異例!二刀流コンサート 「心が奮い立つようなチャレンジを…」諏訪市出身ヴァイオリニスト「TAIRIK」の魅力に迫る
海外でも公演を行うなど第一線で活躍を続ける諏訪市出身のヴァイオリニストTAIRK。先日長野市で行われたコンサートで、2つの楽器を操るといういわば「2刀流」の演奏を成功させました。デビューから16年、常にチャレンジを続ける彼の魅力に迫ります。
8月4日のコンサート「♪KIYARI」
8月4日長野市で行われた「オーケストラ・アンサンブル金沢」の演奏会。
この公演でソリストを務めたのは諏訪市出身のヴァイオリニストTAIRIKです。
ヴァイオリニストの彼が操っていたのは「ヴィオラ」。この演奏会でヴァイオリンとヴィオラ2つの楽器を曲により弾き分けていました。
こうしたケースは「異例」だといいます。
♪「チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲」
コンサートマスター水谷晃さん
「今オリンピックやってますけれども、柔道で言うと一晩で階級が違うのに同時にエントリーするようなものじゃないでしょうかね、もちろん体的に不可能なんですけれども」
「これも日頃の彼のチャレンジングなスピリットが作り出しているものだと思います」
TAIRIKさん
「今回のステージもけっこうなチャレンジだったとは思うんですけど一度しかない人生なので常にチャレンジし続けたいなって思いますね」
祖母のすすめでヴァイオリンを始めたのは4歳のとき。大学は小澤征爾をはじめ優秀な音楽家を多数輩出してきた名門桐朋学園大学へ進み室内楽試験を主席で終了しました。
大学院に在学中の2008年からピアノとヴァイオリンの3人組アンサンブルユニット「TSUKEMEN」を結成、リーダーとしても活躍しています。
今までにドイツやオーストリアなど国の内外で700回を超える公演を行っています。
本名は佐田大陸。
父親はシンガーソングライターのさだまさしさんです。
あまりにも有名な父親の存在に少年時代は複雑な思いを抱いたこともあったといいます。
TAIRIKさん
「今はアーティストとしてすごい尊敬してますし、いつも今もリアルタイムで大きな背中を見せてくれてるんで。なんだろうな…時間は有限ですのでちょっとでも父が生きている間に近づいていきたいなっていう思いはありますね」
デビューから3年後に起きた東日本大震災。
当時、慰問で訪れた被災地で避難所に身を寄せる人たちから声をかけられました。
避難所の人
「お父さんの精霊流し頼む」
TAIRIKさん
「精霊流しですか?」
避難所の人
「ここでこの町内で津波で11名ほど亡くなっている。そういう意味も含めてね、ぜひお願いしたい」
今まで歌ったことも弾いたこともない父の曲。
戸惑いながらも演奏を始めると…。
TAIRIKさんの精霊流し
TAIRIKさん
「最初は食わず嫌いなところもあったんですけどだけどやっぱりこう自然と求められていることでその場にその曲がポンとあって。そんな曲を作った父っていうのはやっぱすごいなって思いましたね。自分がこうしたいというよりもそのときに望まれていることをやったときの皆さんの反応というのがすごい大事だなっていう気持ちにはなったんで」
そんなTAIRIKにヴィオラを弾くことをすすめた人がいます。
日本を代表するヴァイオリニストの一人、古澤巖さんです。
演奏活動を共に行う中でTAIRIKが持つヴィオラの才能を見出していました。
古澤巌さん
「TAIRIK君の場合はなんでかヴァイオリンを弾いているときには出てこない何かしら肉体的な意味からの楽器からのなにか、TAIRIK君の底からなにかあふれてくるようなものが楽器に弾き出されてくるんですね」
TAIRIKさん
「やっぱりヴィオラって自分の中では人の声にすごく男性の声に近くて優しく心に寄り添う音だと思う」
今回のコンサートで用意されていたのが新曲の初演。観客を前に、初めて披露されます。その曲を作ったのは…
TAIRIKさん
「新垣隆さんといえばゴーストライターでおなじみの…」
水谷晃さん
「それはいいって、ご本人前にしてよくそんなことぶっこめるね」
作曲家・ピアニストの新垣隆さん
「先ほどあの…逃げて帰ろうかと…」
TAIRIKさん
「逃げないでくださいよ」
作曲家でピアニストの新垣隆さんです。新垣さんが作曲したその曲の名前は「バラード」。
TAIRIKさんの熱心なオファーを受けて生まれた曲です。「音楽的なおはなし」という意味合いがある「バラード」という言葉。ヴァイオリンとヴィオラそして管弦楽のための協奏曲です。
新垣隆さん
「今回は水谷さんとTAIRIKさんが音楽の主人公になりまして」
「この二人がですね音楽の旅に出かけというようなお話であります」
岡谷市から
「やっぱりTAIRIK君が大成功じゃないですか」
「やっぱ人を惹きつけますね。うん」
長野市から
「非常に心を揺さぶられた感じがあったので型にハマったクラシックというイメージじゃなく裾野を広げてくださる感じで熱くてとても良かったです」
大盛況に終わった長野市でのコンサート。ヴァイオリンとヴィオラを操り、音楽の垣根を超えた世界を見事に作り上げました。
TAIRIKさん
「本当に会場に来てくださった皆さんに大感謝だなとその一言ですね。また心が奮い立つようなチャレンジを見つけたらどんどん突き進んでいきたいなと思います」