【特集】コメの“価格高騰”と“争奪戦”はいつまで続くのか 価格は去年の2倍近く 「問い合わせ相次ぐ」困惑するコメ農家 《新潟》

一面に広がった雪を前に、今年のコメ作りに思いをめぐらせます
コメ農家・櫻井源喜さん
「この辺、雪で埋もれているんですけれど、 田んぼです」
長岡市のコメ農家の9代目・櫻井源喜さん。300年以上、この地でコメ作りを続けてきました。
この冬は例年になく、田んぼに雪が積もりました。
コメ農家・櫻井源喜さん
「春が遅れるってことは収穫も遅れるので、去年の7月8月みたいに米不足になったら出すお米がない。そこをつなぐお米がなくなってしまうのが一番怖いですよね」
雪とともに心配なのが。
去年夏に全国を襲ったコメ不足です。
「令和のコメ騒動」とも呼ばれ、県内のスーパーでも一時、品薄の状態となりました。
その影響は櫻井さんのもとにも。
コメ農家・櫻井源喜さん
「例年よりも圧倒的に早く出ているので、おそらく春先にはなくなってしまいそうだなっていう感じですね。去年からのコメ不足と言われるコメ騒動の影響だと思います」
約24ヘクタールの田んぼでコメを作る櫻井さん。
JAのほか、一部のコメはインターネットなどを通じて個人販売も行っています。
飲食店などに販売する「業務用米」については、例年の4倍近い問い合わせが来ているといいます。
コメ農家・櫻井源喜さん
「嬉しい反面、農家が作付けできる面積、1軒あたりが作付けできる面積って決まっているので、取れ高も大体予想はつくので、 それに全てお応えできるかっていったら難しいと思うので」
この日は新たに契約を結ぶ予定の卸売業者とオンラインでの商談です。
卸売業者は去年夏に、コメを求めて兵庫県から櫻井さんのもとを訪れたといいます。
コメ農家・櫻井源喜さん
「本当は6年産から欲しいと言われていたんですけど、夏となると契約も決まっているのが大半なので『難しいですよ』って話をして、令和7年に向けて話し合いを続けていきましょうっていう形になりました」
櫻井さんとの商談に臨んだ兵庫県の卸売業者に、コメを取り巻く今の状況を聞きました。
コメの卸売業者・森岡佑介さん
「去年、コメ騒動になっているから、農家さんがどういう考えかわからないですけど、正直走り回らないとゲットできなかったところもありますので、お米の値段も上がっていますし。今年は去年よりかは走り回ったのは確かですね」
主に業務用米を取り扱っていて、仕入れに向けて全国を飛び回っているといいます。
収まる気配をみせないコメの争奪戦。
早くも、ことしのコメ作りの出来を気にしていました。
<コメの卸売業者・森岡佑介さん>
「米がどれだけ収量が獲れてくるのかなってのが正直な不安です。僕は販売のプロなんで、お米を作るプロにしっかりお願いして、今後付き合っていける方を探していきたいなっていう感じですね」
こちらは農林水産省が公表している卸売り業者などに販売される主食用米の価格の推移です。
新米が出回り始める去年9月から急激に上がり、ことし1月の全銘柄の平均は玄米60キロあたり2万5927円。
1年前のおよそ1.7倍となりました。
小売店でも高止まりが続いていて、5キロ当たりの価格は3939円。
去年と比べて約2倍に上昇しています。
コメの価格が上がれば農家の収入が増えますが、コメ離れが進まないか?櫻井さんは不安も口にします。
コメ農家・櫻井源喜さん
「現状僕は(コメの価格が)上がり過ぎていると思っているので、高くなって消費されなかったら困るのは農家なので、それこそ適正価格をしっかりと出していただきたいと思いますね」
こうしたなか、県はコメの生産を見直し、増産に舵を切ります。
ことしの生産目標を去年の実績より多い56万2400トンに設定。
飼料用米や備蓄米の一部を主食用米に転換し、2400ヘクタール増やす方針です。
しかし、課題となっているのが担い手不足です。県内の農家の数は、2020年時点でおよそ6万2000軒。
2005年から6割程度に減少しています。
コメ作りを巡っては新たな動きが・・
大手米菓メーカーの「亀田製菓」がコメの生産に名乗りを上げたのです。
亀田製菓 購買部・五十嵐晃部長
「2040年には明らかに需要と供給が逆転してしまう。 我々お米を主原料とする企業がそれを黙ってみているわけにはいかないでしょうということで、我々も米作りに参加するのが企業の責任だろうということで今回こういったことを考えました」
亀田製菓は地元の農家と「合同会社ナイスライスファーム」を設立。
主食用米の供給のほか、米菓の原料となる加工用米の調達につなげる狙いです。
亀田製菓と手を組んだ阿賀野市のコメ農家で合同会社の代表を務める斎藤毅さん。
合同会社ナイスライスファーム・斎藤毅代表
「3月に入ったらこの雪がなくなって、田んぼ乾き始めたら今度あぜ塗りとか、種もみの準備に入ります」
合同会社として、ことしは約28ヘクタールでコメを栽培し、150トン弱の収穫を見込んでいます。
じつは、斎藤さんも高齢となりコメ作りの現場から離れようと考えていたひとりでした。
合同会社ナイスライスファーム・斎藤毅代表
「課題は後継者不足。あと資材高騰、農機具も高騰していますし、そうするともう個人じゃ大体対応できないですよ。誰かがやらなきゃいけないわけですから、それに対して仲間と力を合わせて頑張るだけです」
私たちの食卓に欠かせないコメをめぐって加速する様々な動き。
そのうちの一つが、政府による備蓄米の放出です。3月10日から入札を行い、3月下旬から4月にかけて店頭などに出回る見通しです。
長岡市のコメ農家・櫻井源喜さん。備蓄米の放出は、政府が1年以内に同じ量を買い戻すことが条件のひとつになっているため、櫻井さんは、効果は限定的だとみています。
コメ農家・櫻井源喜さん
「令和7年産で返却しないといけないんですよ。 ってことは令和7年産の前借でしかないので、根本的な改善にはならないのかなと思いますね」
「思いは農業を始めてから変わらず、安心安全、美味しいを安定的にお届けしたいという気持ちですね」
令和のコメ騒動はいつまで続くのか。雪どけとともに、新潟のことしのコメ作りが始まります。
2025年3月5日「夕方ワイド新潟一番」放送より