【2024総決算】震度6弱の地震に松山城の土砂崩れ…相次いだ災害と進む「備え」
今年は能登半島地震や愛媛でも震度6弱を観測する地震が発生したほか、一家3人が犠牲になる大雨被害も…相次ぐ災害、そして「備え」が進んだ1年を振り返ります。
2024年は元日から大災害に見舞われました。最大震度7を観測した能登半島地震。愛媛からも人や物資など、様々な支援の手が差し延べられました。
「激動」の年といわれる辰年。愛媛でも毎月のように災害が相次ぎました。
4月、豊後水道を震源とする地震が発生。現在の震度階級が始まった1996年以降、県内では最大となる震度6弱を愛南町で観測するなど南予を中心に強い揺れに襲われました。
三宅記者:
「特急列車が線路上に止まっている状態です。電車の中にはまだ人が乗っている状態です」
JR四国では予讃線で列車が停止し、あわせておよそ60人の乗客が一時車内に取り残される事態に。
愛南町の寺では墓石が大きく傾いたり、崩れたりしたほか…外泊地区の石垣が崩れるなど大きな被害が出ました。
相次ぐ地震を受け、県内では住宅の耐震診断の申請をする人が急増。今年度は11月末時点で835件と熊本地震が起こった2016年度に次いで2番目に多くなっています。
宇和島市では、こんな動きも。
宇和島南中等教育学校 6年 渡部遥さん:
「被害に苦しんでいる人たちの助けになればと思って参加しました」
市内の中学生や高校生などおよそ40人が集まり、「アシスト瓦」と呼ばれる段ボールを使った簡易的な瓦を作っていました。自分たちが暮らす町で、屋根瓦が落下するなどの被害を目の当たりにした生徒たち。少しでも復旧の力になりたいと起こした行動です。
自然の猛威はほかにも。5月下旬には松山など県内8つの地点で5月の平年1か月分を超える雨を観測。
味道楽ひがき 檜垣博之代表:
「この中がわやになってしまった」
今治市の商店街にある居酒屋では、店の裏の川の水が増水し、浸水。
檜垣代表:
「床だけ全部浸かって朝から水を出して大掃除」
この大雨で、久万高原町の85歳の男性が死亡しました。
7月には梅雨前線の影響で伊予市双海町の国道で土砂崩れが発生し、一時全面通行止めに。
伊予市立おおひら保育所 宮本明美所長:
「水が出ない状態。ここは電動なんですけど」
伊予市内では上水道ポンプが停電し、こちらの保育所を含む一部の地域で断水が発生。料理ができないため、昼食は近くのこども園の調理室を借り、弁当を作るなどして対応していました。
そして、7月12日未明。松山城の城山で土砂崩れが発生。土砂が流れ込んだ民家に暮らしていた高齢の夫婦と40代の息子のあわせて3人が亡くなりました。
岡田敏明さん:
「本当に心苦しい、それに尽きる」
亡くなった一家の隣に住んでいた岡田敏明さんです。
「現実とは思えなかったというのが事実。間近でこんなことがまさか起こるとは思わなかったし、夢であってほしかった」
岡田さんの自宅も被災。長年住み続けてきた家を解体するという決断に踏み切りました。
「戻りたくはない、怖いです。仕方ないですよね、どうしようもないですよね、本当に怖くて近づけない」
土砂崩れ現場のすぐそばで30年以上にわたって日本料理店を営んできた竹田利宣さん。
辻が花 竹田さん:
「ドーンという音がしたんです。ちょうどここで見てた時にドーンという音がしたのがあの穴なんです」
およそ40日間、避難所やホテルで避難生活を送りました。
竹田さん:
「ずっと住んでいて安全なのかということですよね。それが一番不安ですね」
日常を取り戻すことができたのは3か月半後でした。流れ込んだ泥でダメになってしまった冷蔵庫の買い替えや、店内の修繕など準備を進めオープンにこぎつけました。
竹田さん:
「皆さんのおかげでなんとか開店(営業再開)することができた。ホッとした。いつもの光景が戻ってきたという感じがする。普段通りあまり無理をせず、できる限り長くできればいいかなと思っている」
この土砂崩れを巡っては現在も、愛媛大学や国交省の専門家などで構成される「技術検討委員会」が原因究明を進めています。
そして8月には、史上初めて…日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震を受け南海トラフ地震臨時情報が発表されました。夏休みを直撃した臨時情報。スーパーでは水や食料が品薄状態に。さらに宿泊施設ではキャンセルも。
兵庫からの親子:
「一応(来る前に)ハザードマップを見てきた」
「あと、地震の時必要になるかもしれないものを詰めたボトル」
そのボトルの中身は。
「折り畳みトイレと歯ブラシと非常食とチョコレートとブランケット」
しっかりと備えたうえで観光を楽しむ人の姿も見られました。
海沿いの西予市三瓶町では「人間カーリング」が目玉のひとつ。毎年恒例の「奥地の海のかーにばる」が予定通り開かれましたが…
西予市三瓶支所 山本親人さん:
「南海トラフ地震臨時情報を受けまして作成した案内看板です」
会場内の各ポイントに津波避難場所を記した防災マップを掲示したほか、来場者を高台まで誘導する手順を確認したうえでイベントを開催しました。
山本さん:
「有事の際にもきちんと誘導してお客様の安全を確保して楽しめるイベントにしていきたい」
その後も11月には松山と今治で大規模な浸水被害が発生するなど県内は毎月のように災害に見舞われました。度重なる災害で、県内でも備えの意識が広がりました。
学校現場では8月、県内の小中学校や高校の教員を対象に行われた地震対応訓練。慶応大学の大木准教授が、災害に遭遇した子どもたちがどんな行動をとったのか過去の事例から分析。それを大学生が再現することで、リアルな初動対応を体験しながら子どもたちの命を守るために何ができるかを考えました。
慶應義塾大学 大木聖子准教授:
「過去に高確率で起きていること余震は100%。それからけが人、階段から転落みたいな大きなケガでないにしても過呼吸になるとか。これは普段の学校の訓練だと起きないことになっていて」
四国中央市の学校関係者:
「絶対これはそれぞれの先生がシミュレーションし、想像して何ができて何ができないか1個1個クリアしていかないと本当の震災は耐えられない状況が想像できます」
暮らしや経済が海と密接に結びついた愛媛県。有事の際、普段とは違い観光や仕事などでたまたま海のそばにいる人をいかに守るか、という備えも進んでいます。
こちらは、初めての臨時情報で対応に戸惑ったという伊方町の佐田岬はなはな。観光客が津波から避難する新たなルートを、スタッフが実際に歩いて探していました。
佐田岬はなはな 佐々木伊津子支配人:
「津波注意報や臨時情報が出たことで、私たち自身の考え方を変えていかないといけないなというきっかけになった」
施設ではすでに3つの避難ルートを用意していますが、細い路地や土砂災害の危険箇所も多くより安全にお客を誘導するため、改めて対応を検討していました。
佐々木さん:
「常に自分たちの危機意識というものは、常にバージョンアップというか、新しく変えていかないと追いついていかない状況がこれから来るのかなと思っている」
同じく海沿いに立つ観光施設、愛南町のゆらり内海をきのう訪れると…下駄箱やお風呂に入る受付カウンターなど。至る所に津波の避難場所を記したマップが貼られていました。
ゆらり内海 深堀毅支配人:
「柏小学校の児童が作ってくれたもの」
8月、地区の小学校に通う児童が防災教育の一環で作った地図。観光客の目の届きやすい場所に貼られています。
深堀支配人:
「こういう施設はいろんなお客さんが来られるということで、もしも地震があった時にこういう分かりやすいマップがあれば非常にいいんじゃないか」
専門家もこうした不特定多数の人が集まる観光施設で、事前に情報を共有しておくことの重要性を訴えます。
東北大学 今村文彦教授:
「突然の(災害)、また多数の方がいる場合誘導というのは極めて難しいが、事前にハザードマップまたは看板、来ていただく時に目につくような情報提供をできるだけやっておく。そういう人たちに自主的に避難行動などをとってもらうような方法をする」
防災マップを作った児童たちは。
6年 末廣文乃さん:
「防災マップづくりをしているときに、こういうポスターを作ったらいいんじゃないかなとみんなで考えて。文字を大きくしたりもっとわかりやすくしたりして工夫をした」
より分かりやすく、より命を救えるよう、アイディアを出し合いブラッシュアップを図っています。
南海トラフ巨大地震の発生がより現実味を帯びた2024年。未来の被害を減らそうという子どもたちの備えが着実に進んでいます。