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「うなぎ養殖」で新潟に貢献したい 新たな異業種に参入 はんこ会社の挑戦 《新潟》

2024年2月25日 7:50
「うなぎ養殖」で新潟に貢献したい 新たな異業種に参入 はんこ会社の挑戦 《新潟》

ウィスキー、パン、うどん。これらは全て新潟市江南区に本社のある「はんこの大谷」が運営する異業種。今回また1つ新規事業がスタートすることになりました。
その理由は・・・。

ウィスキー、パン、うどん。そして…

新潟市江南区に本社・工場がある大谷。大型印章専門店「はんこの大谷」として知られる業界最大手の印章製造の企業ですが、ここ数年で様々な事業にチャレンジしています。
2019年、ウィスキー製造から始まり 2020年にはパンの製造・販売そして2023年にはうどん店もスタートさせています。

印章製造会社がうなぎ養殖へ

新潟市江南区の工業団地にある「はんこの大谷」本社。ここで、これから始まる新規事業、それは「うなぎの養殖」です。

はんこの大谷 堂田浩之さん
「ここが養鰻場になります。こちらにあるのが、うなぎが養殖される“いけす”になります。最大で年間3万匹を飼育できます」

こう話すのは、大谷の堂田浩之さん。大谷が運営するウィスキー製造・新潟亀田蒸溜所の運営を主に担っています。

なぜ「うなぎを養殖」なのか

うなぎの養殖業に参入する経緯について、堂田浩之さんに伺うと。

はんこの大谷 堂田浩之さん
「新潟で新しいことができないだろうかっていうことは社長を含めて常日頃考えている中で、はんこ店の隣でウィスキーを今作っていますけれども、ウィスキーの蒸留で出る蒸留排熱が有効活用できないかなというのが一番のきっかけです」

活用が難しい”熱”だった

はんこの大谷 堂田浩之さん
「実はウィスキーの蒸留で出てくる排熱というのはいわゆる中温帯と言われていて60度から80度ぐらいのお湯です。このお湯を利活用するのって結構難しいっていう風に言われていて、どんな形でこの中温帯の湯を使えるだろうと考えた時に養殖というキーワードが浮かんできたということです 」

捨てる温水の熱を利用

ウィスキーの原料を蒸留するために使う温水は1日で5トン。何もしなければこの温水はただ捨てるだけになってしまいます。しかし、この温水の熱を使えば、うなぎ養殖に必要な30度の水温を保てるため、捨てるはずの熱を再利用することができます。

”熱”を確保できるのが一番のメリット

はんこの大谷 堂田浩之さん
「寒いところで、うなぎの養殖をするにあたって一番の問題は熱源の確保です。その熱源が我々にはあると。何か他よりもアドバンテージがあるものでやらないと成功は難しいなと。なので今回のうなぎ養殖に関しては一番コストのかかる熱源が確保できるというところが自分たちにとっては一番メリットかなと思っています」

弱いうなぎを買い、元気に育てる

他にもこんな特徴が。

はんこの大谷 堂田浩之さん
「強いうなぎもいれば弱いうなぎもいるので、弱いうなぎはなかなか育ちが悪いということで大きな養鰻場では「すそ切り(成長が遅い稚魚を選別して廃棄・放流)」という行為をします。我々は「すそ切り」された弱いうなぎを買ってきまして、黒い配管が酸素発生装置になっていますけど、ここで大量の酸素を発生させて、弱いうなぎを元気にして飼育していく養殖方法を考えています」

1キロ数百万円とも言われるシラスウナギの取引価格。そこにコストを割くのではなく、捨てられてしまうはずの稚魚を引き取り、最適な環境で育てるという新しい形を目指します。

エサは麦芽カスを使用

また餌にはウィスキー作りで発生する麦芽のカスを再利用。タンパク質が豊富に入っているので良質なうなぎに成長するだろうと話します。

さらに、うなぎの成長に必要な環境はその大半をコンピューターで一括管理。水質水温やペーハー値など常に最適な状態を保てるような環境が整っていました。

はんこの大谷 堂田浩之さん
「新しいこと始めますから、リスクは十分あるかと思います。ただリスクばかりを考えていても新しいことはできないですし、おいしいうなぎ作るためのノウハウもこれから蓄積していかなくてはというのが課題だと思います」

飲食店「おいしければ使いたい」

新潟市中央区の老舗料理店「一〆」。うなぎを多く扱う店も今回の新規事業に期待をしていました。

一〆 中込健太郎さん
「僕も先日お話をお伺いした時に大谷さんがウィスキー製造に参入されて賞も取ったりとか、そういったノウハウがあるのでしょうから、うなぎもすごくおいしいものを作ってもらうのを期待しています。僕も食べてみたいですし、おいしければ是非使いたいですね」

“国産うなぎ”に期待

飲食店が求めているのは味や安全性そして安定した供給です。過去10年を見てみると、国内の生産量はほぼ横ばい。一方、輸入量を見てみると多い時には国産の2倍にのぼることも。外国産のうなぎが多く市場に出回っている日本のうなぎ業界。国産うなぎにこだわっている料理店だから こそ、今回の養殖への参入に注目していると中込さんは話します。

一〆 中込健太郎さん
「国産うなぎがとても減っている状況の中で、国産としてうなぎを成長させてもらうのはすごく期待しております。新潟は水も良いですから、そういう意味では”新潟産”というところに全国から注目されるかもしれないです」

「新潟に貢献したい」

うなぎの養殖。今後の展開について聞いてみると。

はんこの大谷 堂田浩之さん
「例えば、ふるさと納税ですとか、そういった形で少しでも新潟に貢献できるような取り組みもしたいと思っていますし、地元の食材として地元の飲食店さんには是非使っていただけるように本当に料理人さんたちに満足いただけるような品質のものを作り上げていかなきゃいけないって思っています」


2024年2月21日「夕方ワイド新潟一番」放送より