×

【石垣いちご】「甘くて最高!!」“伝統を未来につなげたい” 100年以上の歴史 “老舗いちご農園”を継いだ男性に密着(every.しずおか特集)

2024年2月7日 13:56
【石垣いちご】「甘くて最高!!」“伝統を未来につなげたい”  100年以上の歴史 “老舗いちご農園”を継いだ男性に密着(every.しずおか特集)

いまが旬!真っ赤に実ったイチゴ「章姫」。大粒で糖度が高く、酸味が少ないのが特徴です。

「石垣いちご」で有名な静岡市久能では、この時期「イチゴ狩り」を楽しむ観光客で賑わいます。100年以上の歴史がある「石垣いちご」ですが、近年は、高齢化や後継者不足などで、農家の数は最盛期だった1960年代に比べ半分以下に。

「石垣いちご」の伝統を継承したいと、5年前、実家のイチゴ農園を継ぐことを決めた、西澤郁さん33歳。老舗いちご農園を継いだ西澤さんの思いと「石垣いちご」ができるまでに密着しました。

標高1000mでの“高冷地栽培” 手間暇かけるのがおいしいイチゴ作りのコツ!

今シーズンのイチゴの栽培が始まったのは、2023年6月。西澤さんの姿は、イチゴのハウスがある静岡市久能から、約50キロ離れた山の中にありました。一体、なぜなのでしょうか?

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「標高1000m以上にある畑になる。高冷地栽培で丈夫な苗が育ちやすいということで、こちらで育てている」

生育の過程で病気になるリスクも高い「イチゴ」。高冷地で栽培することで、苗を病気から守ることができるほか、収穫時期を早める効果があるといいます。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「6月の梅雨の時季は3日に1回くらいくる。7~8月にはやることが増えてくるので、1日おきの間隔でくる」

負担が大きいため、高冷地栽培を行う農家は今ではほとんどいませんが、西澤さんは、車で往復4時間をかけ、より気温の低い静岡市の井川で苗を育てます。また、イチゴの栽培は、親株の苗植えから始まり、その後、親株から伸びてくるツルを切り離し、子株を作ることで、苗の数を何十倍にも、増やしていくのです。

苗植えから約3か月。再び井川の畑を訪ねてみると、苗は畑いっぱいに数を増やしていました。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「育て始めた時は500本くらいからスタートしたが、今は2万本になった」

酷暑の夏でしたが、高冷地で苗を育てたことで、大きな影響はなかったといいます。それでも、油断はできません。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「一回根を上げて植え替えるのは、イチゴにとってストレスがかかる。そこで病気になることがありえる。10月も暑いし、気が抜けない」

それから数日後、井川で育てた約2万本の苗を久能の石垣へ植え替えます。

山の斜面を利用した独特な石垣栽培

石垣での栽培は、平地での栽培に比べ、重労働にはなるものの、山の斜面を利用し、全てのイチゴに日光があたり、石垣に熱が蓄積されるため、夜間も根を冷やすことなく育てることができるメリットがあります。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「根付かないとイチゴの苗が成長しない。そのままダメになる苗もあるので、水かけなどの管理は大変」

イチゴの実ができ始めた11月、イチゴ狩りのシーズンに向け、ハウスにビニールを張る時期がやってきました。家族総出で力を合わせ、1週間かけて80棟のビニールハウスを完成させました。

高齢化や後継者不足も深刻

着々とイチゴ狩りの準備が進む一方で、こんな現実も…。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「年々周りの農家たちがやめていって、どんどん雑木林になってしまう。雑草の種が舞ってきて、自分の畑も雑草だらけになってしまう」

駿河湾に面した「いちご海岸通り」には、かつては「いちご娘」が並ぶなど活気がありましたが、イチゴ農家は徐々に数を減らして、現在は最盛期だった1960年代に比べ半分以下に。後継者不足も深刻になっています。

一方、西澤さんの実家は、久能で100年以上続く老舗「サクザ農園」。西澤さんも大学卒業後、一度は県内の住宅メーカーに就職し、会社員として働いていましたが、5年前、実家に戻り、イチゴ農園を継ぐことを決意しました。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「祖父には『継いでほしい』とよく言われていたんですけど、最初は大変だから継ぐのはやめた。“石垣いちご”自体は人気がなくなっているわけではなかったので、“盛り上げたい”って気持ちはありました」

「甘くて最高」全国からファンがイチゴ狩りに!

年が明け、本格的なイチゴ狩りのシーズンがやってきました。ハウスに入ると…大きな「章姫」が実っていました。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「ことしはすごくいい。夏が暑かったので、イチゴがどうなってしまうか心配したが、年末からいいタイミングで気温が下がったおかげで、いいものができた。大きさが良く糖度が高くて、おいしい状態になっている」

西澤さんの「サクザ農園」には、この時期を待ちに待ったお客さんが全国からやってきます。ハウスに案内されると、お客さんたちが次々とイチゴを口に運んでいきます。

(お客さん)
「甘くておいしい!」
「毎年来る、14、5年以上来ています。おいしい」

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「どうですか。イチゴ足りていますか?」

西澤さんも、お客さんの対応やイチゴの管理に動き回ります。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「顔を直接見てイチゴを食べてもらえる。おいしそうな顔を見られるのが一番うれしい」

「石垣いちご」を未来へ!新たな可能性を模索中

西澤さんは、今後「石垣いちご」の魅力を高めるため、加工品の開発や新しい販路拡大にも取り組んでいきたいといいます。

(サクザ農園 西澤 郁 さん)
「自分の中では農業という仕事が合ってるし、やりがいを感じている。自分たち若い人たちがこの味を受け継いで、久能の地域自体を盛り上げていければ」

(静岡第一テレビ every.しずおか  2024年1月30日放送)