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温暖化で“天然マダイ”が年中獲れるように!?島自慢の魚を全国へ!苦境つづく漁師まちの生き残りをかけた挑戦

2023年11月14日 19:13
温暖化で“天然マダイ”が年中獲れるように!?島自慢の魚を全国へ!苦境つづく漁師まちの生き残りをかけた挑戦
2023年1月に宮窪の天然マダイをブランド化

愛媛県今治市沖の大島で、自慢の島の魚を売り込もうと奮闘する人たちがいます。愛媛で、全国で、食べてもらいたい!漁師まちの生き残りをかけた挑戦に、チューモク!です。

千年松 料理統括 上野淳さん:
「宮窪町のタイになります」

この日水揚げされた、天然マダイ。

千年松 矢野真弓女将:
「お子様の100日のお祝いでおめでたいお席でございます」

今治市の大島周辺で獲れる魚介をふんだんに使った料理が人気のこちらの旅館。島の魚料理を求めて、関東や関西からのリピーターも多いといいます。

上野さん:
「エビがエサの主流、それをたくさん食べているタイなので、色が赤くて綺麗です」

「魚が売れない」コロナ禍で船を降りていった若い漁師たち…燃料代高騰で続く苦境

どんな環境で育っているのか。

県漁業協同組合宮窪支所 関洋二運営委員長:
「長年の経験で大体この辺に魚がおるということを知っておかないと簡単には獲れない」

今治市大島の東側に位置する宮窪町の沖合は船が折れるほど潮の流れがある“船折瀬戸”と呼ばれ、この潮流で身の引き締まった魚が獲れる漁場として知られています。

その一方で、ここ数年、漁師たちを取り巻く環境は荒波の連続でした。

漁師:
「なんとかコロナ禍を乗り切った感じなんですけど、厳しい状況です。船の燃料代も昔に比べたら2倍くらい上がった」

コロナ禍で、飲食店などからの注文が入らず魚が売れない。担い手として将来を期待していた20代、30代の若い漁師が、次々と船をおりていきました。

さらに、追い打ちをかけるように襲ったのが、燃料代の高騰です。この3年ほどで、2倍近く値上がりしました。

漁師の出張セリ市!市場さながらの販売スタイルが人気に

この荒波に立ち向かおうと、宮窪の漁師たちが始めた生き残り策が…

2022年、今治市で始まった「せとうちみなとマルシェ」。月に2度、瀬戸内の新鮮な魚や野菜、キッチンカーなど、あわせて100店舗近くが集まるマルシェです。

その会場に…

漁師:
「はい、セリやるよー!」

宮窪の漁師による“出張漁師市”です。その日水揚げした新鮮な魚を今治港まで直送!来場客を対象に、市場さながらのセリ形式で魚を販売するなど、今ではマルシェの目玉となっています。

購入した男性:
「いっぱい買いました。鯛とメバルとカワハギ、車えびとアコウも」

県漁業協同組合宮窪支所 関洋二運営委員長:
「なんとか皆さんが魚を食べてくれて漁師さんがちょっとでも儲かるようになったらありがたい」

年中獲れるようになった“天然マダイ”をブランド化 都市部への販路拡大へ

県漁協 宮窪支所が今、特に力を入れている魚があります。

漁師歴17年の藤本英治さん。藤本さんがこの日狙っているもの、その魚なんだそう。

宮窪の漁師 藤本英治さん:
「良かったです、この一番」

と、藤本さんが見せてくれたのは、タイです!

関委員長:
「天然のマダイが年中獲れる。私らが若い頃は寒くなったらとれるのが珍しかった」

温暖化の影響からなのか、ワタリガニやイカの漁獲量が減少する一方で、ここ10年ほどマダイが一年を通して獲れるようになったといいます。

関委員長:
「なんとか漁師さんに100円でも200円でも高値で買えるよう、東京がなんでも中心やから東京しかないと思って」

2023年1月に宮窪の天然マダイをブランド化。

最大18キロ、10ノットの速さで流れる宮窪の潮流にもまれて育ったタイ!ということで「10kt真鯛」と名付けました。

東京の百貨店が運営するスーパへの売り込みなど、都市部での販路拡大を目指しています。

宮窪の魚をあの手この手で売り出そうと奮闘するPR隊長、関さんの姿に、漁協内の雰囲気にも変化が。

県漁業協同組合宮窪支所 高瀬あけみ女性部部長:
「関さんが多方面のお付き合いをしっかりしてくれているので結束力がどんどん強くなっています」

この日、婦人部の人たちは市内のイベントで販売する宮窪のサザエやタコが入った炊き込みご飯づくりの真っ最中。

さらに、こちらでは…鍋の仕込み作業です。

関委員長:
「これ鍋つゆの具材。ハモ」

宮窪の天然マダイが鍋つゆに!日本食研の鮮魚の鍋つゆで一番の売れ行き

この鍋に、今売り出し中の、宮窪のタイも使っているそうですが。そのタイ、どこに使っているかというと…

日本食研の社員:
「宮窪漁協がとったタイから抽出したエキスを使用している」

この鍋つゆの原料に、宮窪の天然マダイから抽出したエキスが使われているんです。

この鍋つゆ、2022年5月に今治市に本社を置く日本食研が村上海賊をテーマに開発しました。

日本食研の社員:
「ものすごい売れてて、生産が追い付かないくらい売れています。今までの日本食研の中で鮮魚の鍋では一番いいです」

試食した人たちは。

「おいしいです。ダシがすごいきいて」

「おいしいです」
「地域活性になっていると思うので、すばらしい取り組みだなと思います」

「これからどんどん買って焼き魚にしてもいいし、お鍋にしてもいいし、バリエーションが豊富になって悩んでしまいます」

イベント会場では、鍋つゆをはじめ、婦人部手作りの魚介入りの炊き込みごはんも売れていきます。

関委員長:
「コロナ禍で、組合員がひとり減りふたり減りと減っていった中、できたらこういう魚がどんどん値段が上がって、若い漁師さんがひとりでもふたりでも増えることを願っています」

今後も続く大海原への挑戦にチューモクです!