遊んでいるわけではないのに、どうしても夜に仕事をすることは“悪”とみなされるんでしょうね」と話す塩見洋三園長(57)
かつて関西の繁華街で飲食店を経営していた時、夜間に預かる託児所がなく「孤独な」母親や子どもを多く見てきたという。その経験から地元・愛媛で24時間営業の保育園を開園した。
髭とオールバックがトレードマークの“コワモテ”塩見園長の口癖は「うちは特別なことはしていない」。
「いろんな親、いろんな子どもがうちにはいますよ。でも、世間の人が目を背けているだけで、これが普通です。これがこの社会の親であり、子どもたちです」
(南海放送報道部・植田竜一)
※本記事に登場する保護者と子どもの氏名は仮名です。
その男の子とひだまり保育園の出会いは5年前にさかのぼる。
はじめくん当時1歳は、毎日決まって夜7時頃にいわゆる「夜職」の母親に連れられて登園。深夜3時頃、夢の中の状態で迎えに来た母親とともに帰って行く子だった。
「おはようございます。はじめの祖母です。お願いします」
数年たったある日。はじめくんは母親ではなく、祖母に連れられて毎朝登園するようになった。夜の保育はやめて、夕方には帰宅する生活に。それからしばらく経っても母親はひだまり保育園に来ることはなくなった。
温和な丸顔ではじける笑顔が特徴的なはじめくん。ある日の昼下がり、聞いたわけでもないのに塩見園長に突然打ち明けたという。
「僕のママは事故で死んだんだ。だから…おばあちゃんと住んでる」