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【特集】驚きの住宅 斜めの家 再生・活用するプロジェクトが始まる どんな家なのか《新潟》

2024年5月5日 20:44
【特集】驚きの住宅 斜めの家 再生・活用するプロジェクトが始まる どんな家なのか《新潟》

上越市で、ある空き家を再生活用する取り組みが行われています。その家はかなり変わった家です。どんな家なのか取材しました。

「斜めの家」

再生プロジェクトが行われている家は上越市の春日山の近くに立っています。

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「『斜めの家』と呼ばれているんです」

異端の建築家とか狂気の建築家と呼ばれた渡邊洋治さんという建築家が最後に実現した住宅作品です。

渡邊洋治さんとは

渡邊さんは直江津出身の建築家。

世界的な近代建築の巨匠ル・コルビジェに学んだ先生の研究室で助手を務めた後、独立。独創的なデザインの建物を数々設計し、海外でも 知られた方なんです。

空き家だった「斜めの家」

「斜めの家」は1976年にできた住宅です。

ここ10年以上、空き家になっていました。

「この建物を広く見てもらいたい」

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「この建物の所有者さんは渡邊洋治さんの姪にあたる方で、この建物を広く見て欲しいと考えられて、泊まって学べる名住宅という形で この建物や渡邊洋治さんの設計の精神について、泊まることを通して学んでいただく建物として使っていこうと思っています」

再生が始まる

再生プロジェクトの代表を務める中野さん、上越妙駅西口のコンテナ商店街「フルサット」 など設計した建築家。

「斜めの家」は近代建築の歴史において重要な建物ととらえています。

去年、クラウドファンディングで補修費用を募り、再生活用する取り組みを進めてきました。

どんな内部なのか

斜めの家はどんな建物なのか、中野さんに案内していただきました。

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「見ていただくと廊下がスロープになっております。このスロープで2階まで行けるようになっているんです」

このスロープの傾斜が特徴に

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「このスロープの傾斜が建物の外に現れて、斜めの家の特徴になっています」

すべての窓に4つの建具がある

注目すべきところは家の形だけではありません。

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「ここは居間です。このように 南側のお庭を見る大きな窓がこの部屋の特徴になっています。窓には4つの建具が入っていまして、一番外は雨戸になっているんですね。雨戸の次は、ガラスの入った框戸で、その内側に今で言えば網戸に当たる風が通る建具があります。一番最後が障子戸。この作りは「斜めの家」の他の窓も全部このようになっております」

小窓の役割

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「こちらの方を見ていただくと、大きな窓の他に小窓が見えると思うんですけど、これが採光であったり、通風の役割も果しております。


台所と茶の間

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「こちらが台所と、向こうが茶の間です。ここでご飯を作って、こちらで食べてという造りになっています」

さらに奥へと進んでいきます。


階段のない2階建て

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「この上が2階に続いているスロープになります」

2階建てなのに階段がないんです。

和室は資料室に

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「こちらが和室なんですが 渡邊洋治さんに関連した資料を置いた資料室として使っております」

そして最後のお部屋が。

一番上の和室

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「これが一番上の和室になっています」

再生された「斜めの家」。

その一方で、長い年月が経ったため、現存する渡邊さんの作品は少なくなったそうです。

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「県内では糸魚川市の善導寺さんと、この『斜めの家』の2つだけになってしまったと思います」

もう1つの作品は糸魚川市に

もう1つの作品を尋ねて糸魚川市へ。

こちらがその善導寺。

60年以上前にできたとは思えない斬新なデザインです。

回転扉を開けて入る

一般公開していませんが、お願いして特別に撮影させていただきました。

ちょっと珍しい2枚の回転扉を開けた先にあるのが本堂。

本堂は

本堂です。

かなり広い空間になっていまして、厳かな雰囲気が漂っています。

気になる外観

お寺を外から見て気になるのが、横に斜めに張り出した部分です。

これは何でしょうか?

回廊と階段

横の部分は建物の外を巡る回廊で、斜めの部分は階段です。

広い屋上にも特徴が

階段を登っていきますと広い屋上。

奥に見えるのは展望台だそうですが…。

通気口

実は、展望台の真ん中の部分は、本堂からお線香の煙を抜く通気口として設計されたもの。

そして、屋上全体は雨水がたまらないよう、傾斜した設計になっています。

階段が排水路に

流れていった雨水は、先ほどの階段の踏板の下を通って外へと排出されます。

渡邊さんは様々な機能も考えて設計されたんですね。

「未来につなげていきたい」

数少なくなった作品の1つ、上越市の「斜めの家」。中野さんたちは未来につなげていきたいと考えています。

ナナメの会代表・建築家 中野一敏さん
「ここに泊まっていただく方が増えて、この活用の仕組みが継続していただくと、たまたま私が今保存・活用に関わっていますが、仮に次の人に変わったりということがあってもこの仕組みによってこの建物が長い間ここの場所に残るといいなと思っています」

この「斜めの家」、宿泊体験も計画されているんですが、まずはクラウドファンディングで資金協力をしてくれた方たが優先で、一般向けは再来年以降になる予定だそうです。


2024年4月19日「夕方ワイド新潟一番」放送より