【車いすの女子高生が挑む】真のバリアフリーを目指して! 社会を変える挑戦ー多様性と笑顔のイベント(every.しずおか特集)
掛川市で行われた夏まつりで人気となっていたキャラクターグッズ。描いたのは掛川市の高校2年生。
(市民)
「ふわふわしていて、見ているだけで心が柔らかくなるような気がする」
実は彼女、手足の力が弱くなる難病で、幼いころから車いす生活。しかし、元気や笑顔は誰にも負けず、とってもポジティブ!そんな彼女が、2023年夏、あるイベントを開催しました。みんなが優しい気持ちで生きられる世界を!笑顔が絶えない車いすの女子高生の、ある挑戦を追いました。
掛川市にある「駄菓子屋 横さんち」 この店の一角で販売されているキャラクターグッズ。その見た目は動物?妖怪?ポップで個性的なキャラクターたち。その名も「カラフルスライムズ」です。
描いたのは佐野夢果さんです。夢果さんは、手足の筋力が弱くなっていますが、スマートフォンのアプリを使い、指先を器用に動かしてキャラクターを描いていきます。
全てうまくいくスペシャルポジティブの「ぐう」、楽しいこと大好きな「キラくん」など、12種類あるすべてのキャラクターに名前と性格の設定があります。
(夢果さん)
「こんな人周りにいるなとか、そこから多様性を感じてもらえたらうれしい」
この個性的なかわいさが人気を呼び、2023年からジュビロ磐田のオリジナルギフトに採用されるなど、注目度が増しているのです。
夢果さんは現在、地元の掛川東高校に通っています。学校では補助員に教科書の出し入れなどをサポートしてもらいながら生活しています。
性格は小さなころから好奇心旺盛。チャレンジすることが大好きです。
(夢果さん)
「両親が小さなころから病気がわかった後もですけど、なんでもやってみようと、山登りとかいろいろ挑戦させてくれて、そういうのが今も生きていると思う」
いつもとっても明るい夢果さんですが、高校受験の時にある壁にぶち当たりました。
(夢果さん)
「周りが部活これいいよね、制服がかわいいからここにしようと高校受験の話をしている中で、自分はエレベーターとか、そういうことでしか高校を選べない。障害があるだけでこんなに社会って選択肢が少ないのかって、社会から受け入れられていないなと感じた。この先もし障害があって生まれた子がいたら、これ以上こんな思いをする人がいてはだめだと、自分の中でギアがかかった」
障害や性別などを超え、様々な個性を受け入れる、多様性が当たり前の社会を実現したい!そんな思いが「カラフルスライムズ」には込められているのです。
そして夢果さんはこの夏、あるイベントを計画していました。それは、50人以上の参加者を集めて行う「車いすスポーツゴミ拾い大会」。
(夢果さん)
「4人1組のチームになってそのうちの一人が車いすに乗って、街のゴミを拾ったりだとか。バリアやバリアフリーを探すといった楽しいスポーツになっています」
この計画は、掛川市の「高校生チャレンジ企画」に採用され、市が全面的にバックアップ。さらに、カラフルスライムズの販売をしてくれている駄菓子屋「横さんち」も、当日の運営などで支援してくれることになりました。
このイベントは、ゴミ拾いも目的の一つではありますが、真の狙いは、車いすを体験してもらい、普段は気づかない身近なところにある課題に気づいてもらいたいというもの。そこで、8つのチャレンジミッションを組み込みました。
(夢果さん)
「車いすに乗って駄菓子屋横さんちで駄菓子を買おうとか。ユニバーサルトイレを探そうとか、スロープを車いすでのぼってみようとか、いろいろな気づきが生まれるミッションを組み込みました」
そして迎えたイベント当日
(夢果さん)
「ありがとう。よろしくお願いします」
夢果さん、とびっきりの笑顔でみんなに声をかけて回ります。イベントには子どもから大人まで13チーム60人が参加しました。競技時間は1時間、1チーム4人で、交代で車いすに乗りながら掛川駅周辺のゴミを拾います。車いすに乗りながらゴミをとるのは一苦労・・
(参加者)
Q:乗り心地はどう?
「あんまりよくない ゴトゴトする」「ここ危ない、気を付けてね」
普段は気にも留めなかったことが、車いすに乗ることで、とても大きなコトに感じられます。気付いたことはシートに記入していきます。
(参加者)
「普段自分が歩いていて気にしていない段差でも気になった」
こちらのチームは”スロープを使おう”というミッションにチャレンジ。上まで上ることはなんとかできましたが・・
(参加者)
「坂はバックで下りるんじゃない」「めちゃ怖い、後ろに下がるときは怖い」「これは大変だよ」
補助する人がいても一苦労。もし1人で上り下りするとなれば、かなり大変そうです。
今回、車いすに乗って様々なミッションをこなす中で、いつもと違う世界が見えてきたようです。
(参加者)
「押してもらっている人との意思疎通。お互いへの気遣い、心遣いも必要になるんだなって」
一方、みんなの帰りを待つ夢果さん。終了時間が近づくと、いてもたってもいられず、参加者を出迎えに外に出ます。
(夢果さん)
「お帰りなさい」
(参加者)
「ちょっとの段差で引っかかっちゃうね」
(夢果さん)
「楽しんでいただけましたか?」
(参加者)
「楽しんだ!」
「大冒険だったよねほんとに。10メートル進むのも大変でした」
それぞれのシートには気づいたことがびっしり。苦労して拾ったゴミもたくさん集まりました。
(夢果さん)
「段差があっても、それを声をかけて助けてくれる人がいれば、その段差はバリアではなくなります。気づきから生まれる行動が、きっと社会をいい方向に動かしていくと思います」
イベントを通して参加者に“やさしい気持ち”がいっぱい生まれたようで、たくさんの笑顔に包まれイベントは大成功!
(夢果さん)
「きょう皆さんが生み出した気づきが、もっといろいろな人に伝わって、広がっていけばと思います」
(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年9月11日放送)