【大井川鉄道】台風被害から1年半…全線復旧への道は開くのか? “SLが消えた町”の絶望…県の支援方針が待たれる状況を専門家はどう見る?(every.しずおか 2024年3月7日放送)
SLやトーマス号を目当てに、多くの観光客が訪れる「大井川鉄道」。しかし、2022年9月の台風による被害で、1年半たった今でも、全体の半分の区間が運休のまま。再開のめどすら立っていません。
そんな中、県による支援について、3月中に方向性が示されることになっていて、それ次第では、大井川鉄道の未来が大きく変わってしまいます。
全線復旧への道は開くのか?被災から1年半、県による支援を待ちわびる大井川鉄道と沿線の今を取材しました。
2022年9月、台風15号の“記録的な大雨”により、40キロある本線のすべての区間で一時運休するほど甚大な被害を受け、1年半たった今でも半分の区間が運休のまま。復旧には約22億円が必要ですが、コロナ禍以降、赤字が続く中で、この費用を自力で捻出することはできず、未だ復旧のめどすら立っていません。
(大井川鉄道 鈴木肇社長)
「(今は)自らができるだけのことを一生懸命やるしかない」
いまの大井川鉄道は、再開した半分の区間だけで経営を維持することしか、道が無いのが現状です。
また、列車の運行本数が減る中、会社存続のため、運転士や車掌などが鉄道とは直接関係ない業務につかざるを得ません。
「SLお兄さん・SLお姉さん」の愛称で親しまれ、ハーモニカやトークで車内を楽しませてきた大井川鉄道名物の“専務車掌”も活躍の場を奪われることに…
大井川鉄道 久保川真守さん(4年前)
「正直自分では天職だと思っています」
4年前の初乗車の時、こう語っていた久保川さんですが、いま、その姿は列車内ではなく、大井川鉄道が運営する川根温泉ホテルにありました。
(大井川鉄道 川根温泉ホテル 久保川真守さん)
「(慣れるまで)3か月くらいはかかりましたね、初めてのことばかりで」
2023年4月から、このホテルのフロントで宿泊客の受付などを行っているのです。
同じく「SLお姉さん」として活躍していた上村さんも、2023年12月から、久保川さんと共にフロント業務を行っています。
(大井川鉄道 川根温泉ホテル 久保川真守さん)
「突然でしたね、まさかこんなことになってしまうとは。そういったことをやりたくて入社したので、お客様から『すごくよかったよ』とか『ハーモニカ素敵でした』というありがたい声をいただいて、それがやりがいになっていました」
不本意な形で、天職だと思っていた仕事から外れてしまい、配置転換を命じられたときは、会社を辞めることも考えたといいます。
(大井川鉄道 川根温泉ホテル 上村詩恵さん)
「コロナだったり台風の影響で大井川鉄道全体にも暗い雰囲気が流れていた中で、転職しようかなと考えていた時期がありました」
台風被害による大井川鉄道の不通は、多くの社員たちの人生も、大きく変えてしまっているのです。
大井川鉄道の列車が走らなくなったことで影響を受けているのは、社員だけではありません。SLの終点駅だった千頭も、不通により“SLが消えた町”となり、飲食店や宿泊施設は大きなダメージを受けています。
(cafeうえまる 上田まり子さん)
「鉄道ファンの方で、沿線沿いで写真を撮る方、駅でSLの到着を待つ方などがいた。相当経済効果があったので、地元の商店・飲食店・旅館にも影響がある」
営業中に聞こえてくるSLの汽笛の音が楽しみだったといいます。
(cafeうえまる 上田まり子さん)
「(SLが来ると)蒸気が白く見えて、汽笛が聞こえます。ずっと聞こえていないので寂しいですね。(復旧が)先に進んでいかないので、国・県・町・大井川鉄道の方にSLが千頭まで通るようにしてほしい」
多くの人が全線復旧を心待ちにしながらも、そのめどすら立たたないまま、1年半。ようやく、大きな動きがありそうです。
大井川鉄道から支援の要請を受け協議を続けてきた県が、3月中に支援について方針を示すと発表したのです。
支援はされるのか?されないのか?大井川鉄道、そして沿線の未来は?
航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さんに、専門家の視点で大井川鉄道復活への道、そのポイントを聞きます。
◇大井川鉄道の社員の方(運転士さんや車掌さん)が、鉄道業務とは異なる業務に配置転換をされているというのは、かなり深刻です・・
(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)
コロナが明けてきて、平常通りになってきた中で、災害ということで、いつ再開するか、めどがつかないという不安が、従業員の方にはあるのではないか。
◇3月中に県による行政支援の一定の方針が示される予定です。自力での復旧が不可能な中で、支援は受けられそうですか?
(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)
普通のローカル鉄道を災害から戻す場合は、生活の足、市民の足という大義があるが、大井川鉄道は観光に特化している。生活密着路線ではないなかで、観光資源に対して自治体が支援をするというのは、全国でモデルケースがない。どうなっていくのか注目です。
◇静岡県にとって“大井川鉄道”というのは、無くてはならない存在だと思います・・
(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)
一企業を救うということではなく、大井川鉄道を中心とした観光の活性化という、静岡県の観光の柱となってくる。トーマスがあるから乗ってみよう、SLに乗ってみようとなってきますので、これが静岡県の財産として、また、近くの静岡空港との連携も含めて、魅力を出していくということが大事になる。
◇支援が決まった場合はどのような流れに?
(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)
静岡の観光ですから、国というより県がどういうプロセスを出していくかによって、方向性や開通時期が出てくると思います。
◇行政支援がない場合は?
(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)
(再開した)半分の路線で黒字が出せなければ、無くなってしまうというのが最悪のケース。関連の観光、宿泊施設なども含めた影響も考えなければならないと思います。
(静岡第一テレビ every.しずおか 2024年3月7日放送)